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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第2章 メシア編【ムーティアライト編】
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第59話 七海日和(残り0日)

機動部隊の武器によって、跡形もなく吹き飛んだ屋上への扉。

固く閉ざされていた、その向こう側からはサッと明るい光が差し込む。

眩しいと感じる僕だったが、突如何者かの人影によってその光は遮られた。


「ねぇメシア……その後ろの女、誰?」


その声が耳に届いた瞬間に僕は目を丸くして驚いた。

ムーティアライトに攻撃を仕掛けてボロボロになっているはずの彼女──


「イザナミ……!」


そう、僕の目にはイザナミの姿が映っていたのだ。

反射的に彼女の名前を呼ぶ。


僕の後ろの方に居た七海や心音、爽真たちはもちろんのこと。

APEX機動部隊も日本担当の部隊だったため、間近でイザナミを見たことはなかったらしく、衝撃を感じていた。


「なんで君がここに……」


とっさに僕はそう質問するが──


「なにその慌てぶり。まるで浮気現場見られたみたいな反応じゃん」


腰に手を当て、僕を見下すようにしてそう言うイザナミ。

しかし、七海の冷たく恨みに包まれた目線が、後ろから絶えず僕に浴びせられる。


「お母さんの場所にっ……! 入らないでっ……!」


イザナミは七海のその様子と言葉を聞いて、浮気などそういった類のものではないと判断したらしい。


「メシアさん……やめてください……」


続けて背後から弱々しい心音の声がかかる。


なにかおかしい──

やがてイザナミはそう思い始める。


「ま、まって……何があったの……?」


イザナミはその状況を見て、戸惑いながらも僕にそう聞いた。

しかし、僕は七海たちへの申し訳無さが心に広がって黙ってしまう。

そんな時、七海の父親は僕に代わって答えたのだ。


「その屋上は……四年前に死んだ妻と家族の、最期の思い出の場所なんだ。だから……壊さないでほしい……」


機動部隊に拘束されてもなお、そう主張し続ける彼。

イザナミは自身がもう既に足を踏み入れてしまっていることに気づき、戸惑う。


謝罪をすればいいのか、それとも開き直って堂々と屋上をジャンプ台にして使えばいいのか──


そんな時だった。


バババババ──


なんの前触れもなく唐突にヘリのプロペラの音が鳴り響いたのだ。

イザナミに遮られている、そのかすかな屋上への隙間。

そこからは青空を背景にして飛ぶ、APEX社のヘリの姿を目に映すことができた。


バババババ──


何度も繰り返されるその音。

うるさいそれとともに、ヘリは地面へと近づいていく。

プロペラに撒き散らされた空気が僕たちの髪をなでる。


「APEX社からの協力はいらないと散々言っていた君が、こうも簡単に機動部隊を呼ぶとはな」

「なんであなたがここに……あなたはAPEX社日本支部から司令を下す役割のはずですよ」


空を舞うヘリからは彼女の声が聞こえた。

やがて屋上に堂々とヘリが着陸する。

そしてイザナミに続き姿を現した。


A0-2が──



★★★



「私は君の後ろにいる彼女たちに用があって来たんだ」


そう言うと彼女はコツコツと足音をたてながらこちらに向かってくる。

背後の七海と目線を合わせながら歩いていた。

そんなA0-2に七海はこう言う。


「その屋上は……私たちの──!」

「──わかっているさ。七海家にとって大切な場所なんだろ?」


A0-2は軽々と七海の言葉を遮った。

そして話を続ける。


「でもな雫、私はそうは思わない」

「……あなたに何がわかるんですか……!」

「何でもわかるよ。この屋上は母親と毎年打ち上げ花火を見ていた場所だろ?」


A0-2のその言葉に動揺する七海。

「なんでそのことを知っているの」とでも言わんばかりの、驚きの表情をしながら首を縦にふった。


さらにA0-2は付け加える。


「そしてここは君の父親が母親にプロポーズした場所でもある」


今度は七海の父親に目線を向けてそう言った。

A0-2の言うことはやはり正しかったようで、七海の父親も同じようにうなづいた──


「そして……アメリカに転勤となった母親との、最後の思い出もここから見た花火。でも彼女は四年前、アメリカで死んだ。だから君たちは母親との最期の思い出の場所として、ここを大切にしているんだろ?」


七海、父親、心音たちは三人揃ってうんうんと頷く。

目を丸くして口をぽかんと開くその姿はまさに驚愕の二文字。

マジシャンに心を見透かされたような、そんな表情を三人はしていた。


そんな中、心音は我に返り、A0-2がそこまで自分たちの事情を知っていることに疑問を抱く。

そしてA0-2に問いかけた。


「なんで……なんで、そんなこと知ってるんですか……」


その質問にA0-2は一呼吸をおく。

そして七海たちの目をしっかり見つめながら言った──


「私の本名は"七海日和(ひより)"。君たちの母親だからだよ」

読んでいただき本当にありがとうございます!


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