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12. 違う、そうじゃない

 ねむこは強い衝撃を受けて弾き飛ばされ、地面に数度バウンドした。

 あまりの衝撃だったからか痛みが時間差で後から襲ってくるが、それを実感する間もなく大量の分度器と定規がねむこに襲い掛かっていた。


「うう、痛いぃ、痛いぃ、痛いっていってるでしょうがああああ!」


 どうやら無事だったようだ。

 飛ばされた時もトゲバットを手放さなかったのが功を奏したのか、振舞わして纏わりつく敵を粉砕した。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、良くもやってくれたね!」

「ねむこ、無事なの!?」


 全身が痛むのか本気で顔を顰めてはいるが、武器を構えてしっかりと立っているのでまだ戦えそうだ。


「大丈夫、ここに当たったから……ってヒビが入ってるー!せっかくデコったのに!」


 ねむこが串刺しにならなかった理由は、コンパスの針が当たる直前で身を捻って胸元の防具の厚いところで防いだためだ。

 おかげで体を貫くことは無かったが、強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。


 防具諸共貫通していたら終わりだったが、最初の中ボスでそこまでの攻撃は来ないだろうと予測していたからこそ、迷わずこの防御行動に移れたのである。


「もう怒ったからね!」


 ねむこはトゲバットを手にコンパスに向かって特攻する。

 コンパスを守るかのように分度器達が道を塞ぐが、それを横薙ぎで粉砕しつつスピードを落とさず肉薄する。


 しかしコンパスはねむこが近づくと距離を取る。


「逃がさないよ!」


 コンパスの移動速度はそれほど速くない。

 ねむこの足でも十分に追いつける。


「でやああああ!」


 針の部分にトゲバットを上から叩きつけると、コンパスはクルクルと回って吹き飛んだ。


「まだまだぁ!」


 すかさず追撃のために走り出すが、残った分度器達がねむこを攻撃して止めようとする。


 しかしねむこはそれらを無視した。

 元々当たってもダメージがほとんど無いのだ。

 進行方向を塞ぐ邪魔な敵だけ排除して、最短距離でコンパスへと走り寄る。


「いい加減に、壊れて!」


 今度は横薙ぎ。

 しかしまだコンパスは消滅しない。


「もう、しつこい!」


 三度、ねむこはコンパスを追う。

 コンパスは逃げるのを止めて針の先端をねむこの方に向けた。


「させないよ!」


 鉛筆がグルグルと回りはじめる。

 おそらくはコンパス最強威力の突撃攻撃。

 まともに当たったらタダでは済まない。


 距離をとって確実に避けるのが安全策ではあるが、ねむこは攻撃を選択した。


「殺られる前に、殺る!」


 ねむこを殺そうと照準をつけている針に臆することなく立ち向かい、発射するよりも先にトゲバットを叩きつけた。


「これで終わり!」


 手ごたえがあった。


 大きな金属音と共に、コンパスが宙を舞った。


 そしてゆっくりと消滅したのであった。




「つ、疲れたぁ」


 はじめての本格的な戦闘。

 しかもダメージを受けて体中がズキズキする。


 流石のねむこもその場にへたり込んでしまった。


「お疲れ、ねむこ」


 大丈夫?

 とは聞かない。


 大丈夫でないことは分かっているからだ。

 今のねむこに必要なのはそんなことよりも、疲弊した心と体を少しでも休ませること。


 ゆえに、にゃもちーはねむこに疲労を実感させるような声かけはしなかった。


 その代わりに、ねむこを気持ち良くするための言葉を投げかける。


「楽しかった?」

「当然!」


 ねむこの最初の冒険がこうして幕を……







「え?え?何!?」

「ねむこ!?」


 突然ねむこが騒ぎ出した。

 にゃもちーが見ている画面からでは何も異変が起こったようには見えない。


「なんかね、突然ステータスが表示されたの」


 念じたわけでも無いのに、何故か透明な板がねむこの目の前に出現する。

 そして自動的にある部分が強調された。


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 ユニークスキル『日本ダンジョン攻略』


 日本に発生した八つのダンジョンに出入りし、攻略することが出来る。

 対象:スキル保持者のみ

   【固定】一人しか入れません スキルレベルが上がっても変わりません


 ダンジョン攻略が開始されたことを確認致しました。

 継続的な攻略をサポートするため、スキル保有者の希望に沿った特別報酬が発生します。

 なお、本メッセージは条件達成時に自動で表示されるものであり、いかなる問い合わせにもお答え出来ませんのでご注意ください。

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 もっきーとの会話に使っていた部分に特別なメッセージが表示されていた。

 ご丁寧に自動メッセージと書かれているので、もっきーが復活したとかそういう訳では無さそうだ。

 というか、敢えてこのメッセージを書くって逆に怪しく無いですか。

 

 まるで問合せしたくなるようなことが起きると言っているような……


 そんなことにも気づかないねむこは大喜び。


「やった!報酬だ!しかも私の希望に沿うってことはもしかしてみんなで冒険出来るようになる!?」


 ねむこがワクワクしていると、ステータスボードにまた変化があった。

 なんと新しいスキルが追加されていたのだ。


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 ユニークスキル『自動配信』


 ダンジョン攻略時の映像が自動的に世界中に配信される。

 メッセージのやりとりも可


 これでみんなと冒険している雰囲気が出るでしょ。ふぁいと! by もっきー

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 やったね、ねむこ。

 世界一の配信者になれるよ!


「違う、そうじゃなああああああああい!」

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