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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第2章 メシア編【ムーティアライト編】
44/363

第44話 オリジン(残り8日)

□□□


APEX社──昔、ある大学の教授が人を集め、生物学の研究チームを結成したことから始まった組織だ。

その組織は何年も活動を続け、様々な成果をあげ、どんどん名を大きくしていった。


しかし、しだいに悪い噂も出回るようになり、人体実験や違法な実験を繰り返し行う組織と一部では言われるようになる。

世間からは批判され、繰り返される誹謗中傷。

行っていた実験も中断させられてしまう。

最終的に教授はそれに耐えられなくなったのか、失踪したのだ。


それから何年かが経ち、そんな研究チームの悪い噂も忘れ去られた頃。

ある日、突如として病院が大爆発を起こした。

当時はそのことは大規模テロとして報道されていたが、真実は違う。

爆発の正体は、究極生命体誕生時の爆発であった。


世界中の政府は究極生命体の存在を隠蔽し、裏で生物学の研究チームに協力を仰いだ。

そして秘密裏に多額の金を研究チームにつぎ込み、生物学の研究のための組織から、究極生命体を管理するための組織へと移り変わった。


その組織の名前こそ──APEX社である。


しかし、何年も前の噂で失踪した教授は未だ戻って来ていないため、大元の責任者は存在しない。

つまりAPEX社は、社長が存在しない会社なのである。


□□□



しかし……今僕の目の前にいるオリジンという人物は自らのことを、APEX社の社長であると主張しているのだ。

もしそれが本当だとしても、なぜこのタイミングで? なぜこの場所で? なぜ僕たちの前で?


様々な疑問が頭に浮かぶ。

僕は彼の言葉を信じれず、言った。


「APEX社の社長はずっと行方不明のはずだ」


それに対し


「皆がそう思っているだけだ。私はさっき言っただろ。『もし私のことを知ったとしても、結局は知らないことになる』と。行方不明じゃない。誰も私のことを知れなかっただけだ」

と彼。


知っても後々知らないというふうに改変されるのか……?

行方不明じゃなく、そもそも僕たちが彼に忘れさせられていただけ……?

彼の言葉に色々な疑問が浮かぶ中、僕の考えを彼に聞いた。


「現実改変能力を使ってみんなの記憶を改変し、自分のことを隠していたのか?」

「……そうだ。『能ある鷹は爪を隠す』と言うだろ? 自分の存在を明かさないほうが物事を進めやすいんだよ」

「物事……?」

「ああ……」


オリジンは僕の言葉にそう返事を返すと、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

暗視ゴーグルを通して彼の顔を見つめていたが、彼はなぜか微妙ににやけており、気味が悪かった。

僕はオリジンを警戒し、背中にいる心音を手で隠す。


いつでもサイバネティクスを使う準備はできていた。

しかし、彼はそんなことに一切怯えずにそのままの調子で僕に顔を近づけてこう言った。


「例えば……ムーティアライトとか──」

「──ッ!」


その瞬間僕の頭に衝撃が走り、僕は口を開けて固まる。

その僕の様子をオリジンは面白そうに眺め、心音は不安そうに見ていた。


オリジン…………現実改変能力…………ムーティアライト……

何度もその単語を脳内で繰り返す。

やがて僕は三日前に話したA0-1の言葉を思い出した。


『我々APEX社が昨夜からぶっ通しで調べた結果、やはり何者かの力をムーティアライトが受けていることがわかった。力の発信源は不明だが、物理”法則を書き換える力”など命神コアトリクエと考えたほうが自然だ』


違う、法則を書き換える力じゃない……現実を書き換える力だ……。

そしてムーティアライトに干渉していた何者か……。

ムーティアライトが何故か重力を持たず、この世のものとは思えないほどの硬度をもつ理由……。


諸悪の根源が目の前にいることに気づいた僕の心は、腸が煮えくり返りそうだった。


「オリジン、お前か……ムーティアライトを衝突させようとしているのは!」


僕の言葉にオリジンは鼻で笑い、言う。


「そうだ、私だ! メシア、君のような弱者がいくら力を蓄えようとあのムーティアライトは破壊できない!」

「オリジン……どれだけの人が死ぬと思ってる!」

「私を除いた全人類が死ぬさ! そして私の望みが叶うんだ……!」

「イザナミや七海、心音……他にも沢山の人を危険に晒して……! 何が望みだ!」

「私の望み……?」


一度僕に問いかけたオリジンは、改めて僕としっかり目を合わせながら


「全人類の滅亡さ。そして誰もいなくなった世界で新たに文明を築き上げる……!」

「……っ!」

「この暴力と金だけが物を言う、理不尽な世界を……ムーティアライトですべてリセット……!」

「そんなこと……僕がさせないっ……!」

「君のその力じゃ無理だ。いいかメシア、これは定められた運命なんだよ」

「ならっ……その運命をも僕が変える!」

「……そうかそうか! なら、これはどうだ──?」


オリジンが先程まで持っていた勢いが一瞬にして消え、彼の顔は無表情へと移り変わる。

僕がそれを不思議に思い、彼の顔を見つめていると──


バン──


暗闇に銃声が響き渡った。

僕がその音を捉えた途端、背中が何かで濡れる。

いきなりの出来事に戸惑っていると、僕の後ろで何かが倒れる音がした。


まさか──


一瞬最悪のことが脳裏に浮かんだが、僕はそれを必死に振り払って振り向く。

しかし、現実は僕は違かった。

そこには……額を撃ち抜かれ、血を流して倒れる心音の姿があった──

読んでいただき本当にありがとうございます!


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