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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第2章 メシア編【ムーティアライト編】
34/363

第34話 楽屋(残り8日)

4月22日──ムーティアライト衝突まで残り8日。


その日の夜、僕は日本のとあるテレビ局の楽屋にいた。

今日はどうやら七海の妹のテレビ初出演らしく、夢を叶える第一歩とのこと。

テレビ慣れしている七海も一緒に出演するのだが、妹の初めてということもあって少し心配らしい。


そこで僕を呼んだというわけだ。

そのことを伝えられた時は断ろうと思っていたが、七海が二日前に頼みを聞いてくれた恩返しということもあって、結局出ることに。


ムーティアライト衝突まで残り8日だというのに何を呑気なことやっているのだろうか─

心の中でそう思いながら、僕は時間が来るのをひたすら待っていた。



★★★



コンコン──

床に寝そべっていた僕の耳に、突然ノックの音が聞こえた。

そして続けざまに


「違うよ心音、ノックは二回じゃなくて三回。もう一回やってみて」

コンコンコン──


七海の優しい声とノック音が再びした。

僕はドアの向こう側にいるのが七海とその妹、七海心音(ななみここね)であることを悟り、言葉を返す。


「はい」

「ほら、返事返って来たでしょ? 返事が返ってきたらドアを開けるの」


七海のその声とともにドアノブが傾き、とてつもなくゆっくりとドアが開いた。

七海の妹、七海心音が顔をひょこっと覗かせる。


「こ、こんにちは……メシアさん……」

「……誰ですか」


誰なのかは分かっていた。

でも僕のからかいたい精神が走り、一方彼女は慌てふためく。

彼女は困ったようにキョロキョロと辺りを見回し、七海と同じ金色の髪が揺れた。


姉の大人びたような見た目とは違い、妹の方はセミロングにカチューシャというまさにアイドルの見た目であり、彼女の持つ青い目が僕のことを不安そうに見つめる。

七海心音の一歩後ろに立っていた七海も僕のことを「妹を困らせるな」とでも言いたそうな熱い目線を送ってくる。


「わ、私は七海心音です……! アイドル目指してます……よろしくお願いします……!」


初めてで緊張しているのか小さな声で挨拶をする妹。

七海はそんな妹に声をかける。


「そうそう。もしテレビに出るってなった時は、私がいなくてもこんな感じで楽屋に挨拶に行くんだよ?」

「わかった」


妹の返事に七海は笑顔でうんとうなづき、僕のほうに体を向けた。

そしてこう言う。


「ごめんねメシア、妹の練習に使わせてもらっちゃって」

「いやいや、全然大丈夫だよ」

「この子初めてで緊張してるから、本番中に何か困ったことがあったら助けてあげて」

「わかったよ」


僕と七海がやり取りをしている間も、妹はじっと僕のことを見つめ続ける。

たまに僕と目があうと視線をそらし、またこちらを見る……その繰り返し。

小動物のようなその七海の妹を、そんな風にして少しからかいながら僕は七海に話しかけた。


「てか七海、他の人のところには挨拶行ってきたの?」

「いや、行ってきてない。メシアのところが最初だよ」

「なら三人で回らない? ちょうど僕も行ってないしさ」

「わかった!」


七海は元気にそう返事をすると、楽屋の扉を開ける。

そして僕と妹のことを手招きし、僕を真ん中にして三人で歩き始めた。


複数人で楽屋挨拶──如何なものなのか僕には分からない。

でも若いという理由で押し切れる気もする。



★★★



僕が間にいるせいで姉から引き剥がされ、もじもじしている妹。

そんな妹に僕は話しかける。


「──あのさ」

「は、はいっ!」

「君のことなんて呼べばいい?」

「え、えーっと……心音って呼んでください……」


僕とまったく目を合わせようとせずに、うつむきながらそう言う心音。

初めてで緊張しているんだろうが、本当に大丈夫だろうか……。

心音のことを心配している僕とは逆に、七海は僕たちの会話をにこやかに見ていた。


それから何度か心音と会話を交わして歩いているうちに、ある人の楽屋の前に着く。

壁には『宇喜多一(うきたはじめ)』という名前がデカデカと貼られており、他とは違った異様な雰囲気を発していた。



□□□


宇喜多一、彼は今の芸能界を築いた人間と言われるほどの大御所である。

収録中はフレンドリーで優しそうな感じや面白さを見せ、それが世間の彼に対するイメージになっているが、実は違う。

実は彼はとても礼儀を重んじており、上下関係をとても気にする人間だ。


□□□



そんな大御所の楽屋の前に、今日がテレビ初の新人、心音を連れて僕たちは立っているのだ。

僕がそんな人物の楽屋のドアをノックしようと、足を進めたその瞬間七海から声がかかった。


「ちょっと待って、いきなり宇喜多さんのところに行くの?」

「だって一番近いじゃん」

「そういうことじゃなくて、心音は初めてなんだよ? 楽屋挨拶で叱られでもしたらさらに緊張しちゃうかもだし──」


コンコンコン──

僕は七海の話を完全に無視してノックする。


「──ってメシア!? 話聞いてた?」

「もうやっちゃったし……まぁ大丈夫だって」


そう言って心配そうに僕の方を見つめる七海と心音。

僕は二人にグッドサインを突きつけ、笑ってみせた。


「はい」

彼の渋い声が部屋の中から返ってきた──

読んでいただき本当にありがとうございます!


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