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044 推し相手にヘマをする

 新年、あけましておめでとうございます。

 ……未来ちゃんと最後に会って、1週間が経過しました。東山文です。


 未来ちゃんが転校して来てから、こんなに会わないのは初めてだなぁ。まさかこんなに寂しいなんて思わなかった。

 ずっと教室で1人だった私を救ってくれたのが未来ちゃんだった。一度孤独から抜け出すと、孤独に戻る時のダメージが強いらしい。


「……って、冬休み程度で何を言ってるんだか!」


 未来ちゃんは大晦日アニメ特番などでネットで見たから、たぶん東京に行っているのだろう。改めて住んでいる世界が違うのだと思う。

 こんな時は……


「執筆しかない!!」


 最近少しずつpvもブックマークも増えてきて、モチベーションも上がっている。

 最近は感想もレビューも届いていないから読者さんの声は届いていないけど、たぶん1日のうちの3分の暇つぶしになっているはずだ。誇らしいことよ。


「ん?」


 昨日のpv数を見てみようとマイページにアクセスしたら久しぶりの赤文字を見つけた。


『感想が書かれました』


 おぉ〜、こればっかりは何度書かれても嬉しいものだね。酷評じゃないかとビクビクはするけど、それでも感想に期待はしてしまう。

 ワクワクしながらクリックすると画面いっぱいの感想が送られてきていた。長文! これはありがたい!


『初めまして! 花森学園:高等部、毎日すっごく楽しみに更新を待っています!

 この作品に出てくる女の子たちはみんな可愛くて癒されますし、何より掛け合いが楽しいです! 仕事帰りに読むと癒される〜♪

 声優の佳子ちゃんなんですけど、もう少し他の声優さんとの絡みなんかも見てみたいです! あっ、私が声優ってわけじゃないんですけどね(汗)

 とにかくすっごい楽しいです! これからも頑張ってください!』


 ……なんだろう、すっごくcv星ヶ丘未来で再生されるんだけど。

 感想をくれた人のユーザー名は……fyuture of stars……星の未来! これ絶対に未来ちゃんじゃん! futureの綴り間違えているし!


 そ、そうか〜、推しから感想来ちゃったか〜! それにしてもなんだこの身バレする危険性マックスの感想は。友達として怖いよ未来ちゃん。

 感想への返信でしっかり気をつけるように言っておかないと。えっと……『未来ちゃん感想ありがとう! でも身バレには気をつけてね! これからも頑張るよ!』っと。

 さぁ〜て、次の執筆を……


 私はタブを閉じようとした瞬間、血の気が引く思いがした。

 えっ……今の送ったら作者が私ってバレるじゃん! 身バレする危険性があるのは私の方じゃん!

 私は慌てて送信を取り消した。ふぅ……まぁ数分の間だけだったし、大丈夫でしょう。

 でも流石に焦ったな〜!



 ◆



「未来? どうしたの固まって。お雑煮美味しくなかった?」


 東京にあるお婆ちゃんの家で、お母さんの作ったお雑煮を食べている時、私は体が震える思いがした。


「未来? どうしたんだい?」

「……ううん。何でもないよ」

「そっか」


 私はL○NEを起動して、文ちゃんにメッセージを送ろうとして、やめた。


「……次会った時、聞こうかな」


 私は複雑な思いでお雑煮を食べた。お雑煮の味がやけに薄く感じたのは何でだろう。

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