お祝い
ストームとクローバーは家に帰るとすぐにアマテラスに報告した。
蛇のギルドのスタンプを倒したこと、フランシェを逃してしまったこと、
クローバーが鉄を斬れるようになりさらに斬撃を飛ばせるようになったこと、
そして闘気が扱えること。いろんなことを手短に話すとアマテラスは
クローバーの騎士としての成長を祝おうと言い出した。
クローバー「あの…いいんですか?アマテラス…」
アマテラス「何が?」
クローバー「私は今回の任務を失敗してしまいました。敵を
仕留めることも捕らえることもできなかったんです。なのにお祝いだなんて…」
アマテラス「いーのいーの!そんなことよりクローバーが鉄を斬れる騎士になれたことのほうが
喜ばしいことだよ。ギルドマスターとしても鼻が高い♪」
ギルドメンバーがぞろぞろと集まってくる。
ブラスト「おめーホントに鉄切れるのかよ?とてもそんな風にみえねえけどな。
闘気が操れるようになったってのも怪しいもんだぜ」
アリア「クローバーがそこまで強くなったのはあたしもうれしーぞー!」
リルフ「しかしまぁ…その恰好。また瀕死になったようだな…」
クローバーは肩を手で撫でる。
クローバー「まあ、一瞬だけどいろんなことがありましたから…」
アミルがクローバーの手をとり、部屋へ連れて行こうとする。
アミル「みんないろいろ聞きたいことや見たいことはあるでしょうけど
まずは着替えくらいさせてあげましょ。血だらけの服と壊れた甲冑のままじゃ
クローバーもいい気分じゃないでしょうし。」
クローバー「お気遣いありがとうございます」
ミスティ「じゃあ、あたしたちは外でクローバーの鉄斬りの準備してるから、着替えたら庭にきてね」
クローバー「はい!」
アマテラス「楽しみだなー♪」
クローバーはアミルに連れられ、アミルの部屋にくる。
簡素な上着と下着をクローバーに差し出す。
アミル「おしゃれじゃないし、あなたにはちょっと似合わないかもしれないけど
動きやすくて無駄のない服はこれね。」
クローバー「無地のパジャマみたいな服ですね…ん?ひっぱると伸びる。
伸縮性もあっていいですねこれ♪」
クローバーが服を着替え、上着のジッパーをあげる。
アミル「ねえクローバー、前にした約束覚えてる?」
クローバー「約束…ですか?」
アミル「そう、あなたが鉄を斬ることができるようになったとき、
わたしの能力を教えてあげるっていう約束。」
クローバー「ああ、そういえばしてましたね。もしかしてここで見せてくれるとか?」
アミル「見る…とは少し違うかしら。体感するって表現のほうが正しいかも」
クローバー「どういうことです?」
アミルがクローバーを抱き寄せる。
クローバー「え!?あの!」
アミル「静かに、大丈夫だから…」
アミルの額がクローバーの額に当たる。すると頭の中に図書館のような場所が
くっきりと浮かびあがる。
クローバー「え…!?ここは一体!?」
アミル「これがわたしの能力。メモリーライブラリー。記憶の図書館よ。」
クローバー「記憶の…図書館?じゃあここにある本棚も大量の本も…!」
アミル「そう、これ全て私の見てきたこと聞いてきたことの記憶。
毎日の体験した出来事の全てがここにある。わたしがここのギルドの情報処理担当なのは
この能力のおかげ。あらゆる情報がここにある。思い出もね。」
そういってアミルはクローバーから離れる。と、同時に普通のアミルの部屋に意識が戻る。
クローバー「確かに戦闘向きの能力じゃないですね…でもすごいですよ!
こんな便利な能力とても羨ましいです。」
アミルは視線をおとした
アミル「確かに便利な能力ではあるけれど、この能力自体に攻撃性は皆無なのよ。
まあ、やろうと思えば攻撃に使用することもできないわけじゃないけど
さっきみたいに相手に触れなきゃいけないから難しいわね…」
クローバー「戦闘に使えるんです?」
アミル「ええ、相手の脳に直接怒りや悲しみを流し込むの。
そうすると錯乱状態になるのよ。」
クローバー「え、えげつない攻撃方法ですね…」
アミル「まあでも普段は…というより滅多に使わないんだけどね。
同じ相手に何度も使える戦法じゃないし、わたしには魔法があるから。」
クローバー「魔法…なるほど」
アミル「あら?驚かないのね。前のクローバーならそんなものあるわけないって
言いそうだけど。」
クローバー「自分で鉄を斬ることができたんです。できるはずがないと思ってたことが
できるようになった。だから、いまは何を聞いても驚きませんよ?」
それをきいてアミルはふふっと笑った
アミル「そう、これからのあなたの成長が楽しみね。いったいどこまで強くなるのかしら。
さ、話しもこの辺にして外にいきましょうか。みんなあなたを待ってるわよ。」
クローバー「はい!行きましょう!」
アミルとクローバーが外にでる。
クローバーの姿をみてブラストが驚いた。
ブラスト「は!?え?クローバーおまえ…女だったのかよ!?」
クローバー「そういえば話したことなかったですね。私は女です。」
ブラスト「マジかよ…全然気づかなかった…」
クローバー「普段はこういう恰好もしないですし、その…腰のくびれとか
お尻のラインがでてないか気になって…」
ブラスト「大丈夫、おまえ胸ないし見た目男みてーなもんだし!」
アリア「こら!」
アリアがツッコむ。
ストーム「まーこの中でクローバーが女の子だってこと気づかなかったのは
ブラストだけかもね…」
アリア「えー?あたしも最初は気づかなかったぞー?」
リルフ「オレは匂いでかぎ分けられるからな…最初から気づいてた。」
ミスティ「あたしは仕草とかでなんとなくわかったかなー?でも確信なかったけど」
それぞれが言い合いながらアマテラスが剣をもってくる。
アマテラス「そんなことよりほらほら、クローバーの剣だよ!
