ベルレインの若い頃とスノーレインのお話し
お昼ご飯を食べつつふと気になったことを、
スノーレインが初代様に尋ねてみた。
スノーレイン「そういえば初代様って結婚したことあるんですか?」
シチューをほおばりつつ初代が答える。
初代「あるわよ」
意外な答えにフェイクレインがげほげほと喉を詰まらせる。
フェイ「あ、あるんですか!?」
初代「そりゃ若い頃は恋愛のひとつやふたつあるわよ?
まーあたしの場合はお見合いだったけど」
興味があるのかスノーレインがくってかかる
スノーレイン「じゃあ、もしかしたら初代様の子孫がいるのでは?」
初代「あはは!いないいない!だって1日しか続かなかったもん。」
フェイ「それはまたなぜ?」
初代「料理はできない、洗濯してない、家にいない。ないないづくしで
あきれられて夫のほうから去って行ったわ。」
なんとなく「あー」と思うフェイクレインとスノーレインであった。
初代「もし子孫がいたとしてもあんたがフェイクレイン以外
皆殺しにしてるでしょうよ」
スノーレイン「うっ…」
それをきいてフェイクレインは不思議に思った
フェイ「…そういえばスノーレイン様はなぜあの時私と
その付き人だけを生かしたのですか?やろうとおもえば
一族皆殺しにできたでしょうに」
うつむいたままスノーレインが答える
スノーレイン「それは…あなたが花を添えていたから…」
フェイ「っ!…気づいてたんですか…」
スノーレイン「あなたが私の当時の夫と流産した赤ちゃんのお墓に
花を添え、手を合わせていたことは知ってた。数ある歴代の
ベルレインの墓とは離れた位置にある、里の人間は近づかないあの墓に
あなただけが出向き、そして悲しんでいた。
私のことは親からも聞いていたはず。なのにどうしてあなたは
私を憐れむのか不思議だった…だからあの時殺せなかった。」
スノーレインは不思議そうな顔をして質問した。
スノーレイン「ねえ、フェイ。あなたはどうして私を嫌いに
ならなかったの?」
その質問に対してフェイクレインは淡々と答えを返した。
フェイ「噂や人づてにきいたスノーレイン様のことなんて
嘘や偏見で塗り固められてると思ったからです。子供の時あなたをみて
感じたことは、怒りや憎しみ以上に悲しみや絶望を抱えてるようでした。
そんなものからあなたを解放する機会をずっと待っていた。
でもただ時は過ぎていき、あなたは老いて、私は呪気の継承者になるはずだった。
半ばあきらめかけていたとき、奇跡はおきました。」
初代「あの若返り事件ね?すごいよね生き返ったやつらもみーんな
全盛期の姿になっちゃうんだもん。」
スノーレイン「じゃあ、その時からこうなることを予見してたっていうの?」
フェイ「行き当たりばったりですが、なんでもできる神と悪魔が
揃ったんです。あとは計画通りにコトを進めただけ。その結果、
スノーレイン様は3人の子供と素敵な旦那、友達ができた。
家族と友達と過ごすこの15年のスノーレイン様はとても幸せそうでした。
多分、その人生がスノーレイン様の本来歩む人生だったのではないと。」
スノーレインはほぼ納得していたが、ひとつだけわからないことがあった。
スノーレイン「フェイが私に尽くしてくれるのはわかった。
でもその理由が知りたいの。同じ里の人間てだけじゃ
ここまでしてくれるわけがないもの。だってその理屈じゃ
フェイの目的は15年前に達成されたことになるじゃない?」
それをきいてフェイはにこりと答えた
フェイ「子育てや夫婦生活に一喜一憂するスノーレイン様を
みてみたいと思ったからです。」
あまりにもあっけない理由にスノーレインがめんくらう
スノーレイン「そんな…あなたはそんな理由で15年も私を支え、
子供たちの面倒までみてくれたの?自分の人生をすてるようなものよ…!」
フェイ「ふふふ、私は私のやりたいことをしてるだけです。でなければ
いままでスノーレイン様の傍にいませんよ。」
どこか腑に落ちないがそのままシチューを口へ運ぶ
初代「ふたりともしゃべってばかりだからおそーい!」
フェイ「初代様が手を止めずに食べ続けるからです。」
初代「おかわりー!」
フェイ「…別にかまいませんけど、3杯までです。」
初代「ケチー!」
こうしてスノーレインは悶々としつつ昼食が終わった。