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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第2章 メシア編【ムーティアライト編】
42/363

第42話 何者か(残り8日)

スタ………スタ…………

あまりにも急なできごとすぎて僕と心音は声もでなかった。

そのせいで先程からずっと聞こえていた、何者かの足音がよりはっきりと聞こえるようになる。


「はぁはぁはぁ──」

暗い廊下、僕の近くで心音の荒い呼吸音が聞こえる。

僕の手に心音の手が触れ、僕はそれをぎゅっと握りしめる。

緊張でいつもでは考えられないほどの手汗の量。

しかし、この状況でお互いそんなことを気にしている暇はなかった。


すぐ後ろにあるはずの非常階段は存在せず、行き止まり。

真っ暗で何が起こっているのかわからない。

でも足音はこちらに確実に近づいてきているから、相手は僕たちの居場所を特定しているのだろう。

まさに詰みといったこの状況。


僕が冷や汗を流しながら、猫が毛を逆立たせるように警戒していた。

そんな中、僕の耳元で心音が囁く。


「メシアさん……はぁはぁ………誰かが……来ます……。体調が……どんどん………悪く……」


心音は事件や事故が身近で起きる時、その前兆として体調が悪くなる体質だ。

犯人がすぐそこまで来ているせいか、心音はその言葉を最後に意識を失った。


この足音と心音の呼吸音だけが唯一の情報源だ。

能力も使えず真っ暗な中、視覚はいっさい頼りにならない。

犯人の距離を……見極めるんだ……


目をつむり、聴覚にすべての神経を研ぎ澄ませる。


スタ……スタ……スタ……

廊下の突き当たりに向かって進んできている──


スタ…………スタ……

いったん立ち止まったか。左右を確認して左側を選んだな──


スタ……スタ……スタ……

僕たちの方向に来てる……。


スタ……スタ……

今だ──



「サイバネティクス、起動っ!」

僕はそう叫んで、右手にある小さな機械を思い切り握りつぶした。

すると白い光を帯びた粒子のようなものがぶわっと一気に空中に舞う。


その粒子一粒一粒の光で、僕たちの周辺が照らされる。

僕の数歩先にはスーツを着た謎の人物が突っ立っていた。

顔はよく見えない。

しかし、武器などは持っていないことは確認できた。


「使用者をスキャン中……サイバネティクスアーマーを構築します──」

女性の音音が流れ、空中に舞った粒子が僕の右手に覆いかぶさり、どんどんと侵食していく。

粒子の塊が通過した部分には近未来的な白いコーティングのアーマーが存在していた。


右腕のアーマーが構築され終わると、今度は右脚、左脚、左腕といった順番でどんどん白色の粒子が通り過ぎてゆく。

そして最終的に顔に到達し、僕の全身をアーマーが覆った。

体を覆い尽くしたアーマーにはラインがところどころ入っており、そのラインからは光が溢れていた。


「サイバネティクスアーマー、装着完了──」

その音声と同時に僕の視界は暗視ゴーグルのように、軽く緑がかったものになり、僕の目の前の人物の全体像をはっきりと捉える。


背丈は180cmくらいだろうか、少し高めで体型は普通くらい。

その大きな体を黒い高級そうなスーツが覆っており、年齢は多分中年より少し下くらいだろう。

外見だけではそこまで異常性はないが、問題は彼のもつ雰囲気だ。


彼を目に映した瞬間に圧倒的な威圧感を感じたのだ。

僕の心臓は、はち切れそうなほど速く鼓動し始め、空気が薄くなっているのではないかと思うほど呼吸がしにくい。

さらには手が震え、体が熱くなり、汗もだらだらと出てきている。


そんな僕が彼の顔を見ていると、彼はボソッと呟いた。


「サイバネティクス……イザナミが作ったのか。まぁイザナミにしては大したものか」


その言葉を聞いて、僕の脳裏に衝撃が走った。

サイバネティクスのことはAPEX関係者しか知らないはずなのだ。

僕は彼の威圧感に押しつぶされそうになりながらも、苦しまぎれに聞いた。


「……まさかっ……APEX関係者……か……?」

「そうだ。しかし、A0-1もA0-2も、誰も私のことを知らないだろう。もし知ったとしても、結局は知らないことになる」

「……っどういう……ことだっ……?」

「そのままの意味さ。私が自らの手で、"知らないということ"に書き換えているのだよ」

「はぁ……はぁ……っ君が………この騒動をっ……」


彼の声が耳に届く度、首が絞まっていくような感覚を感じる。

とうとう僕は会話がままならないほどまでに萎縮していた。

そんな僕の様子を見て、彼はまた呟く。


「ここまで私の威圧感に影響されているのは能力を使っていないからか。……なるほど、いったんやめるか──」

「………?」

「現実改変──対象の感覚を改変」


彼のその言葉はトンネルの中のように何度も何度も頭の中で反響した。

その反響の速さはしだいに速くなってゆき、最終的には耳鳴りに感じるほどまでに加速した。


キーーーーン───

なんだこれ……! うるさすぎる。頭が……痛い……!

いつまで続くんだ──


僕は必死に耳を抑えて耐え続ける。


『もう死ぬ──』

本能的にそう感じた時、突然耳鳴りが一瞬にしてやんだ。

そして静寂が返ってきたのだった──

読んでいただき本当にありがとうございます!


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