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20. みんなと一緒に冒険したいのに!

「ねむこ、右腕のを使うの!」


 ねむこがしたくも無い覚悟をするなど、にゃもちーには耐えられなかった。

 だから必死に頭を働かせ、ねむこがより安全に戦える方法が無いかをどうにか絞り出した。


 それが右腕の腕当ての機能を使う事だった。


「さっすがにゃもちー!愛してる!」

「婚姻届けを用意しておくわ」

「名前も書いておいてねー」


 もちろん相方に別人の名前を書くのである。

 そんなことはお見通しのにゃもちーはねむこの名前だけを書いておくつもりだったが。


「これでなんとかなってクレヨン」


 ねむこは腕のサポーターを外すと体育館の床に置いた。

 ただし、とある機能を発動させて。


「へ~い、クソダサ戦車さ~ん、こっちですよ~」


 そしてそのサポーターの上を戦車が通過するように誘導する。


「ぬおおおお!」


 今回もなんとかねむこは避け切った。

 床を見ると狙い通りにサポーターが消えていた。


 そして戦車は動きを止めていた。


「よっしゃ、チャーンス!」


 戦車の車輪にトゲの生えた・・・・・・サポーターが刺さっていたのだ。


 これはにゃもちーが仕込んだ防具の機能の一つ。

 仕掛けをオンにすることで鋭いトゲが飛び出す作りになっている。


 全身トゲだらけといういかついモードにもなれるのだ。

 クソダサではあるけど面白いのでネタとしてねむこも受け入れたのだった。


 消しゴムに刺さったサポーターのせいで戦車は動くことが出来ない。

 今が接近するチャンスだ。


「うりゃああああ!」


 トゲクソバットを胴体の缶ペンケースに叩きつけると、ベゴンと小気味よい音が響いて凹んだ。

 たまらず戦車はその場で反転してドリルでねむこに攻撃を仕掛けた。


「うひゃああああ!」


 どうやら走ることは出来ずとも反転は可能らしい。


 戦車は突撃攻撃を諦めたのか、胴体の缶ペンケースの蓋を開けて再度ペン達をばらまいた。

 くちばしも再度開いてクレヨン爆弾を発射する。


「あた、るも、んか、だよ!」


 至近距離で飛んでくる攻撃をねむこは軽やかに躱し、戦車の背後へと回る。

 そちらはドリルが届かないのだ。


「うりゃうりゃうりゃー!」


 トゲクソバットで連打して着実にダメージを与えて行く。

 戦車は何度も反転してねむこを捕らえようとするが、ねむこの動きの方が早い。


 宙に浮くペン達の怒涛の攻撃もねむこにとっては慣れたものだ。


「きた!ほむらーん!」


 むしろ岩や氷といった攻撃を跳ね返してダメージソースとしていた。


「ねむこ、このまま決めて!」

「もちろん!」


 もしかするとまだ戦車には手があるのかもしれない。

 しかし今の流れは理想的な展開だ。


 なんとしてもこのままの勢いで撃破する。


 ここまで来ると流石のねむこも多少の被弾は無視することにした。

 元々ペン達の攻撃はそれほど痛みを感じない程度のダメージだ。


 戦車に余計なことをされるよりも、撃破スピードを優先した。


「ねむこ離れて!」


 トゲクソバットで殴られ続けてボロボロになった戦車が突然赤く明滅を始める。

 まるで自爆でもするかのような雰囲気ににゃもちーは思わず叫んでしまう。


「ヤられる前にヤる!」


 だがねむこは退かなかった。

 直感的にこのまま殴り続けるべきだと判断した。


 そしてその判断は正しかった。


「ぬうぉおおおおう!」


 今にも爆発しそうな最後の明滅の後、ダメージ覚悟でドリルの攻撃を辛うじて躱しながら特攻し、首の部分を全力で殴った。


 すると明滅は止まり、腕のドリルも停止し、文房具戦車は力なくその場に横倒しになり消滅した。


「ねむこ!」


 ねむこは学校ダンジョンのボス戦に勝利した。


「大・勝・利!」


 そうポーズを決めるねむこの目尻には、ほんの少しだけ涙が浮いていた。




「!?」


 勝利の余韻に浸っていたねむこだが、すぐにまた臨戦態勢になった。

 突然目の前に白いもやが出現したからだ。


「ね……!……こ!」


 何故かにゃもちーの声が遠くなり、ついには聞こえなくなった。

