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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界の少女に手を焼いています

作者: Zaki

こちらは短編として書いていますので、これだけでも完結した話になっております。

第一部「異世界とかいうところから来た男に会ったんだが」

第二部「異世界から来た女と出会ったんだが」

とは、完全に独立した話になっていますが、もし良ければそれらも読んで頂けると幸いです。


また、感想やブックマークを頂けると、非常に嬉しいです。


「リンクス~~~!」


甘ったるい声が聞こえる。

本当になんでこんなことになっているのか・・・。


目を開けると、いつものように金髪の少女が目の前にいた。

7歳ぐらいの人族の少女だ。

どうしてこんな草原で俺と野宿をしているのか、本当に意味不明だ。


「さあさ、早く準備して!今日のうちにダルの街に着くには、のんびりしてられないでっしょ!」


まったく、その点にはその通りなのだが、問題は、なぜお前が一緒にいるのか、なんだが・・・。


「またしょうもないこと考えてるんでしょ?怒るわよ!」


プンスカ、という擬音語が聞こえてきそうな動きと表情をしながら彼女は自分自身の準備に取り掛かっていった。


俺の名前はリンクス。旅する冒険者、種族はリザードマンだ。

そしてこの小さいのが、、、エリザベート・コロン、通称リズだ。


「小さくて悪かったね!」


こいつ、また俺の心でも読みやがったのか?

全く、気が休まらないったらありゃしないぜ・・・。


「リンクス、さー行くわよ!」


俺たちは別にパーティを組んでいる訳ではない。リズが勝手についてきているだけだ。


・・・・・・


ゾーイの街を出る時、次いでの依頼を探しているときだった。


「あんた、ダルの街へ行くの?」


声がした方を振り返るが、人の姿は見えない。気のせいかと思い、前を向き直そうと思った瞬間、右足に激痛が走った。


「無視すんじゃないわよ!!」


足元にはまだ家事の手伝いも充分にできないような年齢のガキがいた。ただその衣装はまるで貴族かと思わんばかりの仕立ての良い服装で、それがなんで冒険者ギルドにいるのか、理解が全く追いつかない。


ようやくそこにいた子供が自分に話しかけていたのかと理解した頃、さっき強烈な一撃を喰らった右足の激痛が再度込みあげてくる。


「!!!!」


思わず右足を抱えてうずくまる。


「あら?ちょっと力加減を間違えたかしら?ごめんあそばせ。」


リザードマンの鱗は人族の皮膚よりずっと固い。なので、皮下にある筋肉量が同じなら、当然リザードマンの方が固いことになる。だが、さっきの一撃はなんだ?このガキの蹴りだというのか?


「さっきのは正拳突きよ。」


いやいや、いきなり人の足に正拳突きを喰らわす輩がいるものか。

っていうか、俺は何も言っていないのに何で答えてきた?


「いいから、答えなさいよ。ダルの街に行くんでしょ?仕方ないわね、わたしが同行してあげるわ。」


俺は子守なんてクエストは受けていないはずなんだが・・・。


そう考えた瞬間に顎に衝撃を受けたかと思うと、俺の意識は深い闇に沈んでいった・・・。


・・・・・・


とにかく、最悪の出会いだった。なのに、なんで同行しているのかというと、俺には拒否権が無かったのだ。どうせダルの街に行く予定だったし。問題はこいつ(リズ)が何で俺と同行したかったのか、という事ぐらいか。


悪夢のような出会いを思い出してもまた足が痛んできそうなだけなので、さっさと記憶に蓋をして、準備を済ませたら出発することにする。


「俺はいつでも出れるが?」


「遅いわねー。待ちくたびれてティータイムにしてたわよ。」


どこから取り出したのか、ちゃんとした器に茶を入れて飲んでいた。ちゃんと湯気が立っているが、火を起こす時間なんてなかったはずだが。


「さ、行きましょうか。」


サッと手を振ったかと思うと、リズの右手にあったカップは元からなかったかのように消えて無くなっており、彼女はおもむろに立ち上がる。

俺は片膝をついて、彼女の前にかがむ。そうして彼女を俺の肩の上に乗せると、走り出した。


「キャー、最高!!」


彼女は愉快そうに声を上げているが、こっちは別にそんな楽しいことをしている訳じゃない。リズは先日知り合ったばかりの、素性もまだよく分からない少女だ。俺はどんな表情をしながらリズを肩に乗せているのだろうか。


・・・


「ちょっと、リンクス、止まって!」


小一時間ほど進んだのち、急にリズが真面目な雰囲気で言い出した。こんな声色は出会ってから今まで一度もなかったのに、だ。


「どうした?」


俺はリズを下し、何かあったのかと周囲を見渡す。が、何も変化は感じられない。


「すぐに戦闘準備をして。いや、わたしが相手をするからリンクスは隠れてたらいいから!」


何を言っているのか、と思っているのも束の間、急に悪寒がしたかと思うと、とんでもない威圧感が俺の体を襲う。


右斜め前約45度の方向からやってきた『それ』は、鷲の頭とライオンの体、蛇の尻尾を持つ怪物、グリフォンだった。


「!!!」


「そこの岩陰に!


「グォォォォーー!!」


リズのタックルを受けて吹き飛んだ俺は岩陰まで飛ばされる、その刹那、俺たちがいた所に猛烈な疾風が駆け抜けた。


ブォォォーーー!!


竜巻を超えるような風圧が飛び回っていた空間の中で、リズはクロスした両腕で顔面を覆っていただけで防いでいた。


舞う砂煙が去ろうとしたとき、俺は見た。どこからか取り出したのか、曲がりのある片刃剣を持ったリズが踏み込みをしようとするところを。


次の瞬間には、グリフォンの片足が1本吹っ飛んでいた。


!!!


何が起きた?リズの動きが速すぎて捉えられなかったのだろう。

信じられないような事態を把握しようと必死に考えているところで、グリフォンのもう1本の脚から鮮血が噴き出すのをが見えた。


以前、リズの動きに目がついていけていない。

一太刀毎に踏み込み直すときにリズを確認するが、その直後にはもうリズが次の太刀に飛んでいくのだ。


羽根が舞い、反対側の脚も体重を支えきれなくなったところで、グリフォンの最後が訪れた。


リズの剣がグリフォンの首を飛ばしたかと思うと、激しい稲光がグリフォンを焼き払う。

轟音とともに横に倒れたグリフォンは間もなく光となって消え去った。


「大丈夫?」


一瞬、リズが自分に対して言っているのが理解できず、戦闘が終わったというのにまだ、ただ茫然と目の前を見つめる自分がいた・・・。


「リズ、君は一体・・・?」


「エリザベート・コロン、来月8歳になるコロン家の4女ですわ。」


この瞬間だけを見たら可愛げな少女と思えるであろう笑顔を浮かべたリズは、少し首を傾けて、礼儀を学んだ貴族の女の子らしく答える。しかし、俺はただ、目の前の戦神か死神のような人間離れした少女に、ただただ戦慄するのであった。。。


今回も短いお話でした。

今後も小品集のように単品の作品を作っていきたいと思っています。

感想をお待ちしております。


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