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030 推しと遠足?

「うっっわ、マジ?」


 八田さんがドン引きしているのは、観覧車に並ぶ人間の多さだった。

 絶叫系が苦手な人は多いらしく、困り人の駆け込み寺のように観覧車はそれらを受け入れているようだ。


「待ち時間30分か〜、でも話してりゃ意外とすぐっしょ」

「そうだね」

「スッー……」


 その待ち時間が1番地獄なんじゃい!

 八田さんは高畑さんとお話ししていればいいのに、気が合うのか知らないけど未来ちゃんとばっかり話している。きぃ〜〜、泥棒猫!


 高畑さんと取り残された私は特に何かできるわけでもなく、諦めてソシャゲを始めた。これならゲーム好きな高畑さんでも話しかけてくれるかもしれないし(他人任せ)


「……今日はきらきらファンタジア?」

「よ、よく分かるねこんなディープなゲームまで……」

「ちょっと名の知れたゲームなら目を通したことはあるから。それにしても星ヶ丘さんが出ているゲームばかりなんだね」

「うん。未来ちゃんは私にとっての推しだから」


 そこがブレることはない。私の行動原理の根幹は未来ちゃんだ。


「そう……羨ましいわね」

「えっ?」


 羨ましい? 未来ちゃんを推している……こと? どういうこと?


「次の方々どうぞー」


 聞き返す間もなく、私たちの番になってしまった。確かに人と話をしていると待ち時間って短く感じるね。

 1番に八田さん、次に未来ちゃんが乗り込んだ。もちろん、その間も観覧車は動いている。


「文ちゃん転ばないようにね〜」

「こ、子ども扱いしないでよ、もう……」


 未来ちゃんったら恥ずかしいんだから。


「……っキャ!?」

「えっ!?」


 盛大に転びかけたのは私……ではなく、後ろで並んでいて、一歩を踏み出した高畑さんだった。


「危ない!」


 私は高畑さんを抱き止め、なんとか顔面を鉄板に強打する惨事は免れた。

 ただ……


「文ちゃーーん!」

「モモーー! 大丈夫ー?」


 未来ちゃんと八田さんを乗せた観覧車はもうジャンプしても届かない高さまで登ってしまっていた。


「うひゃー、取り残されちゃった」

「すみませんお客様、次の方達が待たれているのでお早めにご乗車ください」

「え? あ……はい」


 離脱して下で待ってるって選択肢は無いんか!

 お互い若干の渋い表情をしながら、私と高畑さんは2人きりで観覧車に乗り込んだ。なんでこんなことに……どうせなら未来ちゃんとこうなりたかったのに!

 ここから約15分間、コミュニケーション能力が低い2人による密室空間が始まった。

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