第96話 死後の世界
私の七歳の誕生日──
私たち三人は、国王が以前演説を開いた広場に連れていかれた。
そこには十字架が──そう、磔だ。
私たちの死にゆく姿を、多くの国民が見ていた。
彼らの恐怖に侵された目、それ見た私は──
ああ、彼らはなんて可哀想なんだ。ここは地獄、やっと私は解放される──
と、幸福の二文字を感じる。
にこやかな笑顔を浮かべ、私の心情は穏やかになっていく。
そして、私は自分の体から飛び散る、真っ赤な血を最期に目にし──亡くなった。
★★★
メシアがすやすやと眠る部屋の中。
A0-2は、驚きのオリジンの過去の話に夢中になって、耳を傾けていた。
そんな彼女にオリジンは問う。
「A0-2、人は死ぬとどこへ行くと思う?」
「……天国か地獄でしょうか?」
A0-2の返答に、考える様子を見せるオリジン。
彼は少しの間をあけた後、彼女に言った。
「──違う、ボイドだ。ボイドという無の空間に、精神だけが逝くんだよ」
そして再び話に戻る。
私は死んだ後、姫に出会った。
その時にこの力──現実改変能力を手に入れたんだ。
★★★
死んだ直後、私の視界は真っ暗になり、そこから自分が死んだことを実感した。
体の感覚はとうに無くなっており、残っていたのは精神だけ。
五感などはたらくはずもないため、自分が今、どこでどうなっているのか見当もつかない。
──しかし、そんな時だった。
「──すのじゃ! ……返すのじゃ──!」
どこか遠くの方で、少女の声が聞こえる。
あれ……僕は死んだはずじゃ──
『自分が死ねていないかもしれない』という不確定要素に、私は不安になった。
『声が聞こえる』
また、そんな不思議な状況に戸惑っているうちに、今度は瞼の感覚が現れる。
反射的に目を開けた私は、寝ぼけたように辺りを見回した。
そこにはどこまでも続く真っ暗な空間が。
そして、私の他に誰もそこには居なかった。
この私が目覚めたこの場所こそ──『ボイド』、別名"無の空間"と呼ばれる場所。
何が起きているんだ──?
バッバッ、と鳥のように勢いよく頭を振って、状況を確認する。
ここはどこ──?
続けてそのような単純な疑問が頭に浮かんだ。
こんがらがりかけている私の頭。
最後のとどめにまたもや聞こえた──
「──それは妾のものじゃ! 返せ麒麟!」
遠くからの少女の声が。
私は声のする方向わ、目を細めながらじーっと見つめる。
ん──?
ずっと遠くの方に──何者かが居た。
そして、点にも等しい何者かの姿を目に映した当時の私は
国王が見たという主──破壊主インフィニティ、
もしかして……向こうに居るあいつか──?
勝手な憶測を立てて、勝手に解釈した。
優しい国王が変わった原因。
国が荒れ果てた原因。
自分を拾った二人が死んだ原因。
自分の人生が壊れた原因。
すべて……あいつのせいだ……!
あいつが全部悪いんだッ───!
遠くに居る、得体のしれない少女。
当時の私は、彼女に底知れない恨みを感じていた。
そして、たまらずダッと走り出す。
「──あっ! お主も妾の菓子を! 返すのじゃケルベロス!」
遠くから聞こえる賑やかな会話。
人の人生を壊しておいて……呑気に喋るな──!
無限に心に湧く怒りを機動力に、私は走り続けた。
声と少女の姿がだんだんと近くなっていく──
「──そういえばお主ら二人、精神体の管理は大丈夫なんじゃろうな?」
「くぅー?」
「『くぅー?』じゃないわ──!」
僕の様子などお構い無しに続く、少女と誰かの会話。
あの様子だとおそらくまだ気づいていないのだろう──
私はひたすらに足を動かし続けた。
「──良い者の精神体は天国に、悪い者の精神体は地獄に。散々言ったじゃろう!」
先程までは点に等しかった少女の姿。
しかし、だんだんとその実体が明らかになっていく。
「──二人して妾をそんな目で見つめおって……自分たちのの仕事に何か不満か?」
私はようやく暗闇の中に佇む、少女の姿を捉える。
十三歳くらいだろう。
そんな背丈の少女が、私に背中を向け、立っていた。
そして彼女の背中には、魔王が付けるような長く大きいマントが。
「──ふざけるでない、麒麟、ケルベロス! それ以外の精神体はこのボイドに送られてくるのじゃ! つまり妾が管理するのじゃよ!」
私はラストスパートだと思い、走る速度を更に上げた。
自分が出せる最高速度。
それに乗りながら右腕をぐっと引く。
駆ける勢いに拳に乗せて、私は叫びながら全力で彼女に殴りかかった。
「僕の国をは破壊しておいて、タダで済むと思うなよ! 破壊主インフィニティ!」
『──ッ!?』
「うわぁぁぁぁ───!」
───ペち
全身全霊、重い拳を振るったつもりだったが、暗闇に響いたのは弱々しく可愛らしい音だけ。
私の全力のパンチは、あっさりと少女の左手で受け止められた。
「えっ……?」
私は驚きの声を漏らす。
掴まれた拳を振りほどこうとブンブン腕を振るが、びくともしない。
というか逆に、少女の握る力が強くなっていく気がする。
「──主神である妾にいきなり殴り掛かるとは……」
突如、口を開いた目の前の少女。
彼女の声が耳に届いた瞬間、私の顔からは冷や汗が垂れ、心臓は激しく脈を打ち始めた。
そうだ──
七歳の僕なんかが……まともに太刀打ちできるはずがなかった──
ようやく我に返り、状況を把握する。
少女の左手に包み込まれた、自分の拳。
そこに固定されていた視点を、私は少女の顔へと移動させ始める。
自身の荒い呼吸、私はそれをひしひしと感じていた。
ゆっくりゆっくり動かしていき……最終的に彼女と目が合う。
そこには──背景の暗闇と同じく、思わず飲み込まれそうな暗黒の眼。
そしてその中心に、全てを焼き尽くす煉獄のように紅い瞳孔が存在した。
それが私をギロリと睨んでいる。
それだけでも、当時の私は気絶しそうなほど恐怖していた。
なのにも関わらず、少女は私に言った──
「無礼者が……、地獄送りにしてしまうぞ──?」
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