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10. 学校ダンジョン3F dieジェスト いや、死なないから!

本当にダイジェストです。

「ねむこ聞こえる?」

「スヤァ」

「ねむこの黒歴史シリーズその一、小学三年生の時に先生の事をおか」

「わー!聞こえてる!聞こえてるから!」

「最初からそう言いなさいよ」


 奔放なねむこにも恥ずかしいと思える過去があるようだ。

 なお、おかあさんではなく、何故かおかみさんだった。


 チュートリアルを周回してプラスチック装備を揃えたねむこは、いよいよ本格的なダンジョンアタックを開始する。

 その相棒として、強引ににゃもちーを連れて来た。


 もちろんにゃもちーは中に入れない。

 ただ、外と中で連絡が取れるので、ナビゲータとして指名した。


 日本の命運を握っているかもしれないねむこの要望は誰も断れず、にゃもちーもなんだかんだ言ってねむこのことが心配だったので文句を言いつつ承諾した、という経緯だ。


 なお、ねむ担はねむこ不在でも経費で寿司を食べ過ぎたため謹慎中である。


「装備はどう?動きやすい?」

「良い感じ。後はもう少しパッドを大きくすればなぁ」

「入れてないでしょうが」

「そうだった。入れてるのはにゃもちーだった」

「入れてない……わよ!」


 嘘だ。

 実は結構盛っている。

 パッド系巨乳女子だ。


 修学旅行で一緒にお風呂に入った時に微笑ましい目で見られるがよい。


 それはそれとして、ねむこの装備だ。

 分度器から入手したプラスチックで作った軽鎧。


 パーツごとに分かれているタイプのもので、主に急所を覆っている。

 関節を曲げるのを邪魔しない作りになっていて、元々の装備の軽さもあって動きやすい自然な着け心地だ。


 なお、ねむことにゃもちーの合作で酷くデコられているが、気にしてはならない。


「パラメータはどうなってる?」

「まってねん。ふむふむ、おお、めっちゃ上がってる!」


 パラメータは装備していない時はオール1。

 今は防御力を中心にそこそこアップしていた。


 具体的な数値?知らないですねぇ。


「素早さがほとんどあがって無いのはなんでだろう。もっと尻軽な女になりたい」

「それは止めなさい。多分靴を装備してないからね」

「にゃるほ」


 流石にプラスチックで靴は作れなかったようだ。

 なお、このパラメータだが、表記されているのは肉体そのものの能力である。


 例えば、不思議なことに、鎧を装備するだけで肉体そのものが硬くなるのだ。

 もちろん鎧の部分は皮膚よりも更に固くはなっている。

 だから露出が多い場所を狙われる心配はあまりしなくても良いのである。


 この辺りは、小盾を持って周回している時に気付いていた。

 一番最初に挑戦した時に分度器が腕に当たって折れた折れたと騒いでいたが、小盾を持っているだけで、肌に直接あたっても痛みを感じなかったのである。


「よぉ~し、それじゃあチュートリアルで『コレ』試してみるね」


 ねむこは手に持つ『コレ』をぶんぶんと振り回す。


「やっぱり似合わないわね」

「じゃあなんで作ったのさ!」

「使いやすいかなと思って」

「ごもっともでした」


 にゃもちーは武器を作るにあたって、最初は王道の剣を作るつもりだった。

 他の武器は不器用な(シャレではない)ねむこでは慣れるのに時間がかかると思ったためである。


 だが、ふと気が付いたのだ。


 慣れている武器なら、もっと適しているものがあるではないか、と。


「それじゃあ分度器さん。おいでおいで~」


 チュートリアル部屋でねむこはそれを構えて分度器が突撃して来るのを待つ。

 そしてそれを振り抜いた。


「ほむらーん!」


 カキーン!

 とは飛ばなかった。


 その武器から生えているトゲの一つに突き刺さり、即座に消滅したからだ。


 ダンジョンプラスチック製のトゲバット。


 それがにゃもちーが作ったねむこ最初の武器だ。


 剣よりもバットの方が使い方のイメージが湧きやすいだろうと考えたからであって、決してねむこが普段からトゲバットを愛用しているというわけではないのでご注意を。多分。


 なお、攻撃力は普通の剣よりも遥かに高い。


「悔しいけどめっちゃ快適」


 トゲバットをぶんぶん振り回すあぶねー女。

 こんなキャラクターはいくら創作の世界でも…………思い当たるキャラが多すぎる。

 創作の世界さん、おかしくないですか?


「よぉ~し、それじゃあいっくぞ~」


 ついに、チュートリアルの先へと進む時が来た。

 分度器さん、おつかれさまでーす!


