第63話 現実
ちょっと今回の内容は理解しずらいかもしれません。
結構頑張ったんですけど、すみません。
「今の説明で私が何者なのかお分かりいただけましたか?」
腰を少し曲げ、顔を前に突き出してそう僕に聞くゼロ。
彼の身長は見たところ200cmほど。
さらに、すらっとしたその体格。
僕と30cm近くも差があるその体からも、ゼロと僕の間の圧倒的な力の差を感じた。
僕はゼロを間近に感じつつ、首を縦にふる。
そんな僕の反応を見て、同様にふむふむとうなづくゼロ。
彼は続けて僕に言った。
「メシア、まだ疑問はあるのでしょう? 躊躇せずに聞いて下さい」
僕は悩む素振りを見せた後、ゼロに聞く。
「えっと、それじゃあ……この場所について詳しく──」
「──わかりました」
彼は僕の言葉を遮って、素早く一言返事をするとパチンと指を鳴らす。
あたりにその音が響き渡った。
瞬間、無限に広がっているように見える真っ白な空間が、ぶわっと一気に変化する。
背景が全体的に暗くなり、いくつもの黒い粒が空間上に映し出されている。
上、横、下……全方位のあらゆる空間がその粒状の景色によって覆われていた。
僕はその幻想的な様子を凝視しつつ、呟く。
「なんだこれは……」
自分の感情をそのまま口に出す僕。
そのつぶやきに、ゼロは話を始めた。
「この無数の粒については後で話しましょう。まずは私たちがいるこの場所、”アカシックレコード”からです」
「アカシックレコード……?」
「はい。とても簡単に言えば、アカシックレコードとは世界の様子を見守る管理室のような場所です」
「……ん?」
ゼロの言葉になかなか理解が追いつかない僕。
顎に手を当てて考えてみる。
世界の様子を見守る……
どこかの政府の管理室か何かか?
いや、でもそれにしては奇妙すぎる空間だ──
僕は、そんな納得がいかないような反応する。
すると彼は順を追って説明をし始めた──
「では例え話をしましょう。メシア、あなたの世界には"アニメ"というものが存在していますね?」
ゼロの質問に僕はうなづく。
「当たり前のことですが、そのアニメには作者が存在します。そのアニメを作った者のことです」
「そりゃあまぁ……、うん」
「当然、作者はアニメの世界を自由に書き換えることができます。『主人公の運命はこうしよう──』だとか、『結末はハッピーエンドで終わろう──』だとか。ストーリーの展開は作者の自由なのですよ」
当たり前のことを、こむずかしく話すゼロ。
彼の話の終着点がまったく見えない──
そんなことを感じる僕だったが、続けて黙って話を聞くことにした。
相槌をうちながら理解を進めていく。
「──しかし、アニメ内のキャラクターはどうでしょう。自身のいる世界がアニメの中だということも、作者の存在も……可哀想なことに、何もかも認識できないのですよ」
「まぁそうだよね……」
「作者は自由にアニメを書き換えれる。しかし、アニメの中の存在は作者に逆らうこともできず、されるがまま。この理不尽な上下の関係のことを──"現実の上下"と言うんです」
「現実の上下……?」
ぐぐっといきなり進み出した話の展開。
僕はゼロが放った、不思議な単語を繰り返す。
「はい。作者のいる現実のほうが上で、アニメの現実の方が下。上の現実にいる者は、下の現実を自由に操れる。それに対して、下の現実にいる者は、上の現実に逆らうどころか、認識することすらできない。とてもシンプルなことでしょう?」
ゼロは僕にそう聞いた。
僕はひたすらに思考を巡らせる。
作者のいる現実が、アニメよりも上。
だから、作者はアニメを自由に書き換えれる。
うーん……、わかることにはわかるけど……なんというか──
非現実的というべきか、現実的というべきか。
当たり前のことだからこそ、どこか腑に落ちない感覚がした。
しかし、ゼロは言葉を続ける。
「ところでメシア。あなたは『上には上がいる』この言葉を聞いたことはありますか?」
「うん──」
「──では話が早いです。先程例に出した作者ですが、『上には上がいる』という言葉通り、作者のいる現実にも、上の現実が存在するのですよ」
「えっとそれは……、つまりは僕たちの世界も、何かの物語の中だと……?」
「そういうことです。しかし、"あなた達の世界の作者"にも、当然上の現実があります。そしてその上も、さらにその上も──このように、現実の上下関係は無限に続いていき、終わることはないのですよ」
「な、なるほど……」
話の筋が理解出来ているのかどうなのか、自分にもよくわからない。
しかし、ゼロの言いたいことは、何となくだがわかったような気がする。
自分のいる現実が物語の中で、作者が存在する──
そんなこと考えたこともなかった。
それでもやはり、この世にはそれが確かに存在しているのだろう。
だが、自分の運命が何者かによって決められていると思うと、やはりどこか悲しさを感じる。
僕はゼロに尋ねた。
「作者が僕たちの運命を決めているってことは……それってつまり、僕たちには自由な意思がないってことだよね……」
作者がアニメに手を加えなければ、そのアニメのストーリーは進まない。
ひとりでにそのストーリーが展開されていくことなどないのだ。
だから、上の現実が存在する僕たちには、自由意志がない。
そう言える──
しかし、ゼロはまた違った返答を返した。
「いえ、あなたには自由意志はあります。現実の上下は無限に続きますが、その無限の現実が最終的に行き着く先は、最下層の現実なのですから」
「……え、え? どういうこと……?」
無限なのに最も下、最も上がある。
一体どういうことだ──?
矛盾を感じる僕。
ゼロは説明を続けた。
「例えば布で出来た輪を想像してください。そこには無数の繊維が存在し、それらが互いに支え合って輪を形成しています」
ゼロの言われた通り、頭にそれを浮かべて思考を巡らせてみる。
「現実の関係も似たようなものです。布の細かな繊維一つ一つが現実であり、現実の上下の影響を互いに及ぼしあって、輪を形成している」
「現実の帯……」
「そうです、現実の帯です。輪には絶対に両隣が存在しますよね? その両隣というのは、現実の帯で言えば上下。現実の帯は輪を形成していますから、お互いに上下の関係を及ぼしあっているのです」
「な、なるほど……」
「メシアが少し先のことに首を突っ込んだせいで、難しくなってしまいましたが、どうです? ここまでわかりましたか?」
ゼロの言った内容は一応だが理解はできた。
現実には上下が存在していて、それは無限に続いている。
しかし、実はその現実は輪を形成しているため、上へ上へと現実を登っていっても、結局はぐるりと一周してまた帰ってくるだけ。
すべての現実は、下でもあり上でもある。
互いに上下の関係を持ち、影響を及ぼしあっているから、その影響は相殺される。
つまり、僕たちの現実には上も下もないのだ。
だから、自由意志はある──
しかし、僕はひとつ疑問に思った。
ゼロはどうやってそれを確認したのだろうか、と──
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