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第3話

 そして私はキャサリンを呼び出して、勉強はともかく男の子達への接触の件を尋ねた。


「え? 何かおかしいの? だって、皆同じ庭でお話しているじゃないの。だったらお近づきになってもおかしくないのじゃないの?」

「キャシー…… それは子供の時のことよ。いくら同じ庭に居ても、軽々しく話しかけたりしないというのが淑女というものだわ。そういうこともこの学校では教えているのよ」

「えー? そんな、つまらない! だって寮では皆真面目に本読んだりピアノだったり。ダンスは面白いけど、休み時間に付き合ってくれる友達居ないし」

「だから、そういうことはしないのよ。そういう生活自体をここで学ぶんじゃないの。それに貴女、お勉強の方も」

「どうせアシュリーより私ずっと馬鹿だもの!」


 ぷい、と彼女は横を向いた。


「馬鹿なんて」

「皆言ってるのよ。何で最上級生のアシュリーさんはあんなに良い成績なのに貴女はこんな酷いのって」

「実際そうなんでしょう? 家に居た時から、ミス・マドレーも凄く心配していたのよ。貴女のできるできない以前に、勉強に対してやる気がないのを」

「だってつまらないんだもの。それにミス・マドレーはいつもいつも宿題沢山出して! 勉強時間終わってさあ庭に出て遊べると思ったらあんなにいつもたくさんの宿題で」

「そのくらい出さないと、貴女はついていけないから、先生はずいぶん悩んでらしたのよ」

「アシュリーはできるからいいのよ。私言われてもちんぷんかんぷんだもの。だからその上のこと言われたって、頭に入ってきやしないわ」


 おそらく綴りと文法、それに四則計算の最初でつまずいている。

 そこをきちんと叩き込んでおかなかったのだが、残念ながらその時の教師はミス・マドレーじゃなかった。

 前の教師は、私や兄の様にある程度できる者を引き上げることにばかり熱心で、基礎に関しては放っておいても大丈夫、と思うタイプだった。

 そこは完全に人選ミスだった訳だ。


「でもこのままじゃ、学校には居られなくなるのよ」

「だったらいっそ家に居た方がいいわ。今までみたいに家庭教師で。アシュリーお手紙書くんでしょ? 私も書くから、一緒に入れて」


 結果、キャサリンは一年で学校を辞めることとなった。

 別に義務教育ということではないので、それは構わないのだ。

 ただ、ある程度社会に触れさせる一環としての学校であり、寮生活だ。

 それに耐えきれなかったとしたら。

 どうもこの先の彼女の将来に私は不安になった。


 私は学校を卒業し、妹は退学して、共に家に戻ってきた。


「お母様! もうあんなとこに私を入れちゃ嫌!」


 そう言って帰るが早く、母の胸に飛び込む始末だ。


「手紙は読んだ。苦労したらしいな」

「私は別に。ただこの先、どうしたものでしょう」


 私は父にそう問いかけた。

 この時彼女は十四。

 私は卒業した辺りでちょうど社交界に出る歳だった。


「つきっきりでともかく基礎から叩き直さないとな。決めていた婚約者も代えないといけないかもな」


 婚約者。


「バーナード様はお元気でしょうか」

「ああ、この間エドワードと一緒に大学から戻ってきてな。お前のことを気にしていたぞ」

「あら」

「そろそろお互いに手紙交換でもしてもいいんじゃないか? エドワードに、向こうに出す様にうながしてみるぞ」

「そうですね。お願いします」


 私は彼のことを思い出す。

 最後会ったのは、兄の大学進学祝いの時だった。

 その時、共に進学する仲間としてバーナード様も参加していたのだ。

 その時主に兄や彼に話しかけていたのはキャサリンだった。

 ただ兄はキャサリンのその態度に少し不安を感じたらしい。

 私に対し、寮の方へ手紙を出してきたくらいだ。


「これは俺の邪推かもしれんが、キャシーはバーニーに惚れてるんじゃないかと思う。

 邪推だ。

 そうでなければそれが一番いい。

 単に昔からの子供っぽさの延長で俺達に話しかけてきたならいいんだが、それでもあれもそろそろ学校に行く時期だ。

 お前も気をつけていてくれ」


 と言っても、その時点ではどうしようもなかった。

 ただ、記憶には留めておいた。

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