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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第2章 メシア編【ムーティアライト編】
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第25話 ムーティアライト

「……え?」


衝撃が走り思わず声が出た。

僕の反応を見て彼のお茶を入れる手が止まる。

僕は彼との距離を一気に詰めて聞いた。


「イザナミは……なんともないんですよねっ……!」


イザナミの安否が心配で仕方がなかった。

しかし必死に聞く僕に対して彼の表情は案の定といった様子。

少しばかり俯きながら──


「そうだな……イザナミは──」



〇〇〇


「イザナミちゃん大丈夫ー?」

「メシアは日本で頑張ってるので出来るのは私しかいません……大丈夫も何も、やるしかないんです」

「まあそうだけど……無理しなくていいんだからね?」


APEX社アメリカ支部にてイザナミと彼女担当の幹部A0-5が会話を交わしていた。

真夜中、夜空──イザナミは天に向かって手をかざしている。

この時彼女に与えられた任務はムーティアライトの破壊。

僕では攻撃がまだ届かない位置にあること、大賢高校のことも含めて僕ではなく彼女が抜擢された。


しかし彼女もまた自信がある訳ではなかった。

引き下がれない──ただそれだけの理由で彼女はその場に立っていた。

周囲の芝生や木々が風で揺れる。

イザナミとA0-5の髪を靡かせた。


「もう……やります……!」

「ほんとに無理しないで大丈夫だからねー?」

「……はい」


イザナミは今一度しっかり地面を踏み込むと大きく息を吸い込んだ。

実力は僕と同等の彼女──

彼女の胸の中央にファンが構築され、それが高速で回転を始める。

それによって周囲のエネルギーを取り込むとファンは光を放った。


更にそれに加えて彼女自身が持つ力も同時に込める。

全身がきしむように痛みスムーズに体を動かせない。

彼女は再びゆっくりと腕を夜空に向け、もう一方の手でそれをおさえた。


「……っ!」


全身に蓄積したエネルギーが体を伝って片腕に全て収束する。

痺れる、激痛、涙が出ていた。

でも彼女は一度目を瞑りそれを振り払い、覚悟を決めて見開いた。


「あ"あ"あ"あ"あ"ああぁぁッッ────!!」


射出時の激痛に耐えかねて彼女は叫び声をあげる。

天へと向けた手のひらの先からは巨大な光線が放出された。

その勢いで周囲には暴風、彼女自身の足も耐えきれずにぐにゃりと曲がり潰れる。


天高く伸びたその光の柱もムーティアライトには届きはしたものの──何のダメージも与えることはかなわなかった。


〇〇〇



「──イザナミはボロボロだ」

「はぁっ……!?」

「彼女は我々APEX社と共同ですべてのエネルギーを使ってムーティアライト破壊を試みた……」


ハァハァハァハァ──

走った直後かのように過呼吸になっていく僕。

イザナミの無惨な姿が脳裏に浮かび、気が気ではなかった。


嘘だ嘘だ嘘だ──


そんなふうに何度も呪文のように自分自身に唱える。

毎晩しつこく電話をかけ、元気だったイザナミの現状を信じたくなかった。


「でもイザナミは死んじゃいない。彼女も君と同じ究極生命体、大丈夫だメシア」

「ダメージを受けてる時点で大丈夫じゃっ……ないでしょっ……!」

「……そうかもしれない、だが今は嘆いている暇はないんだ」

「……やってやります、僕が」


決意を固めた。

復讐心がそれを後押ししたのだ。

そしてA0-1はその言葉を聞くとこくりと頷いて口を開いた。


「──では本題に戻ろう。彼女のすべてのエネルギーを使った攻撃によってわかったことが一つある」


トン──


A0-1は湯呑に注がれたお茶をグイっと一気飲みし、音を立てて机に湯呑を置く。

僕の固唾を飲む音と、机に湯呑が置かれた音が会議室に聞こえた。

そして彼は大きく息を吸い込み──


「それは……ムーティアライトに攻撃が効かないということだ」

「攻撃が……効かない……?」

「厳密に言うなら、『物理攻撃が効かないと思えるほどの耐久性をもつ』と言ったほうが正しい。イザナミの全力を受けても、ムーティアライトのその受けた表面は数ミリも削れていなかった」

「……っ!?」


その事実を聞き、戦慄した。



□□□


イザナミは究極生命体の中で一番の安定性をもつ。

攻撃をずっと高火力の状態で保ち続けたり、物質構築能力を使って周りの環境を自分の思うがままにしたりできる。

他にも大量の能力を保持しているため、動きが予測できなかったり、スタミナも僕と比べ物にならないほど高かったりと、一発の火力こそ小さいものの、対面した時はもっともめんどくさい相手なのがイザナミだ。


□□□



そんな彼女が全エネルギーを使って持続的に攻撃を与えたというのに、ムーティアライトはまったく傷つかなかったというのだ──

僕にとってその時は、ムーティアライトが神よりも怖く巨大な壁に思えた。


恐れおののき、冷や汗をかくそんな僕にA0-1は告げる。


「そこでメシア、頼みがある。ムーティアライトを破壊してほしい」

「……」


ムーティアライトを破壊できるはずがない、でも破壊しなければ世界が終わる──

そんな背水の陣に陥った僕は黙り込んだ。


「無茶苦茶なことを言っているのはわかっている。でも君は過去に無理だと思われてきたことを成し遂げた。そして世界を救った」

「……」


面談室のソファで僕はうつむき、自分の握った拳をながめて、過去のことを振り返る。

四年前、自分のせいで亡くした彼の最期の言葉──


『メシア……世界を………頼んだぞっ…………!』


頭に聞こえたその言葉は再び僕の胸に当時の感情を思い出させ、心に灯火をともしたのだ。


そうだ、昔彼と約束したんだった。

この光を操る能力を持って生まれてきた僕には世界を守る責任がある。

その責任を果たすって約束していたのに──


僕の昂り始めた感情に追い打ちをかけるかのように、A0-1の声が頭に響いた。


「頼む、救世主(メシア)……また世界を救ってくれ!」


僕は手を膝につけ、体重をかけながら立ち上がる。

そしてA0-1の方を見ながら──


「やりましょう。世界をまた救います……!」


握りこぶしをA0-1へ突き出した。

彼は驚いたような表情をしてみせたが、彼も立ち上がり──


「ありがとう、メシア……!」


そう言いながらA0-1と僕は拳を突き合わせた。


四年前の彼としたグータッチを思い出す。

まだAPEX社が出来て間もない頃の昔の話だ。


また僕が世界を救ってみせるよ。僕のことを見ててね──

僕は天に居る彼に心のなかでそう告げた。

読んでいただき本当にありがとうございます!


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