あそこに的を用意したから早く斬撃飛ばすところみせてみせて!」
クローバー「焦らないでください…」
クローバーが剣を握り、意識を集中する。
リルフ「なあストーム、クローバーは本当に鉄を斬り斬撃を飛ばせるのか?」
ストーム「うん…」
リルフ「うんっておまえ…みたわけじゃないのか?」
ストーム「ボクがみたのはそれらしき痕跡と本人のクチから聞いただけだから…」
リルフがやれやれといわんばかりに眉間に手をあてる。
そんなことをよそにクローバーが鉄板目掛けて剣を振るう。
バァン!という大きな音を立てて鉄板が二つに裂けた。
アマテラスが手を叩いて喜ぶ。
アリアもまるで新しいおもちゃを見るような目でキラキラさせている。
ブラストはクチを開けて驚く。
アマテラス「すごいすごーい!ホントに鉄が斬れた!
強くなったねえクローバー。ギルドマスターとしても鼻が高いよ♪」
クローバー「ありがとうございます。」
リルフ「流石としかいいようがないな…ものの数日でここまで成るとは…」
ミスティ「いやそれもすごいけどさ、みた?みたよね?クローバーが闘気を
まとってたところ!?そっちもすごくない!?」
はしゃぐアマテラスたちとは対照的にストームとアミルは斬れた
鉄板をみて考え込んでいた。この斬撃はまだ不完全だ、と思っていた。
斬れるというより無理やりひきちぎったような鉄板の切れ目をみて
クローバーもこの斬撃ではダメだと感じる。
だがアマテラスはそんなこと関係ないといった感じだ。
アマテラス「それじゃクローバーにはご褒美あげなきゃね。」
アマテラスがポケットから鈴と用意していた巻物を差し出す。
見覚えがあるソレにクローバーが声をもらす。
クローバー「それ…たしかストームがもっていた…」
アマテラス「そうだよ、妖怪の世界に行くことができる道具だよ♪
昼夜を問わずこの二つがあればいつでもシャンシャン達に会えるんだ!」
クローバーは思わず飛び上がりそうなほど嬉しさが込み上げてきた。
クローバー「ああああありがとうございます!あの…」
アマテラス「今日はみんなでクローバーのお祝いがしたいから
行くなら明日からだよ!あと、お仕事がある日は行っちゃダメだからね?」
クローバー「はい!」
アマテラス「それじゃみんなーパーティの準備しよう!
おいしい料理やケーキを作ろうね♪」
そういってみんな歩いて屋敷の中へ入っていく。
アミル「…まだ早いと思いますよ?」
アマテラス「何が?」
アミル「鈴と巻物です…彼女を妖怪の世界に行かせる、それも一人でいくかもしれないのに
今回みたいにまた死にかけることになりかねませんよ?いや、ヘタしたら死ぬかもしれない…」
アマテラス「そうかなー?いまのクローバーなら大丈夫だと思うけどなー」
アミル「せっかく闘気を覚えたのだからもっとじっくり育てるべきです。
半年あればわたしたちと同じか少し下の位置になるくらいの強さを
クローバーは手に入れれるはずです。」
アマテラス「うーん、じっくりってのはクローバーに合ってないかも…
クローバーはずっと一人で稽古してる時期が長かったから、これからどんどん
実践を積ませたほうが伸びると思うけどなぁ」
アミル「まぁ、クローバーが死なないようにわたしたちも善処します。」
アマテラス「うん♪」
屋敷に集まった一同に対してアミルが役割をふりあてる。
アミル「ブラスト、リルフ、アリアの三人はケーキの材料を買ってきて。
これに書いてあるものをおねがい。わたしとストームとミスティは料理を作るわよ。
ミスティは野菜を洗ったり火を調節しながらスープをかき混ぜてもらおうかしら。」
ミスティ「おっけー」
ブラスト「んじゃあいってくるかー」
それぞれが分担して作業してるなか、クローバーがアマテラスに問う。
クローバー「アマテラス、ちょっとお願いがあるのですが、入団テストのとき
これ見えるってやってたやつ、いまテストしてもらえませんか?」
アマテラス「いいよー」
アマテラスが右手に霊気を込める
アマテラス「これ、見える?」
いまのクローバーにはそれが見えた。白いぼんやりとした気がみえる。
クローバー「それが霊光拳なんですね。」
アマテラス「うんうん、霊気もみえるようなるなんてすごいね。その調子だよ♪」
数時間後、ごはんの準備ができてテーブルには豪華なチキンなどが並んでいた。
アリア「わー!おいしそう!早速食べようよ。」
ブラスト「はらへったからな、食おうぜ!」
アマテラス「それじゃクローバーの鉄斬りを祝って、乾杯♪」
こうして祝賀会がはじまった。
クローバーの成長はまだまだこれからはじまる。




