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お題シリーズ4

なぜかついてくる猫

作者: リィズ・ブランディシュカ



 森の中で迷子になっていたら、なぜか猫がついてきた。


 その猫は怪我をしていて、皮膚がひきつれていた。


 元は美しかっただろうけれど、今は痛々しい見た目になっていた。


 どこかの方向へすすもうとすると、猫がついてくる。


 不審に思いながら歩いていると、その先は崖だった。


 猫はがけの近くで「にゃあ」と鳴いた。


 おそらくついてきていたのは、危ない場所があると伝えるためだったのだろう。


 今度は猫が私の前に立って、進み始めた。


 猫はときおり、どこかに案内するようなしぐさで私の前を進む。


 だから私は、その猫についていくことにした。


 すると、森の奥に家があった。


 その奥にはしわがれた声の老婆が一人住んでいた。


 私がその家に向かうと、その老婆はにっこりと笑って出迎えてくれた。


 そして、美味しいご飯と寝床を用意してくれた。


「お父さんとお母さんはいつも怖い顔をして私をみるの」


 私には帰りたい家がない。


 そう伝えると、その老婆はいつまでもこの家にいていいよといった。


 私を案内した猫は老婆の飼い猫だった。






 その老婆の家にお世話になってから数日後。


 森の中にある小さな村へむかった。


 老婆と一緒にお買い物をするためだ。


 その村には、たくさんのおじいさんやおばあさんがいた。


 みな、私がやってくるとしわくちゃの顔に笑顔を刻んで歓迎してくれた。


 そして、お買い物をした時にはたくさんのおまけをくれた。


 私はどうしてこんな森の中に村があるのだろうと思った。


 不思議に思って老婆に聞いてみたけれど、「それは大きくなってから知れば良い事よ」といって、教えてくれない。


 よく分からなかったが、聞かない方がいいのだと判断して、その質問はそれきりだった。






 やがて、その家で大きくなった私はあいかわらず、おじいさんやおばあさんだらけの村へ出かけていた。


 彼等はよく人の名前や顔を間違えるけれど、いつも互いに親切にして、支え合ってくらしていた。


 一緒に住んでいた老婆は、とっくの昔になくなっていたので、丁寧に埋葬して墓を作った。


 そんな私はある日、森の中で子供を見つけた。


 うちで飼っている子猫が少年をはげますように寄り添っていた。


「僕、迷子になっちゃったんだ」


 そうつぶやく少年だった。


 私はその少年を家までつれていって、温かい食事と寝床を提供した。


 そして、「ずっとここにいてもいいよ」と言う。


 少年は笑って喜んだ。


「ありがとう。おばあちゃん。だって、お家の人怖いから帰りたくないんだもん」


 いつか大きくなったらこの少年も私のように真実を知るのだろう。


 ここが要らなくなった人間を捨てる森だと言う事を。


 私は子猫をなでる少年を悲しい思いで見つめた。



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