第30話 様子(残り10日)
美香のその言葉を聞いて七海は言った。
「そっち側とかじゃないよ。天沢くんも美香もどっちも私の友達。だから、友達として注意をしただけだよ」
「そ、そうだよ美香……。悪かったのはうちらなんだから……」
「はやく天沢に謝ろうよ」
ほかの女子たちが美香に声をかける。
しかし、その本人である美香は相変わらず俯いたままだった。
美香のことを心配したのか、女子のうちの一人が彼女の手を取るが──
「触らないでっ……!」
美香はぶんっと腕を振って、手を振りほどいた。
彼女の意外な行動に驚く女子たち。
僕は蹴られたところを抑えながらゆっくりと立ち上がり、周りを見渡す。
そこには「どうしたんだろう」とでも言わんばかりの、心配そうな眼差しで美香のことを見つめる彼女たちがいた。
気まずいというのか変というのか……とにかくなんとも言えない雰囲気が広がる。
タッタッタッ──軽い足音とともに、後ろから見ていた爽真がこの場に入ってきた。
爽真は美香のことなど気にもとめずに僕に声をかける。
「輝星大丈夫か? 蹴られたとこ痛くないか?」
ほかの女子たちも爽真のその声で僕が立ち上がったことに気づき、美香から一気に視線を僕のほうにそらした。
電車では散々陰口を言ってきたくせに、立場が不利になったら僕に同情する女子たち。
ただ様子を見つめるだけの女子たちとは違って、七海は僕に声をかける。
「天沢くん大丈夫……? 怪我とかしてない?」
「大丈夫大丈夫、平気だよ」
「痛かったら本当のこと言うんだよ?」
「そうだぞ、輝星」
「チッ──」
美香はそんな僕たちのやり取りを見て舌打ちをした。
そして僕たち三人のことを思い切り睨みつける。
前髪から見え隠れする美香の暗い目は僕たちを恐怖させるものだった。
「ほ、本当にどうしたの……? 美香」
「大丈夫……?」
「あんたたちもそっち側なんでしょ……」
ぼそっと呟く美香。
先程よりもよどんだ空気になり、みんな美香の異様な感じを心配していたのだろう。
その後も何度か女子たちは声をかけるが、美香はそれを無視。
周りの女子たちの心配もむなしく、美香は一人大股で駅を出て行ったのであった──
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