第110話 原因
僕が廊下へ出た頃には、もう爽真の姿は見当たらない。
トイレにでも行ったのかな──
そう考えながら辺りを見回す僕。
周囲には人混みと、そこから発せられる退学に関する話ばかり。
ずっとその話題で持ち切りだな……。
僕が大賢高校に進学するって発表された時みたいだ──
同じことしか言わない皆に、そろそろ飽き飽きしてきている自分がいた。
そんな時、隣のクラス──1-Bのドアから出てくる七海の姿を発見する。
彼女も僕と同様、キョロキョロと辺りを見回していた。
遠目から見たところ、七海の周囲にはいつもの囲いの女子たちは居ないようだ。
爽真はどっか行っちゃったし、七海とでも話すか──
僕は人混みを避けつつ、彼女の方に向かって歩き出す。
一歩一歩と進んでいくうちに、彼女の方も僕の存在に気づく。
目が合った瞬間、七海はこちらに向かって大股で足を進めてきた。
──しかし、異変に気づいたのはこの頃だった。
七海との距離が狭まっていくうちに、彼女の表情がより鮮明に見えてくる。
近づくうちに僕は気づいた。
彼女の顔が真っ青になっていたことに──
「ど、どうしたの七海? 顔色悪いけど……」
「──ちょっとついてきて天沢君、誰もいないところに行こう」
「な、なんで?」
「──いいから!」
七海は僕の服の袖を引っ張り、強引に僕のことを連れて行く。
理由を聞いても『後で』の一点張り。
僕は彼女の必死さを感じ取り、黙ってついていくことに。
早歩きでスタスタと歩いていく七海に疑問を覚えつつも、後ろをつけていくのだった──
★★★
──やがて辿り着いたのは体育館裏。
周りには人一人として居ない。
朝の短い準備時間に体育館裏──?
一体何をそんなにも隠そうと──?
様々な疑問が頭に浮かぶが、まずは七海の話を聞くことに。
僕は文句どころか言葉一つ発さずに、ただ七海の口が開くのを待った──
「……まずはわざわざここに呼び出しちゃってごめん、天沢君」
「大丈夫だよ、こんな所まで来たってことはそれだけ重要な話なんでしょ?」
「うん……」
何かに怯えているかのように、ぼそぼそと返事を返す七海。
彼女は『実は……』と始めに言って、話し始める。
「──天沢君も知ってるだろうけど、二人の女子が退学になったって話……」
「その話? 皆話しすぎてもう聞き飽きたよ……」
呆れたように言う僕。
しかし、七海の口から語られるのは今までとは違うもののようだ。
「ち、違うの。そういうことじゃなくて……」
「……?」
「──私、その二人と友達だったの。長谷川 舞ちゃんと、坂本 綾ちゃん……」
「……え?」
僕は思わず言葉をこぼす。
そして僕の脳内の点と点は線で結ばれ、すべてを理解する。
あくまでも憶測に過ぎないが、浮かび上がってきた事実に僕は少しばかりの恐怖心を抱いた──
──というのも、普段七海と関わっている人物というのは相当限られる。
確かに七海は国民的モデル、女優であり、とてつもない知名度と人気を誇る。
当然学校内でもそれは同じだ。
しかし逆に人気すぎるがあまり、近寄りがたい人物として見られてしまっている。
その為、大抵七海と関わっているのは、僕、爽真……。
──そして過去のことだが、美香とその周りの"女子二人"だ。
となれば今朝発表された、七海の友達である女子二人の退学者というのは──
「──美香の周りに居た女子二人……、あの二人が退学になってるんだよ……!」
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