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5. 〇ッキー、ではなくもっきーちゃん

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 ユニークスキル『ダンジョン武具生成』


 ダンジョン内でのみ使用可能な武具を生成する。

 武具の生成にはダンジョン内で入手可能な素材が一定数必要。 

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「いいいいいやっふー!いぇーい!私生産大好き!あ、ねむこは一人で頑張ってね。最高の装備を作ってあげるから。あ~あ、一緒にいけないのが残念だわ」

「にゃもちーの馬鹿ああああああああ!」


 ダンジョンに連れ込まれる可能性が無くなったにゃもちーが大喜びするのでお尻に全力で蹴りを入れたねむこは、ひとまず自宅へと帰宅した。

 とんでもない情報が出て来たので自衛隊はねむこの相手をする余裕が無かったのだ。


 簡単に言うと、邪魔だから帰れ、である。


「もー!なんでこうなるのさー!みんなと一緒が良いーのー!」


 ベッドの上でジタバタするが、壊れても知らないぞ。

 普段から扱いが悪いからベッドの耐久度がかなり減っているのである。

 このままではベッド破壊死という不名誉な死に方を迎えるかもしれない。


「にゃもちーの馬鹿……」


 とりあえずにゃもちーにマグロスタンプを連打しておいた。

 既読がつかないのでスマホを放り投げる。


「一人は嫌だよぅ」


 せっかく憧れのファンタジー世界になったのに、ソロプレイなんて悲しすぎる。

 秘匿もしないし追放もしないし、ただみんなで一緒に楽しく冒険したかったのに。


「むぅ、こんなスキルなんて、えい、えい!」


 スキルを表示させて『ユニーク』の部分を指で突いて壊そうとするものの、通過するだけだ。

 なお、一度鑑定を受けたならば、パラメータやスキルの情報を見たいと思えば表示されるようになっている。


「そうだ、何か抜け道が無いかな!」


 ねむこはにゃもちーから教えて貰った物語を思い出した。


 不遇なスキルを入手した主人公が、工夫次第で活躍する物語。

 使えないと思っていたスキルが実はチートスキルだった。


「確かレベルがあがるとスキルの内容が変わるパターンとかあったよね」


 追放された直後に都合良くスキルレベルが上がってチート化するアレである。


「スキルレベルが上がればみんなと一緒にダンジョンに入れるかも!」


 対象:スキル保持者のみ


 この部分が、同伴者一名まで、に変わる可能性はあるかもしれない。


「うん、そうだよ。きっとそう。ぐへへへ、にゃもちーには秘密にしようっと」


 嫌がるにゃもちーを無理やりダンジョンに連れて行こうとする悪魔である。


 なおこの女、本当にやる。


 この二人が親友なのが不思議でならない。


「よーし、それじゃあ頑張ってダンジョン攻略して……ふぇ?」


 にっくきスキルを何となく眺めていたねむこは気付いてしまった。

 妙な一文が追加されていたことに。


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません

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「なんでじゃああああ!」

「ねむこうるさい!」


 あまりの衝撃でガチ叫びをしたら、階下から母親のお叱りの声が飛んできた。

 少し前まで号泣して心配してたのに、この扱い。

 それだけねむこの暴走がこの家では日常だったということなのだろう。


 そんな家は嫌だ。


「なんで、なんでなの?さっきまでこんなの無かったじゃん!」


 しかしそこはファンタジー大好きなねむこ。

 基本的にお馬鹿だけれども、この件についてはすぐに理由が思い当たった。


「スキルに意思があるパターン!?」


 あるいは、何者かがスキルを通して語り掛けてくるパターン。


 どちらにしろ、ねむこの考えに反応するように文章が追加されたことから、意志ある何かが存在しているという事。


 これは自衛隊に即連絡すべき事項なのだが、ねむこは思いつかなかった。

 ダンジョンの存在が確認されて大混乱している状況で追撃が来なかったのを喜ぶべきか、それとも少し落ち着いてきた時に追撃がきて死にそうになるのを嘆くべきか。

 どちらにしろ乙、である。


「ねぇスキルさぁん、私はみんなと冒険したいのぉ。なんとかしてぇ」


 ねむこはスキルに猫なで声で話しかける。

 傍から見ると空中の見えないところに色目を使う危ない奴である。

 どれだけ可愛い娘でも近づきたくはない。


「返事が無い。う~ん……そうか!スキルさんって言うのが可愛い呼び方じゃないからかな」


 どうしてそうなる。


 まぁ、意志あるスキルに名前をつけるのはあるあるだから間違ってはいない行為なのかもしれないが。

 もちろんそれで返事が来るとは思えない。


「じゃあ〇ッキーで」


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 禁則事項です!

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 返事来ちゃった。


「ハハッ、おもしろーい」


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 禁則事項って言ってるでしょ!

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「ちぇー、じゃあ『もっきー』で」


 なお、親友がにゃもちーと呼ばれていることから既にお気づきの方もいらっしゃるだろうが、ねむこはネーミングセンスが壊滅的である。


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 どうしてそうなるの……

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「だって可愛いじゃん」


 この女、スキルとの会話が成功した。


 ように見せかけて、ここまでだった。


「ねぇ~お願い聞いてよ~」

「そのくらい出来るでしょ?」

「みんなと冒険し~た~い~」


 どれだけ話しかけても、答えが来なくなったのだった。


 その流れをぶち壊すのがねむこだが。


「もっきーちゃん、最近太った?」


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 太ってません!……あ

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「やっぱり聞いてるじゃん!お~ね~が~い~」


 安定と信頼のウザ絡みである。

 もしもスキルそのものに意思があるタイプでねむこの言葉をシャットアウト出来ないのならば地獄である。

 遠隔で見ているパターンなら席を外していると思うが。


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 どうしても無理なの。

 後、これ、結構力使うの。あんまり出来ないから無駄遣いさせないで。

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 ねむこをガン無視しない辺り、もっきーは根が優しいのかもしれない。

 とはいえ、どうしてもねむこの願いは叶えられないらしいが。


「ところでもっきーの弱点って何?」


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 何で堂々と脅しのネタを聞いて来るのよ!

 突っ込ませないで!

 無駄遣いさせないでって言ってるでしょ!?

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 スキルを脅して思い通りにさせようとするねむこもねむこだが、無駄遣いさせないでといいつつ長文で返すあたり、もっきーもちょっと問題な人?なのかもしれない。


 案外相性が良いのかも。


「ちぇー」


 どれだけ粘ってもダメそうだったので、ねむこは諦めて別の事を聞いてみた。


「それじゃさ、これだけ教えて?私、ダンジョンに入っても大丈夫だよね?」


 至極真っ当な不安である。

 誰一人として中の様子が分からないダンジョン。


 もしかしたら入ったらクリアするまで出られないかもしれないし、ねむこでは到底対処できない強敵にいきなり出会うかもしれない。

 ねむこは冒険はしたいが、無駄死にしたいわけではないのだ。


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 最後 出来 ン ョン なら 丈 

 入 付近 レベ 上 し 

 しば  ここ 無

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 これまでと違って文章がぶつ切りだ。

 どうやら力とやらが尽きたらしい。


「分かったよ。ありがとう〇ッキーちゃん」


 この女、まともに突っ込めないことが分かっていて弄る鬼である。


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 怒

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 気合で一文字だけ返したもっきーちゃんも律儀である。


 これ以降、今度こそ、ねむこがどれだけ話しかけても弄っても、スキル欄にメッセージが表示されることはなかった。

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