 なお、世界中の配信もこのタイミングで見れなくなっていた。


 ボス戦連戦はあるあるとはいえ、ねむこは疲れ果てていたのでもう戦いたくは無かった。

 気分ダダ下がりの中での異変に、かんべんしてくれという感じだった。


「ありが……とう。ねむ……こ」

「にゅ?」


 しかしどうやら敵では無かったようだ。

 そのもやから微かに声が聞こえてきたからだ。


「おぬし何者ぞ」


 お前が何者だ。

 ただのねむこだったか。


「も……きー」

「!?」


 ねむこの聞き間違えで無ければ、そのもやは『もっきー』と言っていた。

 スキルを通じてねむこに語り掛けた謎の存在が出現したのだ。


「あまり……時間……無い……大切な……こと……説明」

「みんなを中に入れろおおおお!!」

「!?」


 もやが何かを言おうとしたが、ねむこはそれを遮った。

 大事なことを説明しそうだったのに良いのか。


「無理……言った……はず」

「そこをなんとか」

「無理」

「そこをなんとか」

「無理」

「そこをなんとか」

「無理」

「そこをなんとか」

「無理」

「そこをなんとか」

「しつこい」


 最初の頃は感情が無さそうな機械的な声だったのに、いつの間にか呆れの感情が篭められていた。


「ぶーぶー!このくらい叶えてくれても良いじゃんよー!」

「ごめん……なさい……力が……足りないの……あなた……だけ……精一杯……」

「んじゃあその力はどうしたら回復するのか?」

「ダンジョンを……クリアすれば……いずれは」

「マジか!どのくらいクリアすれば良いの!?」


 絶対に無理だと思っていたみんなとの冒険。

 それが出来る可能性が見えて来た。

 ねむこのテンションは爆上げである。


「……………………全部?」

「おいコラ」


 それでは意味が無い。

 自分だけ全てのダンジョンを攻略済みで他の人が入れるようになっても一緒に楽しめないではないか。


 一人だけ高いところから見下ろすのは悪くは無いけれど、ねむこが本当にやりたいのはみんなと同じ立場で一緒に冒険することなのだ。


「みんなと一緒に冒険したいのに!かんっっっっっっっっぜんに意味が無い!なんとかして!」

「無理……あ……もう時間が」

「え、ちょっ、まだ消えるなし。話は終わってない。こら、逃げるな!」


 もやは徐々に薄くなっていく。

 なんとこの女、本来聞かなければならない大事なことを無視して無駄なやりとりだけで貴重な機会を終わらせてしまった。


「……次……リア……も……少……長……話」


 白いもやは消えてしまった。

 もやは秘密の会話が出来るようにと外界からのアクセスを制限したのに、何も伝えられなかった。


 こんな失態を他人に知られなかったという意味ではねむこ的にはセーフかもしれないが。


「うわああああん」

「ねむこ!?」


 外界とのアクセスが復活した時、ねむこは泣いていた。

 何があったのか慌てるにゃもちーだが、まさかねむこが貴重な時間を無為にした挙句、自分の要望が通らずに悲しんでいたとは思うまい。


 そんな謎の空気感は長くは続かなかった。

 学校ダンジョンが大きく揺れ始めたのだ。


「うわああ……これってアレだよね」

「早く脱出して!」


 ケロっとした表情に戻ったねむこは状況を直ぐに把握した。

 これは良くある展開、ダンジョンの崩壊なのだろうと。


 幸いにも目の前に出口らしき謎の歪みが出現している。

 ここに飛び込めばこのダンジョンとはおさらばになるのだろう。


 そしてにゃもちー達に何があったのかを問い詰められる。




 ねむこは果たして次のダンジョンへと挑むのだろうか。


 友と一緒にダンジョン攻略が出来ないと分かっていても。


 たった一人でしか攻略できないと決まっていても。


 日本の行く末は、ねむこの決断に委ねられていた。

ということで打ち切りエンドです。


キャラ設定と作風(どこまで真面目に描くか)をまともに考えずに見切り発車したからおかしな感じになってしまいました。

仮にこんなヘンテコな話で続きを期待する声があったとしたら、恐らく一から書き直しになる思います。


それではマノイ先生の次回作にご期待ください。

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