006 推しの悩み
みなさまのおかげで人生初の週間ランキングに乗れました。
ありがとうございます!
「文ちゃんおはよー!」
「お、おはよう……ございます」
「また敬語だー! 同い年だからタメ口でいいのに」
私もそう思ってる! 未来ちゃんとはタメ口で話せる状況になったのだから、フランクに話したい!
でもいざ本人を目の前にすると話しやすいからか、敬語が出ちゃうんだよねぇ。
それにしても……本当にこのクラスに未来ちゃんが転校してきたんだなぁ。未来ちゃんが転校してきた昨日のことが夢じゃなかったと確定してよかった。
「ねぇ文ちゃん、この作品知ってる?」
「え?」
未来ちゃんがニコニコ笑顔でカバンから本を持ち出した。タイトルは最近よく見る「異世界」「チート」「無双」が入ってるやつだ。
この作品なら知っている。進んで読んだわけではなく、アニメ化決定時のキャスト発表で未来ちゃんの名前があったからそのキャラだけに注目して目を通したのだ。
「もう発表されているよね? 私、このマリアって子の声を担当することになったの。春アニメ!」
「もちろんチェックしました。……あ、チェックしたよ」
「ありがとー! でね、相談なんだけど……」
未来ちゃんは珍しく少し顔を曇らせた。いつも元気はつらつなのに、どうしたんだろ。
「未来ちゃんの相談ならいくらでも乗るよ! か、解決できるかは分かりませんけど……」
まだまだ敬語とタメ口が混ざった話し方になる。自分でもわかっているけどそう簡単に矯正できるものでもない。
「実はアフレコはもう始まってるんだけどね、第1話のアフレコで私上手くできなかったんだ」
「未来ちゃんが上手くできなかったの!?」
信じられない! 今までロリっ子から幼馴染まで、新人としては十分すぎるほど幅広く演じていたのに!
確か未来ちゃんの演じるマリアってツンデレキャラで、主人公とは良きライバルでもあり恋心も抱くいいキャラ位置なんだけど、どこに躓いているんだろう。
「マリアちゃんの感情を上手く発揮できていない気がして……。先輩たちは優しいからこれからだよ〜って言ってくれてるんだけど、私のせいで収録時間伸びるし、最終的に1話のマリアちゃんパートは日曜日に再撮することになったし」
「日曜日って……もしかして明後日?」
「うん。明後日」
「ま、まだ掴めていないの?」
「うん、迷走中。そこでね、文ちゃんに頼みがあるの!」
未来ちゃんは手を合わせ、まるで私に向かって拝むかのようだった。
「明日、私の家に来て演技の練習してくれないかな? こんなこと頼めるのは文ちゃんだけなの!」
私の脳内が一時的にバグった気がした。
数秒をかけて未来ちゃんの言葉を解析した結果、私の口から大声が吐き出された。
「えええええっ!? 未来ちゃんの家に!?」
「うん、お願い♡」
昨日からの超急展開について行くことがやっと……いや、ついて行けてないです嘘つきましたすみません。