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第四話


 そんなこんなで、話をしながら歩いていたら谷川こころの家に着いた。

彼女の家は一軒家で、閑静な住宅街の中にある。

扉の横についてあるインターフォンを二人は鳴らした。

ピンポーン、と軽快な音が鳴る。

しかし、誰も出てこない。

静けさに、ドキドキする胸が押し潰されそうだ。

彼女に、何かあったならどうしよう。

思わず、朱音は大声を出した。


「こころ、いたら出てきて!」


すると、ドアがバンッ! と力強く開いた。

ドアノブが壁に、壊れそうな勢いでぶち当たる。

そして怒気の表情を浮かべた谷川こころがそこに立っていた。


「……朱音、河合くん、二人でわざわざ何しにきたの?」


静かな声だが、表情は眉が吊り上り、目を真っ赤に腫らしていて鬼のような形相だった。

朱音は嫌な予感がすべて当たってしまったのではないかと震えながら言った。


「何って、最近こころ、学校に来てないから心配で」


その言葉も届いてるようには見えなかった。

こころは今にも怒り泣きしそうだった。


「……朱音はいいよね」


「な、なにが?」


「河合君と何の障害もなく仲良くできて! 私たちは……私たちは……」


朱音も泣きそうだった。

理解したいのに、それができない。

わけもわからないまま問いかける。


「どうしたの? なにがあったの?」


頼む、答えて……その願いもはかなく、こころは言葉を叩きつけた。


「なんで二人で来たの? 嫌がらせ?」


「違うよ! 私も河合もあなたのことが心配で……それに私たちはただの友たちで、変な関係じゃ」


「変な関係! あなたはカップルのこと変な関係って言うんだ! 大人たちみたいに!」


耳の奥で、ガラスが割れる音がした。


「違う、そんなつもりじゃなかったの」


朱音は混乱していた。

ただ、口から出てきたのは弁解の言葉だけで、それしか言えなかった。


「いいよ。もう二度と顔見せないで」


こころはまた、二人の鼻先で力強くドアを閉めた。

こんなつもりじゃなかった。

朱音は裏切られたような気分になった。

また、裏切ったような気分にもなった。

こんなつもりじゃなかった。

数少ない友達を失った。

信頼していた友達を失った。

こんなつもりじゃなかった。

ガラスが割れる音がする。

破片は確かに朱音の心に刺さって、抜けない。



 そしてこれが、朱音とこころの、今生の別れとなった。

――次の日、谷川こころとクラスメイトの男子の遺体が、発見された。

今回は短め

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