二代目と幸せの呪気
シチューを食べ終えた3人は家の裏庭にて
スノーレインの修行を行おうとしていた矢先、
客人が訪ねてきた。
????「おーっす!久しぶりー!いるかー!」
激しくドアを蹴とばす音がする。
スノーレイン「この乱暴な音と声、二代目様ですね…」
フェイ「ですね。」
スノーレインがドアを開ける。すると
木箱を抱えたやや筋肉質で背が高く、きりりとして中性的な顔立ちの男が立っていた。
????「なんだいるじゃん!こっちは両手ふさがってんだから
早く開けてくれよな!」
スノーレイン「すいません二代目様。その荷物は?」
二代目「ああこれ?氷と一緒にマグロの切り身が入ってんだよ。
おめーんとこ育ち盛りのガキが多いからな。それにこの地域じゃ
魚は貴重だろ?」
スノーレイン「ありがとうございます!二代目様!」
二代目「その二代目って呼び方どうにかなんねえかな?
オレはスコールレイン・キラーウェザーって名前があるんだからさ。
スコールって呼んでくれてもいいんだぜ?」
フェイ「その呼び方はいろいろ問題があるのでダメです。」
彼はスコールレイン・キラーウェザー。通称二代目である。
二代目とはいうが初代の呪気を受け継いでいるわけではなく、
当時の二人目の最高峰の呪気使いであるから二代目と呼ばれている。
元は女性だったが、若い頃に毒殺され、15年前にて八つ手に蘇生される。
その後は3代目の思いを受け止め、性転換し結婚。現在にいたる。
初代「あららスコール、今日はあなたがきたの?」
二代目「なんだよ初代ばあちゃんまたいるのかよ。迷惑かけてねえだろうな?」
初代「当たり前でしょ。これからスノーレインに稽古つけてあげるとこよ。
あと若返ってるんだからそのばあちゃんて呼ぶのやめなさい!」
二代目「わりいわりい、そっか。」
そういうと二代目は部屋に上がり込み、適当に隅っこに木箱を置いた。
二代目「氷も入ってるから明日の朝までは鮮度がもつよ。
それまでに焼くなり刺身にするなりして食べるといい。」
スノーレイン「ありがとう、ところで二代目様は今日は魚を届けにきただけです?」
二代目「んまーそのつもりだったんだけど、呪気の修行するっつうなら
付き合うぜ?」
そういって二代目が拳をかち合わせる。
スノーレイン「お手柔らかにお願いします。」
二代目「はっはっは!そうかしこまるなって!スノーが幸せの呪気を
維持したまま戦えばオレなんて指先一つで倒せるんだぜ?
って、まだ呪気を維持したままじゃ戦えねえか。」
二代目が指をポキポキと鳴らす。
二代目「で、どこでやるんだ?」
スノーレイン「家の裏庭です。」
スノーレインが案内し、4人は裏庭に移動した
初代「さて、修行に入る前に呪気についてちょっとおさらいしましょうか。」
スノーレイン「はい!」
初代「まず、呪気は闘気、魔気、霊気のように体に帯びることで
身体能力が飛躍的に上昇するの。呪気は3つの気よりも上位に位置するわ。
だからよほど力の差がないかがぎり相性で有利ってわけ。
呪気は訓練すれば気配の感知、透視、浮遊、操作、回復、能力の封印、
敵の虚弱化等いろいろできるようになる。
基本的に呪気は憎しみの呪気と幸せの呪気の2種類ね。
最も、スコールはちょっと特殊だけど。」
フェイ「怒りの呪気、あるいは闘争心の呪気ですか?」
初代「そうね、まあ見せてもらったほうが早いかな。」
それを聞いて二代目がはりきる。
二代目「いいぜ!見せてやるよ!」
二代目が全身に気をたぐらせる。
二代目「おらあ!」
二代目の全身を赤い気が包み込む。
スノーレイン「これが怒りの呪気…あの時みたことあるけど
やっぱり憎しみの呪気とも幸せの呪気とも違う変化をしてる…」
フェイ「すさまじいエネルギーの大きさです。」
二代目はそのまま変身を維持するかと思ったが、あっさりと通常の状態に戻った。
二代目「ふう…まあたしかに強いっちゃ強いんだろうけどさ、
スノーのガキのやる呪気サードよりちょっと上くらいなんだよな、これ。
やっぱ幸せの呪気には勝てねえよ。」
二代目は遠まわしに初代を褒めた。
初代「ふふふー♪怒りを力に変えるのは自然な流れではあるけれど、
維持するのと体への負荷がかかるのよねー。その点は憎しみの呪気も同じかな。
