第51話 作戦会議(残り0日)
4月30日──ムーティアライト衝突まで残り0日。
その日の午前7時30分、APEX社は緊急で記者会見を開いた。
そして遂にムーティアライトの存在を公表したのだ。
『我々APEX社は直径約3300kmの超巨大隕石、ムーティアライトを観測しました。ムーティアライトは現在地球へ向かって来ており、本日の12時ちょうどに地球に衝突します──』
スマホには速報が届き、ありとあらゆるネットニュースでムーティアライトがとりあげられる。
テレビやラジオでも、どのチャンネルに切り替えてもムーティアライトで持ち切り。
全メディアが記者会見でのAPEX社の発言ひとつひとつに注目しているのだ。
『なお、現在究極生命体メシアにはムーティアライト破壊を命じています。きっと彼ならやり遂げてくれるはずです。メシアこそ我々の最後の希望、彼を信じましょう──』
APEX社から僕への期待の言葉。
「死にたくない、死にたくない!」
「メシアに賭けるしかないない……」
「神からの罰に抗うなどしてはならないこと……」
「あの大きさはさすがのメシアでも……」
「死んだらどうなっちゃうんだろ……」
それに対し、様々な考えや思いを巡らす全世界の人々。
絶望の二文字を初めて目の当たりにした人類は、それに酷く恐怖し怯える。
そして藁にもすがる思いでひたすら僕を信じ続けたのであった──
★★★
一方その頃、僕はというと──
「では今からムーティアライト破壊に関する作戦会議を始める──」
A0-2を主体とした作戦会議に参加していた。
APEX機動部隊の隊長や各国の軍隊の指揮官、大統領など……。
とても豪華な顔ぶれである。
場の雰囲気はこれでもかというほどピリついており、沢山の人間が僕に対して熱い目線を送ってきた。
そんな中A0-2は話し始める。
「まず各国の大統領に告ぐ。我々APEX社はムーティアライト破壊に対しての支援を一切要求しない。とにかく国民の安心を最優先で守っていただきたい。嘘の情報を流すでも何でもいい。とにかく不安にさせないようにしてくれ」
彼女のその発言に各国の大統領が黙ってうなづくわけもない。
一人が異議を唱える。
「待ってくれA0-2。『ムーティアライトの破壊に対しての支援を一切要求しない』と言っていたが、それは何故だ? 軍事兵器を使ってメシアを支援した方が成功の確率が上がるのではないか?」
一人のその意見に多くの人間が共感の意を示す。
しかし──
「陸上、海上兵器はムーティアライトに対してまったく意味をなさない。軍用機での攻撃もムーティアライトには傷一つ付けられないだろう」
とA0-2。
しかし、それにすかさず反論を返す。
「では核兵器ならどうだ? 世界中の国が協力すれば多少なりとも力になれるのでは?」
「世界中の核兵器が一点に集中すれば、その近辺に住む人々に多大な影響を及ぼす。よって却下だ」
しかしまたもやA0-2に厳しい言葉を返されてしまう。
各国の大統領は納得せざるを得ず、少し不満げながらも首を縦に振った。
その様子を見て、彼女は続ける。
「では次は各国の軍隊の指揮官だ。君たちは国民の暴動や犯罪を抑えてくれ。しかし、武力行使は極力控えてもらいたい。余計に不安を煽るかもしれないからな。あとの詳細は君たち自身に任せる」
「わかりました」
「そして次はAPEX機動部隊隊長に告ぐ。機動部隊にザ・ハウス 大賢タワー100付近10kmを集中して監視するように伝えろ。先程と同じく、暴動や犯罪が起これば武力行使をできるだけ使わずに抑えるんだ。いいな?」
「はい」
A0-2のもつ圧力は緊急事態だからということもあってか、いつもよりも強いものであった。
そんな彼女の指示に皆ははっきりと返事を返す。
各国の軍隊の人も、APEX機動部隊も、皆僕の実力を目の前で見てきた。
だからこそ知っているはずだ。
メシアの力ではムーティアライトには敵わないと。
でも何故彼らは諦めずに立ち向かい続ける?
僕のことを信じているからか?
それとも諦めてやけくそになっているからか?
どちらにしろ彼らのやっていることは変わらない。
ムーティアライトに勇気を出して立ち向かっているんだ。
だからこそ僕は絶対に言わなきゃならない──
そんなことを考えているうちに、僕の番がやってきた。
「そして最後に君だ、メシア。君はムーティアライト衝突の二時間前、つまり10時になったと同時にAPEX社を出発。その後、ザ・ハウス 大賢タワー100へ向かってもらう。
そしてエントランスで『196371』の六桁のパスワードを打ち込み、入場。エレベーターを使って最上階の七海雫の部屋を訪れ、屋上への通路を開けてもらうんだ。
最後、屋上からムーティアライトを破壊してくれ」
「わかりました」
固唾を飲み込みつつそう返事を返す僕。
皆の表情を見ればわかる。
緊張し、不安につつまれ怯えるその顔が目に焼き付いた。
しかし、僕も皆と同じだ。
七海はムーティアライトのことを聞いても家に留まってくれているだろうか──
人生の終わりにと、爽真を探しにでも行ってないだろうか──
そんな不安が何度も脳裏を横切る。
しかし、僕は究極生命体メシア、皆のヒーロー。
だから僕は言うんだ──
「以上で伝達事項は終わった。ではこれにてムーティアライト破壊に関する緊急作戦解散を──」
「──ちょっと待って下さい」
そのまま終わろうとするA0-2を僕は引き止めた。
「どうしたメシア」
彼女のその言葉に、僕は立ち上がり、皆の顔を見て言う。
「皆さん……"僕がすべてを救います"。だから……安心して下さい」
皆を安心させようと言ったその言葉。
単純でさぞ不格好だっただろう。
でもそれでいい。
皆の顔がどこか明るくなっていたから──
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