第5話 大賢高校
『──メシアの正体を暴いた者には素晴らしい報酬を用意してある。諸君、心してこの活動に取り組むように──』
「──は?」
先生のマイクを通したその声が体育館中に響いていた。
その言葉を聞いた僕は驚きを隠せず思わず声が漏れる。
僕はひとまず扉の近くに立っていた先生に誘導され、自分の席に着いた。
素晴らしい報酬って何だ、APEX社からは事前に何も聞いてないぞ──?
ヒーロー活動を休止してここに来てるというのに、何が報酬だ──
冒涜にすら感じたが今は一旦置いといてとりあえず話を聞くことにした。
『先程も言った通りこの学校では何でも学ぶことが出来る。当然学術分野もそうだが、社会に出た先の"生き方"──つまりは世の渡り方だ。それすらも学べる、それがこの学校の昔からの風習だ』
ステージの上に立つ先生が長々と喋っている。
周りを見渡せばその言葉に耳を傾けていない生徒がちらほら。
しかし後ろの方に座る二年生、三年生たちは不自然にも皆話に食いついていた。
そして僕はここでようやく気づく。
入った時から少しばかり感じていた違和感の正体──保護者がいない。
入学式だというのに誰一人として自分たちの子供を祝う親がいないのだ。
たまたま全員用事があって出席出来なかった──?
いやそんな訳がないだろう──
これは確実に学校側の仕業だ──
親に知られてはいけないことを話しているのだろうか──?
『新入生の諸君にはこれから新しい経験をしてもらう。それは今までもそうだし、普通は味わうことのできないものだ。この話を聞いていて思っていた学校と違うと思った者もいるだろう』
途中で入ってきたが為に何のことか一切わからない。
しかし次の瞬間に驚くべき言葉が僕の耳を貫いた。
『──ここの校風を嫌う者は退学を推奨している。こちら側としても退学なんてものは日常茶飯事で、全く構わない。よく考えて自分の未来を決めるように』
退学──?
学校とはそんな容易く退学にしていいものなのか──?
この学校は卒業後はどこの大学にも進学可能、どの企業にも就職可能というとんでもない待遇を用意してある。
それ相応の煌びやかで優秀な学校なのかと思っていたが、まさか驚きの校風。
『そして最後に、この大賢高校について保護者も含め他者に漏洩した者は重大な処罰を設けている。覚悟がない者は出ていけ──』
その言葉が最後にそこら中から沢山の拍手喝采が起こった。
『出ていけ』という言葉を締めくくりにする入学式の挨拶などそうそうないだろう。
それに対する拍手も意味がわからない。
僕はこの学校に違和感どころじゃなく、狂気すら感じた。
しかし初めてこの話を聞かされたであろう同級生たちも恐らく同じ気持ちだろう。
皆不安げな表情が顔に出ていた。
そんな中、退場のアナウンスが行われ僕たち新入生は自教室へと帰らされた。
体育感の花道を通る僕たちの顔をじろじろと見続ける高学年たち。
何なんだこの学校は──
素晴らしい拍手に包まれる華やかさとは裏腹に、僕たちの心情は黒く淀んだものであった。
これこそが大賢高校というものなのだろうか──
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