第4話 桜
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現在のこの世界は昔とさほど変わらない。
人々は皆悩みを抱えているし、学校だって会社だって、政治や貧富の差も、昔からあったものは今も変わらず存在する。
しかしそんな中でも歴史を大きく変えたものが二つ存在する。
一つ目は究極生命体──自然法則に反した超常能力をもち、その力の使い方次第では文明の崩壊すら否めない。
究極生命体は突如として地球上に現れ、その存在は世界の歴史を一変させた。
二つ目はAPEX社──大国に肩を並べるほどの力をもつ会社の存在だ。
この会社は究極生命体を管理する為に立ち上げられたもので、圧倒的な技術力や影響力を持っている。
ちなみにA0-2──先程僕が電話をしていた相手だが、APEX社の十人いる幹部のうちの一人である。
一方で彼女は僕の上司でもあり保護者のような人物。
よく分からないかもしれないが、今はそう思ってくれて構わない。
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そして今目の前から消えた謎の人物ジョーカーのことだが──
「まあ……そんなこともあるの……かな……」
僕は思い切り動揺しながらA0-2に今あったことをスマホで報告し、学校にようやく踏み出した。
もう生徒の賑やかさなど欠片もないこの広々とした生徒玄関──沢山の下駄箱が静かに並んでいた。
「──おはようございます、大丈夫でしたか?」
その時生徒玄関の奥の方から声がかかった。
僕は『おはようございます』と挨拶を返し、張り出された名簿表を見ながら靴を履き替える。
「トレインジャックのことなら、僕今日はたまたま車で来てたので全然大丈夫でしたよ」
「あートレインジャックで渋滞がみたいなのも聞きましたね。無事で何よりです天沢君」
そうそう、僕はただの大賢高生天沢輝星だ。
話してる相手は先生だが、今のところバレる様子など一切ない、順調順調──
「今はもう体育館で入学式が始まってるので、まあ駆け足で向かってくださいね。やっぱりどうせなら最初からしっかりいきたいですからね」
その先生の言葉に僕は返事を返し、壁に貼ってある校内図を見ながら体育館に向かった。
僕のクラスは1年A組、C組までの3クラスで一学年が構成されているようだ。
まあそこは何の問題もないのだが、少し引っかかるのは僕の名前が『あ』から始まるということ。
となると多分この学年で学籍番号が一番若いのが僕だ。
それに入学式という場となればその意味は強まる。
一番最初を飾る人間が不在となれば自然と注目がいくのは確かなことだ──
「ここから三年間正体がバレないようにって……結構難しい気が……」
初手から不安を感じる僕だったが一度呼吸を整えて気持ちを切り替えた。
自分は何の変哲もない高校生、天沢輝星なんだと自分に言い聞かせる。
校内の綺麗な内装や道中に見えた生徒による展示作品。
学術的なイベントの参加募集の張り紙など、至るところにこの大賢高校の優秀さが現れていた。
静かな廊下を進むうちに賑やかさ、沢山の拍手が耳に聞こえ始める。
前を見ると固く閉ざされた体育館の大きな扉から光が漏れ出ていた。
外には満開の綺麗な桜──
そうだ、今から僕の学生生活が始まる──!
ガチャ──
『──メシアの正体を暴いた者には素晴らしい報酬を用意してある。諸君、心してこの活動に取り組むように──』
「──は?」
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