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9. チュートリアルを周回せよ!

「ねむりちゃん!大丈夫!?」

「痛いよ~」


 初戦闘を終えたねむこは、ひとまずダンジョンの外に出た。


「骨が折れた~治して~」


 相変わらず骨が折れていると勘違いしているが、自衛隊員達はそれが勘違いであることは分からない。

 慌ててヒールのスキルが使えるメディックがやってきた。


「ヒール!」

「おお、凄い、治った!あなたは命の恩人です!」


 大げさである。

 しかし治してしまったから本当の症状はもう分からない。

 実際は小さな打撲だった。


「それでねむりちゃん、拾ったものを見せてくれないかな」

「やだ」

「え~」


 こいつら、私の戦利品を持ち逃げするつもりだろう。

 ねむこはそう考えていた。


 それは間違いでは無く、自衛隊員は今すぐにでも分析したくて堪らななかった。

 それこそねむこごとお持ち帰りしそうな程に。

 事案である。


「お願い、ねむりちゃん。私達に調べさせて」

「やだ」

「また美味しいお寿司屋さんに連れて行ってあげるからさぁ」


 ねむこは驚愕した。

 この女、ねむこをダシにしてまた経費で食べまくる気だな、と。


 本当にぷにぷになのでは?とお腹を見つめる。


「え、ねむりちゃん、どこ見てるの。そこには何も無いよ」

「ぷにp」

「さぁ、ねむりちゃん、疲れたでしょう。今回はもう帰りましょう」


 強引ではあるが、元々その予定であった。

 静岡から金沢までは遠いので、早めに出発しないと明日の学校に影響が出るのだ。


 それに既にダンジョンに関する情報は山ほど入手した。

 分析する時間が欲しい。


 分析官は次の土日までの間、喜んで寝ずに働くだろう。

 ブラックじゃないよ。

 自分の意思でやってるだけだよ。


 ひとまずねむこはカエルのスタンプをにゃもちーに送り付けた。




「これがドロップアイテム?」

「そそ、しょぼいよねー」


 静岡に到着後、ねむこは家に帰らずににゃもちーと合流した。

 急ぎ確認したいことがあったのだ。


「普通のプラスチックみたい」


 にゃもちーはアイテムを色々と弄るが、プラスチックの欠片という以外に言いようがなかった。

 大きさは手のひらに収まるくらいなのでそんなに大きくはない。


「ス・キ・ル!ス・キ・ル!」

「はいはい、ちょっと待ってて」


 ねむこが試したかったのは、にゃもちーのスキル『ダンジョン武具生成』だ。

 このスキルを使うにはダンジョン内で入手できるアイテムが必要なので、これが使えないか確認して欲しかったのだ。


「う~んダメね」

「うぎゃぴ」

「何よそれ」

「絶望のカオス」

「意味が分からないわ」


 にゃもちーがスキルを使おうとしたら、そのドロップアイテムを使用して作成できる装備の一覧が出て来た。

 しかしどれもグレーアウトしていて選べない。


 その理由は。


「圧倒的に数が足りない」

「だよねん」


 ねむこもそうじゃないかとは思ってた。

 だってこんな小さなアイテムだけで大きな装備が作れるわけが無いからだ。


「はぁ……周回しなきゃダメなのかぁ」

「そんなに大変だったの?」

「聞いてよにゃもち~」

「嫌よ」

「自分から聞いておいて!?」


 なんだかんだ言ってにゃもちーはねむこの事が大好きなのだろう。

 ソロで寂しかったであろうねむこのおふざけの相手をしてあげているのだ。


「それじゃあにゃもち~に馬車馬のように働いてもらうために、周回頑張るぞ」


 それってねむこの方が馬車馬なのでは、とは言わないにゃもちーであった。

 後で弄るために。




「でえええい!」


 ねむこは頑張った。

 超頑張った。


 特に最初の数回。

 まだダンジョン武具をもたないねむこは、ひび割れ分度器と素手で戦わなければならなかった。


 相手の弱さからして、おそらくは戦闘のチュートリアルなのだろうと自衛隊は考えていたが、ねむこにとってはぶつかったら普通に痛い強敵なのだ。


 自衛隊の分析により、ダンジョン内ではダンジョン外で作った道具は全く効果を発揮しないことが分かった。


 最初にねむこが装備の重さで潰されそうになったのは、軽量化スキルが無効化されてしまったからだ。

 小型爆弾が分度器に効かなかったのも同じ理由である。


 そしてもう一つ、ジャージも実はねむこが防御したところがスッパリと斬れていた。

 スキルで防御力を高めまくったけれども、全くの無意味だったのだ。


 つまり、結局ねむこは生身で戦わなければならない。


 一つだけ運が良かったのは、ダンジョン内で負った怪我は、ダンジョン外でならばスキルやポーションで治療が可能という事だ。


 それがダメだったら、ねむこは一生ダンジョンに入らなかったかもしれない。


 そんなこんなで、ねむこは体中に痣を作りながらも、なんとかドロップアイテムを集めた。


 そして最初に小さなプラスチックの盾を作ると、効率が急上昇。


 相手は体当たりしてきてぶつかったら消滅する。

 なら盾で受け止めるだけで良いのだ。


「はっはっはっ、死にたい奴はかかってこーい!」


 最初はそんな感じで怪我をせずに分度器を倒せることを喜んでいたねむこだったが、すぐに飽きた。


「よし、何秒だった!?」

「31.92秒です」

「くっそー!30秒切れなかったー!」


 なのでRTAを始めたのだった。 

 そしてそれすらも飽きた頃、ようやく必要な素材が全て集まった。


「にゃもちー、出番だよ!」

「はいはい」


 スキルで作り出されたのは、プラスチック製の鎧。

 これがあればダンジョン探索もかなり安心して進められるだろう。


 だが、この装備には大きな問題点があった。


「致命的に可愛くない!」


 装備の可愛らしさはねむこのやる気に大きく関わる。

 そこで自衛隊は、ねむこにある提案をした。


「デコれデコれデコれデコれデコれ~!」


 ねむことにゃもちーの合作で、カオスな鎧が誕生した。

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