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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第3章 メシア編【アカシックレコード編】
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第74話 心配事

「では少しここで待っていてくれ」


僕とイザナミより先に部屋に入り、僕たちを誘導したA0-2。

彼女はそう言葉を残すと、さっさと部屋をあとにした。


ガシャン──!

A0-2がドアの境目をまたぎ終えたその途端。

部屋の壁に設置された自動ドアは、音を立て、なおかつ高速で閉まった。


ムーティアライトの破壊で自身の力を使い切ってしまい、まともにそれに反応できなかった僕。

一般人とほぼ同等、またはそれ以下の能力にまで成り下がっている僕の体はビクッと動く。



★★★



「なんだここ──」


A0-2が過ぎ去り、自分の目の前に広がる部屋の様子を見てつぶやく。

部屋の大きさは見たところ学校の教室ほど。

その中央には電子パネル付きの大きなテーブルと、人数分の椅子が設置されていた。

壁はあまり目にしないような不思議な感じの素材でできており、恐らく防音仕様。

部屋のつくりの雰囲気は、APEX社の他の設備同様、近未来的でハイテクな様子。

そして全体的に白色でシンプルなものである。


そんなこの部屋をじっくりと見ていると、イザナミが僕に話しかけてきた。


「ねぇメシア……」

「うん?」

「本当にあの七海雫って奴と、七海心音って奴とは……そういう関係じゃないんだよね? 特にあの七海心音……」

「そうだよ。七海は爽真が好きで、心音はあくまで一方的。さっき説明した通りだよ」

「本当に……?」


イザナミは心配そうな視線を、上目遣いで僕に送ってくる。

まだ浮気してると思われているのか──

そんな考えが脳裏に浮かびもしたが、今はどこか違う気がした。


僕はイザナミの問いに答える。


「本当だよ。もしかして浮気だと……?」

「いや……そういう訳じゃなくて……」


普段よりも弱気になるイザナミ。

彼女はメンヘラ気質というかなんというか。

いつもならもっと強気に来るはずなのだが、今回はどこかおかしい。

不思議に思った僕は、彼女に聞く。


「どうしたの?」


しかし、彼女はもじもじと話したげな様子のまま。

まるで初めて会った時の心音のようだ。

僕はさらに声をかける。


「何か心配事とか……ある?」


イザナミの表情を伺いながらそう聞く。

すると彼女は──


「えっと、あのね……?」


ようやく話し始めるのであった。

僕は相槌を返す。


「うん」

「その、目移りとかするのかなって思って……」

「え? な、なんで?」


戸惑いながらも僕はそう聞き返した。


「だって……私あんまりメシアと一緒に居れないし。それに私、ついついめんどくさいことしちゃうし……。今だってそうだしさ……」

「そんなことないよ──」

「──いや、嘘はいいの」


思い詰まってしまっているイザナミに言葉をかけるが、一瞬であしらわれてしまう。

僕が七海たちと関わっているという事実から、被害妄想のようなことをしてしまっているイザナミ。

僕はそんな彼女にどのように接すればいいのかわからなかった。


戸惑っているうちに彼女は話を再開する。


「しかもそれだけじゃない……。言いたくないけど、あいつら二人ともすごい可愛いじゃん……。特にあの七海心音。あいつまだアイドル志望だってのに、もう有名なんでしょ?」

「心音は確かに有名だけど……」


僕とイザナミはそのような話を、ドアの前で立ったまま繰り広げる。

一旦席に座りなよ、とでも言いたいが、イザナミは相当思い詰めているようで声をかけずらい。


「三年間もあんな奴と関わることになるんでしょ……?」


イザナミはうつむきながらそう声を上げた。

僕がどうしようと悩んでいる間に、彼女の思い詰めはエスカレートしてしまっている。


「ほら、やっぱり何も言わないじゃん……。どうせ私じゃなくて七海心音のほうにいくんでしょ……?」

「僕はそんなこと何も言ってないよ……」

「何も言ってないのがダメなの……!」


やはりどう声をかけてもまったく効果はなかった。

ここまで来ると彼女にはまったく歯が立たなくなる。

だいぶ強敵だ。


もう、いったいどうすればいいんだよ──


頭の中で必死に思考を巡らせた。

しかしそれと同時に、彼女への対応が乱雑になりかけている自分──

それに気づく。


昼のムーティアライトの一件による疲れ。

そのせいなのかもしれないが、やはり彼女であるイザナミにそんな対応するのは気が引ける。


しかし、体は正直だ。

ムーティアライトを破壊してからAPEX社日本支部、

つまり、ここに来るまでの5時間の間、一応睡眠をとってはいた。

それでも、ステップゼロでの体力の消費は大きすぎたらしい。


5時間も寝たというのに、何故か疲れはとれず、今の僕の体はまさに疲労困憊。

今すぐにでもベッドに飛び込みたいところだが──

そんなことは言ってられない。


「なんか言ってよ、メシア……」

「……」

「やっぱり図星なの……?」

「……」

「メシア……?」


僕が黙りながら考えているうちに、彼女の思いはエスカレートしていく。

しかし、それと同時にどんどんと疲れが出てきているのも事実。


そんな状況下で今のイザナミを攻略する言葉を言うのは不可能に等しい。

そしてやはり僕は黙り続けてしまう。


「……」

「ねえってば……」

「……」

「メシア……!」


何度もイザナミから声をかけられる。

疲れきった脳による思考が、それによって何度も何度も遮られていた。

僕はもうやけくそになって声を放つ。


「あぁもうっ──!」


思考が止まりかけている僕が最終的にたどりついた行動──


僕は目の前に立つ彼女の肩にトン、と両手を置いた。

少しフラフラとしながらも、僕は彼女の透き通るような蒼い目をしっかり見つめる。


「え……?」


僕のいきなりの行動に、戸惑いの声を漏らすイザナミ。

疲れからくる僕のフラフラとした動きから、イザナミの髪は軽く揺れていた。

そして、少し頬が赤く染まる。


一方で僕の方は、脳と体への疲労がどんどんと蓄積されていき、意識が弱くなってきていた。

しかしそんな中、僕は彼女に顔を近づけていった。


しかし──


あぁ……やばい……、もう限界だ──


睡眠をとったというのに何故か急激に現れる疲れ。

僕の視界はゆらぎ、フラフラと体が不安定に。

そして眠りにつくように意識が遠のいていき、思わず倒れ込んでしまった。


ドサッ──


疲れ切った僕の体は、イザナミを下敷きにして地面に倒れた。


「えっ!? ちょっ、そういうのはっ……!」


何を勘違いしているのか、そのような言葉を口にするイザナミ。

しかし、彼女が驚くのも仕方のないことだ。


僕は彼女に覆いかぶさってしまっているという事実を感じる。

そしてそれと同時に、どんどんと思考もぼやけていく。

イザナミの声すらどんどん小さくなっていった──



しかしそんな中、僕は最後に耳にするのだった。


ウィーン──

部屋のドアが開く音。

そして──


「おい……イザナミ、メシア。一体ここで何をしている──」


部屋に入り、僕たちの様子を目にしてしまったA0-2の声が。

そして僕はとうとう完全に気を失った──

読んでいただき本当にありがとうございます!


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