018 推しの学力
変なドキドキの答えが見つかることはないまま1週間が経過した。まぁ、これに関しては保留でいいか。
それよりもまず大事なのは……
「うぇーん! 転校してすぐにテストなんてあんまりだよ〜〜」
そう、目の前に迫ったテストだ! 勉強の苦手な未来ちゃんはすでに涙目である。
「仕方ないよ、中間考査シーズンに転校してきたし」
「テストはやるのに文化祭はもう終わってるなんて非情すぎる! 文ちゃんと文化祭を楽しみたかったのに〜」
「あ〜……あったね、文化祭なんてのも」
「文ちゃんは何をしたの?」
「タピオカドリンクのお店やってて、シフト終わったら4階の階段踊り場でスマホいじってたよ」
「……来年は絶対楽しい文化祭にしようね」
哀れみの眼! 今度は私が泣く番か。
まぁ今年の文化祭だって別に楽しくなかったわけじゃない。シフト終わったら学校でがっつりアニメ観るって、なんか新鮮だったし。
「そ、それで未来ちゃん、勉強の方は?」
「何が何だかさっぱりわからないよ!」
見事なドヤ顔! ドヤれる要素はかけらも無いけど!
「苦手な科目とかある? 一緒に勉強しようか?」
「本当!? 嬉しい!!」
未来ちゃんはパァッと明るい笑顔になってくれた。
まぁ未来ちゃんには声優という確立された道があるから、赤点さえ取らなければいいでしょう。
「それで苦手な科目は?」
「うーーん……あれ、私って何が苦手なんだろう」
「おーーう……」
お先真っ暗かもしれない。
とりあえず数学の課題を解かせてみて実力を測ろうとすると、基礎の基礎、ただの穴埋めでうんうんと唸ってしまった。
「えっと……中学でやった解の公式だけど……」
「貝の硬式?」
「アサリの硬度を調べる話じゃないから!」
嘘でしょ……そこから!?
「2a分の−b±ルートb2乗−4ac」
「新しいラノベのタイトル?」
「現実逃避しないで!!」
ダメだ、このままだと未来ちゃんと進級できない!
そして留年した未来ちゃんは週刊誌にスッポ抜かれ、『人気新人声優の星ヶ丘未来は偏差値50の高校を留年する学力だった』とか出回るんだ!
まずいぞ……ここは私がオタク代表として、責任を持って未来ちゃんの赤点回避を手伝わなければ!
「ねぇねぇ、もしかして文ちゃんって頭いいの?」
「特別いいわけじゃ無いよ。25位くらいかな」
悪いと言ったら他の生徒に失礼になるくらいの順位だから、謙遜はし過ぎない。
ちょっとだけ勉強していてよかった。未来ちゃんを支えられる人間になるぞ!
とはいえモチベーションなさそうだしなぁ……あ、でも確か……
「テスト終わったらすぐに遠足だよ。楽しいことあるから頑張ろう?」
「本当!? 私頑張る!」
遠足と言った瞬間に目をキラキラさせた。さ、さすが未来ちゃんだ。
私としては未来ちゃんが転校してくるまでテストより嫌なイベントだったけど、そうだなぁ……うん、私も遠足楽しみかも。
ちょっとだけ先のことが楽しみなのと同時に、目の前の答案に頭が痛くなるのだった。




