13. もっと可愛くしないと!
「誰か助けてくれーー!」
という声が日本の某所で頻繁に発せられている。
モンスターに襲われたとかそういう意味ではない。
全てはねむこの新スキルのせいである。
ユニークスキル『自動配信』
これにより、ねむこがダンジョン探索をしている姿を誰もが閲覧出来るようになった。
インターネットにつながなくとも、見たいと念じるだけで目の前に表示されるようになったのだ。
そしてそのことを世界中の人々が直感的に理解した。
ある時、ビビっと天啓のようなものが舞い降りて、使い方を強制的に理解させられた。
焦ったのは日本の偉い人達である。
世界で唯一ダンジョンに入れるスキルが見つかった。
その時点で世界中がねむこの情報を入手しようと躍起になっていた。
だが、日本政府はねむこの安全を守るためにスキルの情報は公開してもねむこのことは絶対に漏らさなかったのだ。
それが他ならぬねむこの新スキルによって明らかになってしまった。
しかも日本だけが最速でダンジョン内の情報を入手できるメリットまでもが失われてしまった。
日本に世界中からの問い合わせが集中しており、偉い人達が悲鳴をあげていたのだった。
そんなことはさておき、ねむこは静岡に戻り普通に登校をしていた。
ねむこがダンジョン攻略をしている動画はすでに公開されているので、クラスメイト達もねむこの冒険について知っている。
「ねぇねぇ心地さん!ダンジョン探索してるって本当!?」
「あの動画マジなん?」
「吹き飛ばされてたけど大丈夫?」
「分度器とかコンパスとかガキみてぇ」
「トゲバット見たい!」
教室に入ると多くの生徒に囲まれた。
否、登校中からすでに囲まれ続けていた。
「はいはい、質問は一回百円だよ~」
「「「「「金とんのかよ!」」」」」
「にゃもちーが答えるよ」
「「「「「お前が答えないのかよ!」」」」」
そんな有象無象などねむこの敵ではない。
軽くあしらって素知らぬ顔をする。
もちろん全員に対してそっけない態度を取るわけではない。
ねむこにはにゃもちーの他にも心を許した友人がいるのだ。
この子と友人になるって大丈夫か。
「ねーむこー!」
「ゆーるぽー!」
「「ひしぃ!」」
大袈裟に両手を広げて抱き合う二人。
ゆるぽと呼ばれた女生徒は背が高くて立派なものを持つ上級生だった。
「むふー」
「今日の感じはどうだい」
「最高」
ねむこは存分にアレの感触を楽しんでから体を離した。
「もうねむこったら、こんな面白、大事な事を黙ってたなんてさ。水臭いよ」
「え?私臭い?」
「ぷんっぷんに臭うからお風呂入ったら」
「ゆるぽと一緒なら入るよ」
「いやん、貞操の危機」
どうやらねむこワールドについていける人物のようだ。
そうでなければ友人にはならないか。
「んでマジなところ、どんな感じ?」
「誠に遺憾であります」
「遺憾だったかー」
ゆるぽはねむこが『みんな』で冒険をしたいと願っている事を知っていた。
そしてその『みんな』の中には自分も含まれているという事を。
「にゃもちーもダメなんしょ」
「そそ、でもちょっとお手伝いしてもらってるよ」
「なにそれずるい!」
「ゆるぽもゴブリンとイチャつく?超きもいよ」
「陰ながら応援しております」
「ぶーぶー」
これだけの会話で色々と通じるのだから、それだけお互いの事が良く分かっている関係なのだろう。
「にゃもちーは何係?」
「武器防具委員会のいいんちょ」
「いいんちょだったか」
「馬車馬のように働かせてますぜ」
「ブラックねむこ。おちんぎんは?」
「生えてないよ」
「きゃっ、知ってる」
「知ってたかー」
なお、話題に挙がっているにゃもちーは、現在クラスメイト達のおもちゃ、ではなくて説明係になっていた。
後でねむこはお小言を貰うだろう。
「ってちょい待ち。プラスチック的なやつはにゃもちーが作ったの?」
「そだよん」
「ねぇねぇ、私もアレやりたいんだけど!」
「おう、アレか。イイネ!」
ねむことにゃもちーの二人だけではどうしてもアイデアに偏りが出てしまう。
「どうせならみんなでやっちゃおっか」
「JKの底力を見せちゃおうってか」
「いいね、それ。世界中に配信しようぜい」
「よし、やったるかー」
ダンジョンに一緒に入ることは出来ない。
にゃもちーのように武具を作ることも出来ない。
それでもねむこのために出来ることはある。
ねむこが楽しくダンジョンを探索できるようにするために。
「もっと可愛くしないと!」
装備をもっと可愛くデコろう!
新キャラ登場&幕間回です。




