第19話 面々
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僕は多種多様な技を持つが更にその上で追加効果を付与することが出来る。
例えば『撃』は威力を強化し、『闊』は攻撃範囲の拡大だ。
一方でそのような効果を付与すると、代わりにスピードや耐久力などの他のステータスが減少する。
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シュッ……ドゴォオンッ──!
『ライトニングストライク闊』がジョーカーに炸裂し、学校の上空で白い光とともに轟音が響き渡った。
まともに僕の攻撃をくらったジョーカーは、全身ボロボロで抵抗することもなくそのまま自由落下。
僕はそんな彼の腕をガシッと掴み──
「君は厄介者だけどっ……僕は殺したい訳じゃないからね」
空中で彼を背負い、APEX社日本支部へ向かって飛んで行く。
予想通り気絶している彼は暴れることなく、先程までの勢いはすっかり無くなっていた。
僕が飛んだ後には輝かしい光の軌跡が刻まれていた──
「メシアが勝った……!」
「メシアの……勝ちだっ……!」
『うおおおぉーーー!!』
『メシアァ──!』
一方僕が飛び去った後の学校は大盛り上がり。
皆の歓声が学校中を埋めつくしていた。
「やっぱメシア速すぎんだろ!」
「流石救世主だな! 最強だわ!」
「メシアほんとに凄かった! あの白い髪見た瞬間近づいてっちゃいそうになったし!」
『メシア! メシア! メシア! メシア! メシア──!』
メシアコールが巻き上がり皆笑顔で飛び跳ね喜ぶ。
中には恐怖で涙を流していた人もいたが、この明るい雰囲気にそんな感情も吹き飛ばされる。
一方で涙が頬を伝い腰を抜かしたままの人が一人。
僕が教室でジョーカーと睨み合っていたあの時、興奮して思わず教室に足を踏み入れ殺されそうになっていた人だ。
「お、俺……生きてんだよな……」
手のひらを見つめて自分が生きていることを噛み締める。
しかし彼の命も爽真なしでは今頃失われていた。
あの時爽真が横からジョーカーに飛び蹴りを入れていなければ、彼は確実に死んでいた。
「ほんっっとにありがとうっ……! 俺のことを助けてくれてっ……ほんっとに……」
彼は地面に頭を擦り付けて泣きながら爽真に言った。
そして続けて彼は自分を責めたて、ボロボロと涙を流しながら──
「調子乗って馬鹿げたことして……自分だけじゃなくて他の人も危険な目に合わせて──」
「──俺そんな大したことしてないって! 騒ぎがあって見に来たらたまたまって感じだし、そんな気にすんなって!」
その楽観的な爽真の言葉に、彼はゆっくりと顔をあげた。
自分を助けてくれた爽真の発言と、自分自身の感情のギャップに呆然。
「誰だって興奮するって! 俺もメシアめっちゃ好きだからさ──!」
爽真はそう言って涙を流す彼に手を差し伸べた。
彼は涙で濡れたその手で掴み立ち上がり、流れる雫を袖で拭う。
泣いていたのは逸見昇──初日に爽真に食いついてきた同じクラスの男子だった。
──その頃、大賢高校の校長室。
湯気がもわもわとのぼるブラックコーヒーを一口、そしてこの騒がしさを耳にして呟いていた。
「あれからもう37年……この騒がしさ、地獄絵図が懐かしい……」
コーヒーカップを机に置き『はぁ……』とため息をついて窓の外の校門を眺める。
「二人とも……、君たちの意志を果たす人物が遂にやって来たかもしれないぞ……。聞こえてるか……水無瀬、そして雨宮──」
──その頃の校舎内、職員室から屋上へ繋がる階段。
陽の光が差し込まず、ジメジメとした薄暗いそんな場所ですすり泣く人が一人いた。
泣くのをやめたかと思えば、すぐにガタガタと震えだし何かに怯えている様子。
「怖い……怖い……、私が何かすれば全部が悪い方向に向かう……」
彼女は自分の首を掴んで食いしばると、思い切り絞め始める。
瞳からは再び苦しい涙が溢れ出てきていた。
「もうやだっ……死にたいけど死にたくない……。助けて、助けて……私が助けなきゃいけなかった……」
嗚咽と共に彼女は何とか言葉を発する──
「ごめんね……雫っ……」
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