046 推しのアドバイス
……と、意気込んだのはよかったのですが。
「ねぇねぇ文ちゃん! ここの展開はどうするの?」
「えっと……」
未来ちゃんは私の小説活動に熱心に食らいついてくるようになった。それはもう、私の家に来るほどまでに。
なんで推しが私に家に来るなんてイベントが発生するんだ! 掃除とか4時間もかけたぞ!!
「おーい、文ちゃーん」
「あ、ごめんごめん。降りてこないとなかなかね」
私の筆が遅いからか、未来ちゃんに退屈な思いをさせてしまっている気がする。
いつも通り、うんうん唸ってアイデアがご降臨してくれるまで待っていると、未来ちゃんが痺れを切らした。
「文ちゃんって……なんだっけ。プロット? みたいなの無いの?」
「え"っ!?」
プロットとは、小説内で起きるイベントを大まかにまとめ、そこから枝分かれして細かく記しておくものだ。ひと言でいうと『小説用のちょっと深いメモ帳』といったところか。
多くの小説家はプロットに大まかな流れとそこで起こるイベントを書いている。だが私は……私は……!
「見切り発車したのでプロットとか用意してないんです……」
「そうなんだー」
恥ずかしい! 見切り発車小説って思われるの嫌だったんだよ!
「声優ってね、最初のアフレコの日に原作者さんと会うことも多いんだけど、みんなプロットに書いていたんだって」
「うぅ……分かってるよ〜」
「文ちゃん、もう一度プロットを書いてみない? そしたら書きやすくなるかも!」
「うーん……今の花森学園を放棄するってこと?」
「ううん。これまでの文ちゃんの歩みを否定しちゃダメだよ。それより、これから先将来の花森学園のためにプロットを書くのはどうかな?」
これから先の展開のプロットか〜。
確かに一度書いたらスラスラと書けるようになるかも。
「それに私はたくさんライトノベル読んでるし、もしかしたらアドバイスできるかも!」
「でもいいの? 未来ちゃんの好きな花森学園、ネタバレ喰らうことになるけど……」
「……やっぱりこの話は無かったことに」
「意外に俗っぽいな!」
未来ちゃんは目を泳がせ、終了でーすと言わんばかりにお手上げになった。
「なんてね。私意外とライトノベル作家さんとの繋がりあるし、アドバイスとか聞いてくるよ。文ちゃんの夢、応援したいし私も叶えたい!」
私の夢は未来ちゃんに正直に話した。
私の作品がアニメ化して、未来ちゃんに声を当ててもらう。
未来ちゃんも全力応援してくれて、いつの間にかこの夢は未来ちゃんの夢にもなった。
私1人だったら孤独な戦いだったけど、未来ちゃんがいれば怖くない! 推しと同じ夢を共有しているんだから、絶対に叶えてみせる!




