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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第6章 メシア編【四年前の出来事編】
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第178話 技術者

「ライトニング……ウォール……!」


ねずみ色のコンクリートの中から巨大な壁が出現する。

それは自ら光を発していたものの、実態として確かにそこに存在していた。

また更に──


パァンッ──!


空気を叩き割るような音が響き渡る。

それは銃声である。

しかしすぐさま──


「おー、いい感じじゃね? 拳銃も軽々と防ぐし」

「うん、まぁ……」


A0-3が僕を褒めるがそんなこと一切耳に入らなかった。

僕と彼の間に秘密が出現したからである。


「え? どうしたんだよメシア。今日なんか元気なくね?」

「いやだって、昨日あの後何してたか全然話してくれないじゃん……」

「だから、何度も言っただろ? 秘密なんてしたくないのは俺も山々なんだって。でも立場上言えないんだよ」


そんなこと言われずともわかっていた。

でも何故か納得できない。


「でもこれだけは言っとく。メシアは近いうちにこの秘密を知ることになる」

「近いうち、ね……」

「まあもう仕方ないって。はい、切り替えるぞ」


しかし、どれだけ抗ってもA0-3の口は開かない。

それも同時に知っていた。


「それでメシア、一週間前俺が『新しい技考えてこい』って言ったの覚えてる?」

「ああ、うん、一応。『ファランクス』って言う技──」

「──いやちょっと待て。名前の最初には『ライトニング』を付けるってこと、覚えてるか?」

「でも──」

「──『でも』じゃない、つけた方がかっこいいだろ?」

「……」


自分の価値観を押し付けるのは良くない──

僕はここ最近それを強く実感していた。

『手間がかかる』より『かっこいい』の方が勝るという彼の心理は"よく分かる"。

でも『ライトニング』を付けたらかっよくなるという考えに関しては、理解できないのだ。


「わかったよ……。じゃあ『ライトニングファランクス』、この技は──」


僕の話を興味津々に、そして親身になって聞いてくれるA0-3。

しかし、その時でも彼は幹部としての責務を背負っていたのだ。

僕もそのことは十分わかっていたつもりだったが、理解できていなかったのはその責務の"程度"に関して──



★★★



その日の深夜、僕がすっかり眠りについていた頃──


「──A0-3さん、緊急事態ですッ! 究極生命体イザナミの鎮静装置に異常が!」


APEX社内の人気のない廊下を歩くA0-3であったが、突如彼の背中を声が叩く。

彼が慌ててくと、そこには白衣を着た男の技術者一人が血相を変えて立っていた。

一方A0-3は、先程その技術者の口から放たれた言葉を繰り返す。


「──イザナミに異常?」

「はい、心拍数も呼吸数も倍に増加。意識はまだ完全には覚醒していませんが、このままの様子を続ければ──」

「──わかりました、今すぐ行きましょう」


そう言うとA0-3は彼と目を合わせて一度うなづく。

その途端に静まり返っていた廊下全体が、二人の足音に包まれた。


イザナミの収容室へできるだけ早く到着しようと急ぎに急ぐわけだが、A0-3は別にイザナミの担当幹部という訳でもない。

さらにそれに加えて彼は特別に知識がある訳でもない。

あくまで幹部になる上で、最低限必要な知識だけで戦うつもりなのである。


そんなこともあってか、A0-3はその技術者に問いかけた。


「ちなみになんで俺を選んだんですか? イザナミの収容室には何十人もの技術スタッフに警備員がいるじゃないですか」

「違うんです! 僕がトイレに行ってる間に"何か"があったみたいなんですッ! 戻ってきたら全員が意識を失って泡を吹きながら床に倒れてて、イザナミの制御装置に異常をきたしてて……」


足を動かし続ける技術者の顔に恐怖が浮かびあがる。

究極生命体という未知の存在に自分の仲間をめちゃくちゃにされ、それでもすくまない彼の両足。

A0-3はそんな壁に言い放った。


「──わかりました、怖かったですよね……。でも大丈夫です、"俺がすべてを救います"。だから……安心して下さい」

「は、はいっ……! ありがとうございます……!」


A0-3のその言葉によって、どこか彼の表情は明るくなったような気がした。


──僕はよく世間から『救世主』だ『ヒーロー』だなどと呼ばれるが、僕からしてみればそんなの虚構に過ぎない。

本当の原点──最初の救世主はA0-3なんだ。

読んでいただき本当にありがとうございます!


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