第33話 正体(残り10日)
「え……?」
彼女の言葉に僕はその場で口を開けながら立ち尽くした。
脈拍と呼吸がどんどんと荒くなっていく。
「その反応、やっぱり図星だったんだ」
「いやいや僕がメシアだなんて……本気で言ってるの?」
「もうちょっと慎重に動くようにしたほうがいいと思うよ? バレバレ」
鼻で笑い見下すような形で僕にその言葉を叩きつけた。
「違う違う、僕はメシアなんかじゃないって……! 僕は天沢輝星、正真正銘の大賢高校生だよ!」
「私は仕事上そういうのわかっちゃうんだ。何か緊張した新人さんに似てるねー、メシア」
「い、いや……だから………」
七海の詰めに僕は何も言い返せなくなる。
口を閉じながらただそこに突っ立ってるだけの僕を見て、彼女はにやけながらさらに続けた。
「でもそんなに心配しなくても大丈夫。弱みを握ってどうしようだとか考えてないし、広めもしないから」
「いやだから……」
「──もういいって! 分かってるから正直な理由! 言わないと更に好感度下がるからねー」
彼女が僕の正体にいつ気づいたのかは分からない。
ただいつにせよ気づいた時には驚いただろう。
浅い関わりではあったけどそれが全て真っ赤な嘘だったのだから。
「……理由は言えない」
まだ口調は優しいままに留めていた七海だったが、この言葉に彼女の眉間がピクリと動いたのが分かった。
『はぁ……』と一回ため息をついて七海は言う。
「中学生の時、私も皆の理想でいたくてずっと自分に嘘をつき続けてきたよ。嘘で自分を固める辛さは分かるから──」
「──無理だよ七海、それでも理由を言う訳にはいかないんだ」
「どうしてそこまで……」
僕は七海の同情をきっぱりと断わった。
僕の決意の硬さに驚く七海。
理由も言わずに家へ入ろうなど図々しいに決まってる。
僕がメシアだと分かっているなら、隠し通そうとしているこの理由もあらかた想像がつくだろう。
でも七海、君が思ってるよりも事態は深刻なんだ──
もう勢いで押し切るしかない──
僕は大きく息を吸い込み、目と目を合わせて真剣に言葉を伝えた。
「これは僕の責任なんだ……メシアとして君に頼んでるんだ──」
「……わかった」
七海は僕の言葉を受け取り、そう答えてくれた。
何度も何度も「ありがとう」と頭を下げながら呟く僕。
しかし彼女の表情はどこか悲しげに見えた。
その原因は僕にはとうに分かっていたこと。
「さ、遅れちゃうよ。早く学校行こ?」
七海はすぐさまその表情を切り替えると僕にそう言う。
僕達はそのまま学校へ向かった──
読んでいただき本当にありがとうございます!
少しでも「続きが気になる」とか「面白い」とか思っていただけたら、ブクマと★(星)お願いします!
★(星)は広告下から付けられます!
作者のモチベやテンションが爆上がりするのでお願いします!




