資質の覚醒
スノーレインが幸せの呪気状態で手のひらに乗せている種に
意識を集中させる。
スノーレイン(大丈夫、落ち着いて…冷静に…れ)
種は勢いよくはじけた。
スノーレイン「ああもう!なんでできないの!これで20回以上失敗してるわ!」
感情が怒りと焦りで乱れたせいか、黒髪に戻る。
そんな様子をみていたフェイクレインはなだめようと声をかけた
フェイ「スノーレイン様、15時を過ぎた頃なのでそろそろおやつでも食べて、
晩御飯の準備でもしませんか?」
スノーレイン「でも、課題が…」
フェイ「一度休憩して気持ちを切り替えることも大事だと思います。
いまの早く上手にできるようになろうって気持ちのままでは成功しないかと…」
それを聞いて、スノーレインは手を口元にあて目線を下にそらし納得する
スノーレイン「そうね、チョコレートでも食べて、そのあと
刺身と味噌汁、それからご飯を炊きましょう。」
フェイ「では、私は魚を切りますね」
スノーレイン「じゃあ、ご飯と味噌汁は私が担当しようかしら、ふふふ…」
ふたりが皿に盛られたチョコをほおばる。
これは甘党の四代目が仕入れたものだ。
四代目はいま、お菓子の輸入輸出をしている。
このチョコレートはその余り、おすそ分けというわけだ。
フェイ「しかしまーアレですね、初代様はともかく
二代目様は漁師、三代目様は家庭菜園、四代目様はお菓子と
それぞれ食に困らない方々が多いですね。」
スノーレイン「んー?それはちょっと違うかな。前に
それぞれに話しを聞いたときは、魚は取れない時もあるし
野菜や果物は病気や天候に左右されるし、お菓子も
時期や流行によって売れる物が違うらしいわよ。」
フェイ「へー大変なんですね。」
スノーレイン「あーでも、二代目夫婦が冬の時に
大量に干物をもってきてくれたときはありがたかったし
とてもおいしかったわねえ。イカやタコ、魚の干物に
干し柿…みかん。ふふ、今年も楽しみねえ。」
フェイ「でも、毎年もらってばかりではなんだか
申し訳ないですね・・・」
スノーレイン「うーん、旦那が衣類の販売をしてるから
季節に合わせた服や帽子、靴をあげてるんだけど、やっぱり
別の物がいいかしら?」
フェイ「そうですねえ・・・あ!なら、今度三代目様の
植物が病気になったときは呪気で治してあげるのはどうです?
いままで切り捨ててたものが呪気で元通りになるんだから
とても喜ぶと思いますよ。」
スノーレイン「いいわねそれ!そうしよう!そのためにも
幸せの呪気を会得しなくちゃね。」
フェイ「そうそう、その意気です。」
おやつを食べ終わったころ、ちょうどミスティが帰ってきた。
ミスティ「ただいまー」
スノーレイン「おかえりー、あら!ミスティあなた、ケガしてるじゃない!」
よくみるとミスティの手の甲にはひっかかれたような傷があった。
ミスティ「ああこれ?いやー探してるネコは見つかったんだけど、
捕まえたらすごく暴れちゃってね。」
スノーレイン「大変!すぐに手当てしないと…」
ミスティ「お母さんったら大げさよ。これくらい消毒しとけばすぐ治るって」
スノーレインはミスティの手をとり、集中する。
髪の色が白くなる。
ミスティ(!?…これは幸せの呪気!初代のおばさんと同じ…)
フェイ(娘の傷を治すつもりなんだ。幸せの呪気を流して…けど、
失敗したらミスティの体がはじけ飛ぶ、危険な一発勝負だ…)
フェイの心配とはうらはらにミスティの手の甲の傷はあっさりと
傷跡が残ることもなく治った。
スノーレイン「はい!治ったわよ。」
ミスティ「あ、ありがとうおかあさん。てか、お母さんすごいよ!
幸せの呪気を上手に扱えてる。」
スノーレイン「あっ!」
スノーレインは娘の傷を治すことに必死になっていた。だから
憎しみの呪気の要領で気を流すことを頭からすっぽぬけていた。
無意識に流した呪気が幸せの呪気であり、それが癒す力になった。
スノーレイン「さっきは無我夢中だったけどわかる、この
全身にたぎる力、幸せの呪気。フェイ!すぐに植物の種を!」
待ってましたとばかりにフェイクレインが種を渡し、
スノーレインの手の平に乗せる。
スノーレイン(憎しみの呪気の要領じゃない、この幸せの呪気を流す!)
スノーレインが呪気を込める。するとどうだろう。手のひらの
種が発芽した。
ミスティ「わあー…すごい、お母さんまるで初代様みたい!」
スノーレイン「そうね…これを極めれば初代様と同じ土俵に立てるかも。」
ミスティ「がんばってね、お母さん!」
発芽した種はめきめきと成長し、ゆっくりと花を咲かせた。
フェイ「すごい…幸せの呪気は成長を促しているのか…それだけじゃない、
癒しの力も秘めている。なんでも応用できることに半信半疑でしたが
本当のようですね…」
スノーレイン「フェイ、私これを極めてみようと思う。
何年かかるかわからないけど、付き合ってくれる?」
それをきいてフェイクレインの答えは決まっていた。
フェイ「もちろんです、お付き合いしましょう」
スノーレイン「ありがとう」
そういってにこりと微笑んだ。