第49話 ジョーカー(残り8日)
「え……?」
いきなりの出来事に思わず声を出す僕たち。
何故かテレビ局の23階から上はすべてなくなっており、皆揃って上を見上げていた。
広々と広がる夜空。
何が起こったかまったくわからない。
そんな時、声が聞こえた。
「うっひょぉぉ! 久しぶりにかますと気持ちいなぁ!」
どこかで聞いたことのあるようなその声……。
彼は壁を走り、大きく飛び上がる。
夜空に彼の姿が映った。
その瞬間、オリジンは10mほど後ろへ下がる。
空を舞っていた彼は僕とオリジンの間に見事着地すると、こちらをぶんっと振り返り元気よく言った。
「久しぶりだな! メシア!」
「き、君は……」
僕の目に映ったのは彼の付ける独特なピエロの仮面。
あの時学校で戦った相手──その異様な見た目を忘れるはずがない。
思い出した僕は彼の名前を口にする。
「ジョーカー……」
「まじか! 俺の名前覚えてたのかよ!」
大声でそう言いながら跳ねるジョーカー。
状況の理解が追いつかず、僕は彼に聞いた。
「なんで君がここに……」
「なんか色々あったんだよ! 詳しく話すのはめんどくせぇ!」
「えぇ……?」
「そんなことよりも、メシアめちゃくちゃピンチじゃねえか! スーツ着たこいつがお前のこと追い詰めたのか!?」
オリジンのことを指差し、興奮しながらそう言った。
彼の独壇場となっている会話に僕は追いつけず戸惑う。
僕は彼の質問に対して動揺しつつも、うなづいて返事をした。
「うおぉ! まじかよ! おっさん強いんだな!」
「……また邪魔者が入ったか。二人を殺すとこだったのだが……一体君は何者──」
「なあメシア! こいつお前の敵か?」
目を輝かせ、オリジンを指さしながら僕にそう聞くジョーカー。
オリジンの話も容赦なく遮るその姿は、まさに破天荒。
APEX社の社長であるオリジンは、僕たちを殺そうとした。
立場的には味方だが、やってることは完全に敵だろう。
いきなり現れて場を荒らす彼。
一見すると異常者に見えるが、その時の僕にはこの詰んでいる状況の唯一の突破口に見えた。
僕は最後の望みであるジョーカーを信じ、彼の質問に再び首を振る。
「よっしゃぁ! やりたい放題じゃねぇか!」
「君、そこをどいてくれ。邪魔だ──」
「最近はAPEX社にとどまってて退屈だったから、いっちょ運動不足解消するか!」
「……もういい、殺す。現実改変──エネルギー弾」
自身の言葉を遮られ、とうとう彼に呆れたのか、オリジンは先程僕たちにやったように人差し指を上に突き上げた。
オリジンの周りに先程と同じく小さな光球が出現し、それをジョーカーに向けて放つ。
その瞬間だった
「削除」
ジョーカーはそう呟いた。
彼の言葉どおり、ジョーカーに向かって進んでいたはずの光球がすっと消える。
「いきなり攻撃してくるとか、おっさんも乗り気じゃねえか!」
ジョーカーはオリジンにそう言うと、ポケットに手を突っ込んで彼の方に向かって歩き出した。
月明かりがジョーカーのその姿を照らす。
黒いジャケットに、なんの意味があるのかわからないピエロの仮面。
彼の持つ銀色の髪にすらっと伸びたその足。
夜空を背景にしたジョーカーの姿は、彼の口調とは正反対な冷酷な感じがした。
オリジンは自身に近づいてくるジョーカーに戸惑うことなく話しかける。
「ジョーカー、君は一体何者だ」
「俺か? 俺はこの世界にたまたま堕とされた神だぜぃ!」
「神……?」
「んなことどうでもいいって! 俺はただ久しぶりに戦いたくて、仕方ねぇんだよ!」
「……戦闘狂か。私の一番嫌いなタイプだ」
淡々と会話を交わしていくジョーカーとオリジン。
ジョーカーはすでに至近距離まで詰めており、今にも戦いが始まりそうだった。
ジョーカーはオリジンを見上げ、オリジンはジョーカーを見下す。
月明かりに照らされたオリジンの顔が僕の目に映った。
僕は彼の顔を凝視する。
すると彼の口角がくいっと上がるのが見えた。
その瞬間──
「削除」
ジョーカーの声が響き、二人は消えたのだった──
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