「また分度器じゃん!」


 分度器さん、よろしくお願いしまーっす!


 廊下に出たねむこを襲ってきたのはまたしても分度器。

 但し、今回はひび割れていない。

 つまりチュートリアルのものよりも固いのだろう。


 だが哀れ、チュートリアルを周回し過ぎて装備が万全のねむこの前では、結果は同じだった。


「ほむらーん!」


 最初の町の周りでモンスターを狩りまくり、その時点で買える最強装備を全部揃えてしまった。

 そう言えば分かる人には分かるだろう。


 ということで、ねむこは学校ダンジョンの三階を調子よく進んだ。


「おお、定規だ」


 分度器と同じで大きい。

 体をしならせて叩こうとして来る。


「ほむらーん!」


 分度器と同じ大きさなので攻撃を当てやすく、同じ硬さなので『一☆撃☆粉☆砕』。


「また分度器だ。おお、何その動き、超格好良い!」


 今度はただの体当たりでは無く、水平になってその場で円を描くように高速回転を始めた。

 するとまるでチャクラムのような形になり、そのままねむこに体当たりをしてきた。


「ほむらーん!」


 多少格好良くても耐久度は同じであるし、当てやすい事には変わりがない。

 分度器の活躍する場面はもう無さそうだ。


「輪ゴム?」


 少し違った趣向の敵が出現した。

 大きさは一般的なものより少し大きいくらいでやや太い。


「ほむらー……あれ、どこ行った?」


 トゲバットの、トゲとトゲの隙間に入り込んでしまった。


「このぅ、出てこーい。あいたっ!」


 手探りで取り出そうと思ったら勢いよく飛び出してきて額にあたった。

 痛みはもちろん輪ゴムで弾かれた程度の痛みだ。


「いたっ、いたっ、このっ!このっ!」

「ねむこ、落ち着いて。ちゃんと狙ってトゲに刺すのよ」

「むーずーいー!」


 どうやら輪ゴムには打撃耐性があるらしく、トゲ以外のところをぶつけてもダメージを殆ど与えられないようだ。

 倒すにはトゲの部分に刺すのが一番手っ取り早いが、敵も動いているので中々綺麗に刺さらない。


「ムキー!」


 苦手な敵だったが、攻撃力がそれほどない、というか今のねむこの装備では大したダメージを負わないので、敵では無かった。

 ただただ面倒で、精神的に苛つかせてくるだけだ。


「もう輪ゴム出て来るなー!」


 そんなねむこの願いなど裏切られるに決まっている。


「……………………」


 次に出現したのは輪ゴムと定規のセット。

 すでに輪ゴムは体の一部を定規に引っ掛け、体を伸ばして定規をしならせている。


 まるでウザイ小学生の相手をしているような敵だらけで、ねむこのメンタルは削られているのであった。




 そうこうしているうちに、入口とは反対側の端の教室まで辿り着いた。


「ねむこちょっと待って」

「どしたの。ちょっと疲れたからここ終わらせて一旦戻ろうと思ってたんだけど」

「疲れたなら今すぐ戻った方が良いかもしれないわ」

「?」

「ほら、扉の周りを見て」


 ほんのりと赤いオーラが纏っていた。

 明らかにここを通ると何かがありますよ、的な雰囲気だ。


「もしかしてボス!?」

「元気あるじゃない」

「当然でしょ。あんな意味の分からない弱い敵ばかり相手にしてたんだもん。もっと普通に戦ってみたい!」

「そう……」


 にゃもちーは考える。

 長年の付き合いから、ねむこは空元気というわけではなく本当に気力も体力も余っているのが分かっている。


 問題は敵の強さだ。

 今のねむこが戦って太刀打ちできるのか。


 チュートリアルの部屋の様子を考えると、閉じ込められて一発勝負の可能性が高い。

 ここは念のため、輪ゴムや定規が落とした素材を集めて装備の更なるグレードアップを目指すか?


「分かった、ねむこ、行こう」

「ふんす」

「ふんがーの方がねむこらしいわよ」

「そうだった、失敗失敗」

「認めちゃうの」


 にゃもちーは行けると判断した。

 これまでの戦いでねむこは被害らしい被害はなく、敵を圧倒して来た。

 それなのにボスとギリギリの戦いになるとしたら、それは最早クソゲーと呼んでも良いレベルのバランスだ。

 しかもクソゲー具合が分かりにくいから話題にならないでひっそりと売れずに生産終了になるやつ。


「たのもー!」


 ねむこは躊躇することなく、その教室に足を踏み入れた。


ボス戦。

ちゃんとバトルになると良いなぁ。

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