表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で特殊部隊に選ばれました  作者: 落果聖
アストラルの救世主
21/40

化物VS化物

 翔は道行く邪魔をする魔獣を魔法で殺しながら、地下の大広間を目指し疾走する。


 道行く先々で兵士達が魔獣達となれない戦いをしている中、その援護もしていた。

 地下の大広間ではモーセとアストラル王が、ケルベロス、カーディフ、黒髪の乙女と交戦をし続けていた。


「来たか! ローラとルナはどうした!」

「城門前でドラゴンと交戦中です! 冒険者達も来ていました。俺はとにかくここへ来るために全力でした」


「ローラの奴良い判断だ。カーディフを頼む」


 カーディフと呼ばれたそれは、すでに人と呼べなかった。

 四本の足で歩く形容しがたい化物でしかなかった。

 過剰に投与されたマナによって身体は肥大化し、形も歪になっていた。色も変色しており、場所によっては赤黒く、また緑色になっていた。目が脇腹に出来ていたり、触手が身体の一部分から生えていた。


 それでも翔は殺す事に若干のためらいがあった。


 カーディフの突然の一撃をどうにか剣で受け止める。魔力で補強した剣ですら折れ掛かる強烈な一撃である。


 以前決闘したカーディフとは比べものにならないほどの圧倒的な力だ。


「剣を取れ! その剣が殺す命によってどれだけの命が救われるのか考えろ! 迷うな! 突き進め!」


 アストラル王は叱咤する。


 翔は覚悟を決めた。


 すでにカーディフには決闘していた時のような知略など存在しなかった。マナによる圧倒的な力による殴打。しかしそれだけで十分とばかりに翔を壁に叩きつける。


 単純な動き、単純な戦略、しかしそれをカバーする圧倒的な力。


 それは翔の持つ未来視を持ってしても予測が追いつかない状態であった。


『一つを完全に使いこなすことが重要だからです』


 唐突にローラが教えてくれた魔法の事を思い浮かべる。


 たった一つを極めた。


 もちろんカーディフは極めた訳では無く、膨大なマナによって魔力を引き上げられた結果なのだろうが、それも魔力を極めた結果と言えるだろう。


 これが魔人か。


 翔は理解した。


 剣を握り治す。魔人相手には剣など有効な攻撃にならない。しかし攻撃を直に受けていては死んでしまう。


 カーディフの追撃を上空へ飛んで回避する。そのまま天井に足を付けて三次元的な動きでカーディフからいったん距離をとり、稲妻を放つ。


 稲妻によってカーディフの身体は焼き焦げるが。それもすぐさま再生していく。

 直感によって剣でなぎ払う。黒髪の乙女がボウガンで翔にマナを打ち込もうとしていた。


 ケルベロスが断末魔が地下の大広間を覆い尽くす。


 しかし黒髪の乙女のボウガンによってケルベロスはすぐさま再生していく。いくら体力を削ろうとも、身体を壊そうともその根源であるマナを黒髪の乙女は無制限に供給していく。


「さて。後何回殺せばいいのかな?」


 しかしそんな状況であってもアストラル王は余裕な表情だった。むしろその顔からは楽しさすら読み取る事が出来た。


 回復していくケルベロスの頭を空間の圧縮する複合魔法によって蘇生する前にひねり潰す。それと共に、ケルベロスのマナその物を空間から削り取ってしまった。


 黒髪の乙女は苦虫を噛みつぶしたような表情をした。


 どうやら魔王と言えども無限のマナを持つわけでは無いようだ。


「今回は素直に負けを認めましょう」


 黒髪の乙女はそう言うと、ケルベロスとカーディフにボウガンでマナを打ち込んだ。


 死ぬはずだったケルベロスは三つ首とも蘇り、カーディフの異形化は加速していく。


「翔!黒髪の乙女を追え!」


 逃げ去っていく黒髪の乙女の前にケルベロスとカーディフが立ちはだかる。


「どけカーディフ!」


 翔の迷いは消えた。


 翔は魔力を剣に伝え電撃をまとわせた。


 カーディフが突進する。翔も足に魔力をまとわせ跳躍する。


 力と力のぶつけ合いだ。


 未来視が見えるのとほぼ同時に翔は動いた。化物と戦うには己が化物になるしか無い。少なくとも今の翔にはそれしか手段が無かった。


 カーディフのうなり声なのか、それとも翔のうなり声なのか、判断が全く付かないが、お互いにゼロ距離での攻撃を続ける。


 魔力によるプロテクトを張りながら、剣と拳に稲妻を張り巡らせる事によって打撃でもダメージを与えられるようになっていた。


 剣もすでにボロボロで刃の部分はほとんど無く、鉄の塊とほとんど変わらなかった。


 決闘でも無く、戦いとも呼べない。


 あえて呼称するのならば、生存競争だろう。


 ケルベロスはすでにその名称で呼ぶのも憚られる状態になっていた。身体から生えてくる顔、顔、顔、むしろハイドラとでも呼ぶべきだろう。


 アストラル王とモーセはその顔を一つ一つ潰していく。牙は間違い無く強力であり、熟練した騎士である二人でもその牙の一撃だけで死にかねない。


 しかしすでにケルベロスは生命体としては不完全な代物であった。


 身体から生えてくるのは顔だけではない。顔のさきに足が生え、尻尾の先に頭があったりとすでにおぞましい姿に変わり果てていた。


 アストラル王とモーセはそれらを丁寧に潰していく。翔が化物のような戦いをするのとは対極的に理知的に戦略的に潰していく。


「死ね!」


 カーディフの首を三回はね飛ばしていた。すでに翔の身体はカーディフの真っ青な血で染まっていた。


 カーディフの動きがようやく止まった。


 迷っている贅沢など翔には存在しなかった。黒髪の乙女を追って地上へ駆け上っていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