第47話 助っ人(残り8日)
スタジオ組が脱出してから外では一時間がすでに経過。
テレビ局の外の様子は──
「一時間ほど前から侵入者が現れたこのテレビ局の周りには……このように透明の壁のようなものが張り巡らされています。この正体は未だ分かっておらず、調査中との事です。またメシアが中にいるとのことですが、30分ほど前の暗転以降、テレビ局に何の動きもありません」
テレビ局の外には多くの人々が集まり、その人混みの前線は報道陣が占めていた。
七海雫やA0-2などの関係者たちはそこから少し手前の場所で、心配そうにテレビ局を眺める。
★★★
「A0-2さん! 今テレビ局内の状況はどうなってるんですか!」
七海雫はA0-2に必死にそう問いかける。
A0-2は少し考える素振りを見せたあと、言った。
「わからない、ただこの一言に尽きる」
「さっき機械を使ってメシアと話してたんじゃないんですか!?」
「そうだ。君の妹を連れて脱出しろとメシアに伝えた」
「でも心音は……まだっ……!」
「本当にすまない。なんとかしてやりたい気持ちは私にもある。しかし、あの透明な壁が消えない限りできることは何も無いんだ」
「そんな……」
A0-2は残酷にも七海雫にそう告げた。
このままなんのアクションも起こせないままだったら──
そう考える七海雫の脳裏に嫌な予感が走る。
いやいやそんなわけない──!
それと同時に現実逃避を繰り返す。
しかし、その瞬間だった。すべてが変わった──
ドッガァァーーン!!
テレビ局の中で閃光が走り、とてつもなく大きな爆発音が響いた。
そして真っ赤な火がのぼる。
「な、なにが起こった!」
「メシアの攻撃か!?」
「いや、攻撃をしてから脱出するまでの時間がメシアにしては長すぎる……!」
黙ってテレビ局を見ていたはずの人々は、急に驚きの声を出し始める。
七海雫ももちろんのこと、その光景を捉えていた。
最悪の事態で脳内が埋め尽くされ、言葉もでない。
メシアが負けた──
そう思い、周囲は大混乱に陥り、事態は急変していく。
A0-2も騒ぐ人々を落ちつかせるので精一杯だった。
「落ち着いてくれ! ここで騒いでもなにもない! 一旦冷静になるんだ──!」
場がどんどんと混沌と化していく中、七海雫はただ一人愕然と膝をつき、絶望に打ちひしがれていた。
「こ……ここっ………ねっ……!」
何度も何度も夢だと思おうとするが、目の前の光景が一瞬で自分のことを現実へと引き戻す。
火の気が強くなっていくテレビ局。
爆発音がしたのはちょうどメシアたちがいる23階だった。
すべてつじつまが合っている。
自身の妹が爆発に巻き込まれたと考えるほうが自然だ。
七海雫は現実を受け入れ、とうとう涙を流し始める。
頭の中ではメシアのことを信じ続けたいたつもりだった。
しかし、体は正直だ。
絶望しながら自身の妹のことを想う──
心音はまだ夢があるのにっ……!
アイドルになるっていう、小さい頃からの夢が……!
それなのに……私がテレビ局に連れてきたせいで……。
私のせいで心音がっ……!
「心音……ごめん………」
七海雫は自身の心の中に浮かんできた言葉を、そのまま口にした。
何度も何度も心のなかで謝り続ける。
目の前の現実を信じ、メシアという希望を失ったその時──
「うおっ! すっげぇことになってる!」
横から声がした。
七海雫が目を向けたその先には──"ピエロの仮面をつけた謎の青年"の姿が。
見られていることに気づいたのか、彼はこちらに目を合わす。
そして一気に顔を近づけ、問いかけた。
「なぁなぁお前! あそこに人いるのか!?」
「う、うん……」
「うっひょぉー! まじかよ! 神展開きたぁぁ! こんな高揚感は久しぶりだぜ!」
ひとりでぴょんぴょんと跳ね回り、騒ぎ出す謎の青年。
七海雫は彼にボソッと問いかけた。
「あなたは……」
「ん? 俺か? そうだな、俺は……ジョーカーだ──」
ジョーカーと名乗る謎の青年は一言だけそう言うと、ひょいっとジャンプをした。
しかし、軽々としたその飛び方からは考えられないほどの飛距離、高さ、勢い。
テレビ局を囲うように透明な壁が張り巡らされていたはずなのに、彼はそれをすっと通り抜け、壁に着地する。
そして火の上がっているところに向かって走り出した。
七海雫は彼の異常なその動きをぼーっと目で追っていたのであった──
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