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ディリュージョン・ダン・デスティニー  作者: デスティノ
第1章 メシア編【始まり編】
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第12話 屋上

「……え?」

その瞬間に背筋が凍りついた。


何故だ、どうして七海雫が僕を──?

話したこともないのに僕を指名してくるだなんて──

何らかの目的あってのこと──


先程頭にあった嫌な考えが再び脳裏を過ぎる。

『彼女に正体を知られているんじゃないか』という不安が僕の心臓の鼓動を激しくさせる。

しかし僕はその感情を飲み込み、何事もないかのようにクラスメイトに返事を返す。


「……っ」


そして教室のドアに目を向ければそこには言った通り七海雫の姿が。

彼女の方も僕の存在に気づくと、ハッとして僕が来るのを待っていた。


「どうしたの? 僕に何か用でもあった?」


僕は彼女に一声かけながら小走りでドアに駆け寄る。


「いきなり呼んじゃってごめんね、まだ話したこともなかったよね。私七海雫って言います、よろしくね!」

「知ってるよ有名だもんね。僕は天沢輝星、それで……」

「……えっと実は天沢君に"聞きたいことがあって"。今時間大丈夫?」


上目遣いで僕のことを見つめる七海雫。

遠目でも感じていた彼女の雰囲気も間近となれば一層強まる。

更にはその国民的女優という彼女からの目線も、思わず目を背けたくなるような相当なもの。


こんなのが高校生って……規格外でしょ──

皆こんなのの前じゃやってけないって──

特に男子なんか──


「えっと……まあ大丈夫だけど……、場所移動する感じ?」

「ここだと他の人達に何か見られてる気がするし……」


『気がする』ではなくて皆見てるんだ──


確かにこんな皆からの目線を感じながら話すのは億劫だ。

このまま話し続ければ僕が想像するよりも目立つことになるだろう。

僕は彼女の提案に頷き二人で歩き始めた。

しかし道中の皆からの目線も、無視は出来ないほどの量だった。



★★★



どこまでも続く青空、真っ白な雲、心地よい日差しと風は髪をゆっくり靡かせる。

学園系のアニメでしか見たことのない景色が僕の前には広がっていた──そして隣には七海雫。


「話ってわざわざ屋上に来るまでのことだったの……?」

「ちょっと遠かったよねごめんねー? あんまり他の人には聞かれない方がいいかなって思って」


彼女の発言一つ一つの裏に僕の悪い予感か隠れている気がしてならない。

清々しいこの景色の中だが僕の心境は焦ってやまなかった。

僕は彼女に問いかける。


「それでその話って……何?」

「えっと……じゃあ話すね……」


彼女の頬が赤らんでいたのがすぐさま分かった。

彼女は袖で口元を隠し、一度呼吸を整える。

僕も固唾を飲み込んで言葉を待つ。

一度息を吸い込んで彼女は口を開いた──


「あのね……私好きな人がいるの」

「……うん?」

「高校生活二日目でいきなりって思うかもしれないけど、私好きな人がいるの……!」

「そ、そうなんだ……」


七海雫はスカートを握って目をぎゅっと瞑って言い放った。

恥ずかしさのあまりかぷいっと反対の方向を向いてしまう彼女。

そして、その言葉は思っていた言葉とはだいぶ違うもので、思わずよろけてしまいそうになるほど。


そっぽを向いた彼女の表情は分からない。

でも彼女からの声は届いていた、声が震えていた。

そこから彼女の心境など容易に読み取れた。


「天沢君も知ってるかもしれないけど、私実は昨日のトレインジャックの被害者で……凄い怖い思いしたの」

「災難だったね……大丈夫?」

「心配してくれてありがと、大丈夫だよ。……でもね、私が大丈夫なのは、その人がいてくれたからって思ってるの!」

「……っ」


ちょっと待て、流れが変わってきたぞ──

僕の脳裏にあの嫌な考えが再び浮かび始めた。


「あの時私を助けてくれたあの人がいたからだって思って……それで私、気づいたら何かその人のこと好きになっちゃってて……」

「それは……誰なの……?」


あの時七海雫を助けた人──

やめてくれ、やめてくれ──

流石にまだ早すぎる──

正体がバレるどうこうの前に色々と展開が早い──


脈拍がどんどんと激しくなる。

この時には僕の頭に浮かんでいた推測は、ほとんど確信に変わっていた。

僕の鼓動の高鳴り、感情が最高潮に達したその時──


「天沢くんっ!」


彼女はバッとこちらを勢いよくこちらを振り返る。

その綺麗な金髪が靡いて彼女の香りを感じた。

うつむいて口をもごもごさせる彼女。

しかし次の瞬間には顔をあげて、顔を真っ赤にさせながら僕の目を見ていた。


「私、天沢くんに伝えたいことがあるのっ──!」


途端に声が大きくなる。

彼女はその言葉を勢いで言ってしまおうとしているのだろう。

固唾を飲み込む間もなく、心の準備が出来る間もなく、その言葉はすぐさま僕にぶつけられた──





「私のこと……助けてくれてありがとうっ──!」

読んでいただき本当にありがとうございます!


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