どんなに鍛えてもそのうち限界がくる。」
スノーレインはなんとなく納得していた
スノーレイン「なるほど、だから幸せの呪気を学ぶのですね。」
フェイ「それもあるでしょうがいまのスノーレイン様なら
幸せの呪気をコントロールできると思って、初代様は教えてくださるのだと
思っています。」
初代「さあさあ、そろそろはじめましょ♪スノーレイン、
前みたいに楽しいことやうれしいことを想像して全身にくっと力を込めてみて。」
スノーレイン「わかりました…」
スノーレインは目を閉じ意識を集中する。
するとあっさり幸せの呪気を維持した状態になれた。
二代目「おお…!長い髪が白く、眼も赤みを帯びてる。
見た目だけなら初代みてーだ。あと気配がすげえな…
バカでかい気のせいで強さがはかれねえ…!」
スノーレイン「この状態になってる時だけわかるんです。
初代様のとてつもない、ありえないほどの膨大な力が…」
二代目「そんなにすげえのか!?」
スノーレイン「すごいとかそういうレベルじゃなく、
一言でいうなら無限…とでもいいましょうか。とにかく
数値で表せる強さではないということです。」
様子をみていた初代は次の課題をだした
初代「うんうん、変身自体は慣れてきたみたいだね。じゃあ、
動いてみよっか?」
スノーレインが身構えようとしたその時
初代「あー構えなくていいよ!そのままゆっくり動くの。」
スノーレイン「ゆっくり…?」
初代がゆるりと拳をつきだす動作とこれまたゆるりと蹴る動作をしてみせる。
初代「まずは戦うことではなく、無意識に動くことをやってみて。
あてるとかぶつけるではなく、蝶々をそっと掴むようにね。」
スノーレイン「やってみます。」
スノーレインはこの動作が戦いではないと意識しつつ、
そっと拳を付き出す。腕がのびきったら元の位置に戻し、
今度は足をあげる。幸せの呪気は維持されたままだ。
初代「うんうんいいねえ、体が幸せの呪気に慣れた感じね。
じゃあ、今度は幸せの呪気を操作してみよっか?」
スノーレイン「呪気の操作?」
初代「そう、いま体を巡ってる呪気を指先から流すの。
呪気の基本的な技…技と呼べるのかしら?あたしはいつも自然にやってるからなあ」
スノーレイン「と、とにかく呪気を流せばいいんですね?」
スノーレイン(呪気を流すのなら憎しみのときと同じ要領でできるはず…)
初代はキョロキョロと地面を見渡すと、植物の種を見つけてスノーレインに手渡した。
初代「はいこれ。これの芽をだしてみて。そしたら合格♪」
二代目「なんだ、楽勝そうじゃん!」
フェイ(・・・・・これは多分、失敗する。憎しみの呪気と同じ要領では…)
スノーレインは手のひらに種を乗せ、呪気を流す。
スノーレイン(大丈夫、憎しみの呪気の容量で流せば…)
スノーレインが呪気を流した瞬間、種ははじけ飛んだ。
驚いたスノーレインは思わず喜びの呪気が消え、元の黒髪に戻ってしまう。
スノーレイン「は?え?そんな…なんで?」
その様子をみて初代はニヤニヤしている
初代「ふふふー♪スノーレインちゃんもしかして憎しみの呪気と
同じ要領で流せば大丈夫とか思ってたんじゃないー?残念でした!」
スノーレイン「うっ…」
初代「いまは幸せの呪気なんだから、それを流すことを考えないとダメよん。
憎しみの呪気と同じ感じで呪気を流せば当然、流れるのは憎しみの呪気になる。」
スノーレイン「なるほど…」
初代「今日はこれでお終い!幸せの呪気を流すコツは自分で練習してね。
明日のお昼にまたテストしてあげる♪」
スノーレイン「はい!」
フェイ「…初代様、今日はもうお帰りになるので?」
初代「んー?あたしがこのままここにいても練習の邪魔になっちゃうからね。
これは自分でやらなくっちゃね。」
そういって初代は手を振ってどこかへ行ってしまった。
二代目「じゃあ、オレも帰るぜ。もともと魚を届けにきただけだしな!がんばれよ!」
スノーレイン「ええ、二代目様も三代目様と仲良くね」
二代目「おう!」
二代目は颯爽と去って行った。
残されたフェイとスノーレインが明日に備える。
フェイ「私は植物の種を集めてから家に戻りますので、
スノーレイン様は休んでいてください。」
スノーレイン「ええ、ありがとう。」
スノーレインの幸せの呪気、会得までの修行は続く。