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032 推しと遠足②

 その後、観覧車でのことが無かったかのように、いつもの無口で無表情な高畑さんに戻った。


「ってか写真撮らなきゃじゃん。忘れてたんですけど〜」

「本当だね、じゃあこの観覧車をバックに撮ろうか!」

「ありあり!」


 八田さんは高畑さんを、未来ちゃんは私を抱き寄せてシャッターを切った。えっ……推しに抱き寄せられているんだけど。思考停止してしまうわ。


「んじゃお昼食べよっか。食べ終わったらもうアウトレット行っちゃう?」

「そうだね、高畑さんはあんまり遊園地楽しめていないかもだから、買い物のほうがいいかも」

「……どちらでもいいけど」


 すごいな高畑さんは。あれだけ感情的になって打ち明けていたのに、すぐいつも通りに戻るなんて……。

 私たちは適当なホットスナックを買って昼食とした。未来ちゃんの栄養管理を勝手にしている身としてはホットスナックなんて……と思ったけど、ちゃんと自炊しているから〜という未来ちゃんの言葉を信じた。


「よ〜し、じゃあお買い物しちゃおうか!」


 アウトレットでお買い物か……服とかお財布とか売ってるけど、別にこれといって欲しいもの無いんだよなぁ。お金も限られているし、未来ちゃんとの握手会で溶けたし……。


「未来ちゃんは欲しいものあるの?」

「うん! もう冬物が売ってるだろうから、マフラーが欲しいなって!」

「いいね……うん、すごくいいと思う」


 脳内でマフラーを身につけた未来ちゃんを想像したけど、めっちゃ可愛い生き物が誕生した気がする!


「ウチはスニーカーかな〜。モモは?」

「強いて言うならヘッドホン」

「あー、確かあった気がする」

「文ちゃんは? 欲しいものある?」

「うーん……ないかな」

「そっか……」


 欲しいお店がバラバラのため、1時間の自由行動を取ることにした。

 私は何も買いたいものがないので、とりあえず未来ちゃんについていくことにした。ぐへへ……ようやく推しと2人きりだぜ。


 未来ちゃんは買い物特有の浮き足立つリズムでなんと高級ブランドのCUCCIさんに入ってしまった。


「いやいや未来ちゃん!? こんな高いお店で買い物なんて……」

「もちろんCUCCIさん本店なら無理だけど、アウトレットなら気軽に見れるからね〜」

「そ、そういうものなんだ」


 店内は広い割にアイテムの数はちょこんと展示されているだけだった。これはあれだ……たまにテレビで見る高級レストランの料理で、大きな皿に食材がちょこんと乗っかったバカ高いやつにそっくりだ!

 こんな高級ブランドのお店に入るなんて初めてだけど、いくらするんだろう。例えば財布……財布くらいなら買ってもまぁいいかなと思えるが……


 140000円+税


「………………なんで?」


 素直に、意味がわからなかった。

 良いものなのはわかる。ただそこまでいくか? わからない世界だ……。


「見て見て文ちゃん! このマフラーすごく可愛くない?」


 未来ちゃんは落ち着いたグレーのマフラーを手に取っていた。なるほどそれは可愛いし、未来ちゃんによく似合いそうだ。

 どれどれお値段は……89000円! 財布よりは安いけど……安いけども!!


「も、もしかして未来ちゃんこれ買うつもり?」

「ううん。CUCCIさんはすごくいいものだけど、まだ私には見合わないお値段だから今は別のお店にするよ」

「そ、そうなんだ」


 じゃあ何で入ったんだろう。


「何で入ったんだ〜って顔だね!」

「うぇ!?」


 こ、心読まれた!?

 未来ちゃんの指が鼻先に当たっている。あ……少しでも未来ちゃんの指先から得られる細胞を鼻から取り入れたい……。


「こういうお高いお店で見て、それに似たものをリーズナブルなお店で探すんだよ! お宝探しみたいで楽しいよ〜」

「そ、そうなんだ……」


 おしゃれな人はそういう戦法を取ってるんだね。思っていたより計算しているというか、なんかすごいわ。


「さぁ、現実的なお店にレッツゴー!」

「お、おー!」


 未来ちゃんとのショッピングはまだまだ続きそうだ。

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