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15. リアルラックが低すぎる!

「ぬおりゃああああ!」


 ボンゴボンゴと爆発音が鳴り響く中、ねむこは教室内を飛び回る(・・・・)

 普通に走り回るのは机と椅子が邪魔なので、いっそのことそれらが固定されていることを利用して上に乗ることにしたのだ。


 学校でやったら絶対に怒られることを遠慮なく出来るからか、ねむこは背徳感いっぱいでゾクゾクして楽しそうにダンスする。


 ダンスの相手はもちろんクレヨンである。


「おっしゃあ!初見ノーミスクリア余裕でした」


 嘘だ。

 もうねむこは何十回も、もしかしたら百回以上も挑戦している。


 それもすべてはとあるドロップアイテムを確保するために。


「こい、こい、こーい!」


 全てのクレヨンが爆発し、床にドロップアイテムが残される。

 ねむこはそれを拾うべく駆け寄った。


「ノーーーー!まーたーちゃーいーろー!」


 床に両手と膝をつき、がっくしと項垂れて例のポーズをする。


「私のリアルラックが低すぎる!」


 クレヨンが落とすのは色とりどりの粉だった。

 それは防具を着色するためのアイテム。

 しかも単なるファッション目的ではなく、染めることで装備の能力がアップするのだ。


 今のねむこは青系を中心にした爽やかな色でデコられている。

 しかし本当はピンクを基調にした可愛らしい感じにデコりたい。


「ピンクプリーーーーズ!」


 他の色は割と満遍なく出るのに、何故かピンクだけはほとんど出現しない。

 ねむこはムキになって周回プレイをしているが、世界中の人々はそれを延々と見せつけられて辟易していた。


「よし、次いくべー」


 とはいえ、ねむこも同じところを延々と周回していたわけではない。

 周回していたのは二階の中ボス部屋を除くほぼ全域。

 クレヨンとの戦闘だけでは飽きるので往復して色々な敵と戦っていたのだ。


「はっはー、どこ見てるのかな。あたらないよーだ」


 シャープペンシルの先端から発射される芯を軽やかに躱し、同時に出現していた鉛筆をニュートゲバットで粉砕する。


 なお、トゲバットを染めるのに必要な染料の数が多めだったので、何故か多く入手した茶色で染められている。

 彼女達の間ではこれをトゲクソバットと呼んでいる。


「弾切れですかな。ヒャッハー!」


 全弾打ち尽くして何も出来なくなったシャープペンシルを容赦なく粉砕し、最後に残った敵に体を向ける。


「おまいは嫌い。早く攻撃して来いよー」


 その敵はボールペン。

 こいつは中のインクを飛ばして来るので、それがキモくて近寄りたくない相手だった。

 キモいだけでなく、一時的に染料の効果を無効化して装備の効果がダウンするので厄介な相手でもある。


 ということで、ねむこはいつも全部空撃ちさせてから倒している。


「ふぅ、完了っと。次々!」


 学校ダンジョンの二階のテーマはどうやらペン系の文房具らしい。

 クレヨン、鉛筆、シャープペンシル、ボールペン。

 いずれも遠距離攻撃を中心とした厄介な攻撃を仕掛けて来る上に、先に進めば進む程これらが一緒になって出現するから様々な対応力が試される。


「もっともっと一緒に出て来ても良いんだよ。特にピンクのクレヨン!」


 出現するクレヨンの色はランダムだ。

 そしてドロップアイテムは出現したクレヨンの中からランダムで選ばれる仕組みになっているっぽい。

 なのでまずはピンクレヨンが出なければ欲しい物は手に入らないのである。


「ねむこ、そろそろ先に進んだら?」

「いーやー!」


 ちなみに色の違いで効果が違ったりはしない。

 完全に趣味の領域である。


「今のままでも十分に似合うわよ。ほら、トゲクソバットとか」

「そんなに茶色が好きなら今度にゃもちーにあれで顔パックしてあげるよ」

「嫌よ、ねむこだから似合うのよ」

「遠慮しなくても良いよ。にゃもちーの方が似合うからさ」

「こんな可憐な女性にクソ色は似合わないわ」

「クソ女の間違いでは?」

「あ゛?」

「あ゛?」


 もちろんこれらも全て世界に放送されている。

 日本の偉い人は頭を抱えている。

 ねむこの両親は娘をガチ目に説教すると決めた。


 自業自得である。


「ねむこ出たわよ」

「え、ピンクだー!」


 ピンクと茶色のクレヨンとシャープペンシル四本の混合部隊。


 シャープペンシルの遠距離攻撃が絶え間なく飛んでくるから面倒な相手なのだけれど、ねむこは全く気にしていない。


「ピンクうううう!」

「最後に倒すとドロップしやすいかも」

「それ都市伝説うううう!


 そんなことは既に確認済みである。


 机の上を軽やかに飛んで全ての攻撃を避け切ったねむこは空になったシャープペンシル達を粉砕する。

 クレヨンはとっくに自爆している。


「おおおお、粉だ!」


 シャープペンシルの場合は芯が残るので、粉が出現したということはクレヨンのドロップアイテムだ。

 後は色。

 ピンクと茶色だけだったので二択である。


「ぬわああああああああん!」


 やはりねむこはリアルラックが低すぎるらしい。


 なお、この後、ピンク四本+茶色一本という夢のような混合部隊を撃破して茶色が出現したねむこの心がぽっきりと折れた。

シャープペンシルが商標に絡むかもと慌てて調べた。

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