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029 推しと遠足①

「んじゃアレ行くっしょ! スペースショット!」

「いいね!」


 げっ……! いきなりスペースショット!?

 スペースショットとはナガシマにある絶叫マシーンの1つで、急上昇急落下を繰り返すアトラクションだ。

 私は絶叫系苦手なんだけど、ここで断るとノリの悪い奴に思われそうだな……我慢しよ。


「た、楽しみ〜」

「私はパス。絶叫無理だから」


 な、なにぃ!? 高畑さんそんなあっさり断るだと!?

 あまりの衝撃に漫画の雑魚キャラみたいな驚き方をしてしまった。


「そっかー、苦手なら仕方ないね。でも1人なのも可哀想だし……」

「大丈夫大丈夫。モモは1人好きだもん。ね?」

「うん。1人大好き」

「そ、そうなの?」

「それなのにユウは無理やりついてくるから、こういう時間でもないと1人になれないから貴重」

「ぶっははは、ナチュラルにディスられたんだけどウケる」


 八田さんは高畑さんをパシパシ叩いて大笑いしている。なんでこの2人はこんなに仲良いんだろうか。だいぶ性質が違う気がするけどって言ったらまぁ私と未来ちゃんもそうか。


「んじゃ早く行こうぜ〜! 時間は限られてっから!」

「うわぉ!?」


 八田さんは私と未来ちゃんの手を引いて走り出してしまった。(せわ)しない人だ。

 後ろをチラッと見てみると、高畑さんがさっきまでの無表情とは違った、にこやかな笑顔で手を振っていた。

 ……? あんなに笑顔を作る子だっけ。


 と、人のことを気にしている場合じゃなかった。目の前に迫ったスペースショットは今にも私を殺してやるぞと言わんばかりに待ち構えていた。


「待ち時間無しじゃん。ウケる」

「ウケないよ!」


 ついに声に出てしまった。こういうのって待ってる間に心構えとか作るもんじゃないの!?

 あれよあれよと席に座らされ、私はもう諦めて意識が半分トリップしてしまった。

 そんな私の手に、未来ちゃんの手が重ねられた!


「えっ……」

「ごめんね文ちゃん。ちょっと怖くなっちゃって……」

「未来ちゃん……大丈夫! 私絶叫系は得意だから、ちゃんと手を握っていてね!」


 推しに頼られ、ついつい虚言を吐いてしまった。

 スペースショットの機械が持ち上がり、打ち上げられた瞬間、私の虚言がその言葉通り虚に散ったのは言うまでもない。


「はぁ……はぁ……」

「東山瀕死じゃん。ウケる」

「ウケないよ!」

「ごめんね文ちゃん、頼りすぎちゃった」

「全然……大丈夫……だよ……」


 未来ちゃんは怖くなっちゃったと言いながら存分に隣で楽しんでいた気がする。なんてあざとい……。


「んじゃ東山死んでるしモモは絶叫無理だから、次は観覧車でも乗るか?」

「いいね、文ちゃんといい景色見たーい!」


 観覧車くらいなら私でも大丈夫だ。

 それに未来ちゃんといい雰囲気になって……うへへ。

 瀕死でも妄想だけは一丁前にできる私であった。

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