第64話 宇宙
ゼロの話に一区切りがつく。
しかし、僕の周りには変わらず、黒い粒模様の景色が広がっていた。
先程ゼロは『後で話しましょう』と言っていたが、僕は彼に聞く。
「ところでゼロ、結局この粒は何……?」
僕の声を感じ取ったゼロ。
彼は少し間を空けると、一言だけ言い放った。
「これは、宇宙です」
「う、宇宙……?」
ゼロの発言に、僕は戸惑う。
自分の目に映る景色と、宇宙という二文字の単語を照らし合わせてみた。
思考を巡らせる僕。
無数の黒い粒と……宇宙……。まさか──
考えた結果、とある予想が脳裏に浮かぶ。
しかし、それはあまりにも非現実的で、ありえないものだった。
僕は必死に頭を振って、その予想を振り払おうとする。
しかし、続けてやってきたゼロの言葉が、僕の予想を裏付けたのだ。
「このアカシックレコードの空間いっぱいに映し出されている、無数の黒い粒。その一つ一つが……宇宙なんですよ」
彼の声が脳内に反響する。
まさに僕の心境は唖然の二文字。
スケールが大きすぎて実感がわかない。
どうせ嘘だ──
そうやって現実逃避をしてみるが、妙にゼロの話は信用性が高く聞こえた。
しかし、僕は改めてゼロに聞いてみる。
「ほ、本当にこれが宇宙なの……?」
「ええ」
彼は迷うことなく、一瞬にして返事を返した。
「もし疑っているようでしたら、あなたの宇宙をここに映して差し上げましょうか?」
続けてかかったゼロからの問いかけ。
僕はそれに冷や汗を流しながら、首を縦に振った。
それに対し、彼もこくりとうなづくと、右手で画面の拡大縮小をするようにして、目の前の風景を操り始める。
ぐるぐるととてつもない速さで動く、目の前の景色。
僕はそれに酔ってしまいそうだった。
★★★
しばらくしてゼロは口を開く。
「見つけました。これがあなたの住んでいる宇宙、識別宇宙名称は──ザ・オリジン」
「識別宇宙名称……? ザ・オリジン……?」
「わかりやすいように宇宙ごとに名を付けているのですよ。気にしないでください」
そう言ってゼロは僕のことをなだめつつも、続けて風景の様子を操作し続ける。
やがてある一つの宇宙が、アカシックレコードの空にでかでかと映し出された。
「このアカシックレコードからは、あらゆる現実のあらゆる宇宙を観測できるんです。どうです、見えますか?」
ゼロにそう問われる僕だったが、うんともすんとも言わない。
僕は自身の目に映った光景に、唖然としていたのだ。
「ここが……僕の宇宙……?」
ゼロが僕に見せた宇宙。
しかし、それは他の宇宙とは比べ物にならず、驚くほど不気味で、奇妙なものだった。
禍々しい、黒みがかった紅色のオーラがまとわりついている。
これが僕の住んでいる宇宙だと言うのか──
「ちょっと待ってゼロ……」
「はい?」
「なんで僕の住んでいる宇宙は……なんというか、こんなにもおかしいんだ……?」
僕はゼロにそう聞く。
それに対し
「おかしい……ですか。わかりました、では順を追って説明していきましょう」
とゼロ。
アカシックレコードの巨大な空間に、ゆらゆらと映っている僕の宇宙。
それを背景に、ゼロは一つずつ言葉を紡いでいったのであった──
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