第23話 輝く星
そんな彼は足早にこちらへ向かい、机を挟んで向かい側のソファに腰を掛けた。
「だ、大丈夫ですか……?」」
長い間待たされたという苛立ちよりも、A0-1の心配の方が勝り、僕は思わず声をかける。
「あ、あぁボクのことなら心配ない、大丈夫さ。と、とりあえずこれを見てくれ……!」
彼は慌てて片手に持っていたタブレットを僕に見せようとするが……
ガタン──!
タブレットがA0-1の手から滑り落ちた。
「あぁ……! すまない、少し混乱していてね……」
□□□
A0-1、彼はA0-2と同様にAPEX社の幹部に位置する人物の一人だ。
幹部の中でも彼は気弱な性格で、個性的な他の幹部たちに圧倒されてしまっていることがほとんどである。
APEX社の女性職員からは「可愛い」などと言われ、本人は不満らしいが、その内気な性格が邪魔をしてなかなか言い出せないでいる。
□□□
そんな性格の彼だが、今日は明らかに何かが違う。
まるで何かに怯えているようだった。
僕はそんな彼に違和感を覚えながら、落ちたタブレットを広い、画面を見る──
「ん……?」
目に映ったのは暗闇に浮かぶ二つの星の画像。
一方は少し白みがかった月に似た星、もう一方は本物の月。
それぞれの画像の下にはそれぞれの星の名称が記されていた。
他にも様々な数値がその画像には書き込まれている。
それによるとどうやらこの二つは酷似しているらしい。
「A0-1、これは何ですか? 片方が月なのはわかるんですけど、もう一方の"ムーティア……ライト……"? ってなんですか?」
「……」
A0-1はボーッと面談室の壁にかけてある時計を見たまま黙り込む。
室内は秒針が進む音がはっきりと聞こえるほど、静まり返っていた。
会議室の中に設置された扇風機に髪が揺れる。
喋る気配がないA0-1に僕は呼びかけた。
「A0-1ー」
「うわぁ! どうした、メシア?」
「しっかりして下さいよ、A0-1。一応学校を休んで来てるんですからね?」
「すまない、気をつけるよ」
彼はうつむき、頭をかきながらそう言う。
口調からだいぶ落ち着いたかのように見えた彼だったが、彼の頭をかく手は震えていた。
しかし僕はそれに気づかないふりをして続けて聞く。
「もう一度聞きますよ? このムーティアライトって何なんですか?」
「これは……星だ」
「そんなのわかってますよ! 具体的に何なのかっていうのを──」
彼の、『当たり前だろ』というような発言に少し強い口調で返す僕。
しかし彼から返ってきた言葉で、僕の顔は真っ青になった。
「この星は──11日後に地球に衝突する」
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