駄作の外見品評会【1000文字未満】
駄作の評価を受けている作品が集まった。最も、どれも箱詰めされているが。今回はその品評会だ。
口ひげをつけた男が箱を一つ手に取る。
「おお、これは中身を見なくても解る。駄作だ。カスだ。それにほら、揺らしてみるといかにも、駄作臭い音が鳴るよ」
「その通りです」彼の連れている子分達は、オウムのように同調する。「中身は小説と聞きましたが、いやはやなんてつまらなそうなんでしょう」
「全くだよ。中身は見ていないがつまらないことは確実だ。ほら、こんな装飾華美な箱だしね」
彼らは嘲笑を響かせた。
他のところでも同じような者がいた。
「この箱は軽いな。つまらなさが滲み出ているようだ」
「何でも映画らしいね。となると入っているのはブルーレイとかかな」
二人はそれに思い至ると、考えが浮かんだ。軽いのは当たり前だ。円いものしかないのだし。だがここで褒めると二人の結束に傷がつくかもしれない。何より意見を覆したくはない。
「つまり、豪華特典をつける価値もない映画ということさ。ファングッズもない、クズさ。これだから無名は困る」
「そうだそうだ。無名の奴はもれなく、社会のガンさ」
有名な者も元は無名。その言葉が浮かんだが無視した。
漫画展示場にも人がいる。
コーラを片手にする若者は言った。
「いやはやシンプルすぎる箱だ。このぐらいしか気合いが入っていないなんて、さぞかし駄作なんだろうな」
「多分」隣の長髪は言う。「あの大万里とかいう作品じゃないかな」
若者もその名は知っていた。大人気作品だ。だが読んだことがない。ここにあるということは駄作に違いないのだ。何を言っても攻撃はされまい。
「読んだことはないが、やはり駄作なんだろうね。作者にやる気がなくなったとか、そういうのだろう。作品愛のない作者に描かれるなんて、可哀想なものだ」
「全くだよ。ライフ編からとんだゴミに変貌した。思わず殺害予告しちゃったよ。けど、つまらないのが悪い」
品評会は大団円に終わった。結局中身は見ず、誰も作品の内容を知らない。