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異世界で特殊部隊に選ばれました  作者: 落果聖
アストラルの救世主
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ロベリア ブラッド

 今日は訓練場がアストラル騎士団の大規模演習で使われるため、ローラと翔とルナはドラゴンロアーの司令室にいた。司令室には相変わらずネコもおり、彼らを監視するようにじっと動かなかった。


 ルナは自らのエーテルフレームを展開し、それを布で奇麗に磨いていた。

 ローラは砂時計を眺めていた。砂が刻一刻と流れていき、最期の一滴が流れ落ちた。


 翔の握る魔力計の数値が1を指し示した。


「わずか一日でそこまで上達するとは思っていませんでした」


 ローラは感嘆の声をあげた。


「では次の特訓に行きましょうか♪」

「楽しそうですね」


 ローラはマスケットを試しに構えてみた。しかし何かが気に入らないのかまた拭き始めた。


「出来の良い弟子というのは見ていて楽しいですからね」


 ローラはそう言いながら魔力計をもう一つ渡した。


「では次は右手で1を左手で50になるように魔力を流してください。それを10分間」


 翔は言われた通りに魔力計に魔力を流してみたが、右手は10左手は30になってしまった。


「まだ魔力のコントロールがうまく出来ていない証拠です」

「ローラさんはどこまで出来るんですか?」

「……両手でしたら小数点第二位まで指定された位置に持っていけます。騎士ですがエルフと言ったら魔法ですからね。それぐらいできますよ。ですがそれは最終的な目標で良いでしょう。今はカーディフ殿をボコボコにしてやりましょう」


 ローラは目を輝かせながら言った。


「なんか楽しそうですね」

「えぇ、 私には翔殿とルナ殿の色恋沙汰など関係ありません。しかし子供を蹴り飛ばすなど騎士として許せません! カーディフ殿に正義の鉄槌を喰らわせなければ気が済みません!」

「そういうんじゃありません!」


 翔とルナの声がハモった。お互いに気恥ずかしいのか微妙に視線をそらした。


「俺はカーディフがルナの事を物みたいにあつかったのが許せないだけです。だからルナと恋愛感情があるとかそう言うわけでは……」


 翔の声が徐々に弱々しくなってしまう。


 実際ルナの事を可愛らしいと翔は思っている。しかし、ルナが翔の事をどう思って居るかかまでは解らない。

 初期のような険悪さは無くとも、仲間としか認識していない可能性だってある。ルナの顔を見ようとするが、ルナは翔と視線をあわせようとしなかった。


「馬鹿馬鹿しい事をしているねまったく」


 聞き慣れない少女の声が部屋に響いた。


 声の主はネコだった。


「ホーリードラゴンだったらエイヴン以外の婿養子候補などいくらでも見つかるだろ? なぜしなかった?」


「それは……」


 ルナは黙ってしまった。


「だったらそう受け取られてもしょうがない。ええと――救世主の君もだよ。ドラゴンロアー部隊の一員だって自覚が無いからそんな事に手を突っ込むんだ。君の仕事は国民を守る事だ。わざわざ無駄に怪我をしに行くような事は止めて貰いたいね。茶番は終わりだ。僕は研究に戻らせて貰う」


 そう言い終わると黒ネコは毛繕いを始めた。


「ローラさんは黒ネコの正体が誰かわかっていますか?」


 翔はモーセが黒ネコに対して深く喋ろうとしなかったのを覚えている。


「ロベリア ブラッド」


 ローラは重々しくゆっくりと口を開いた。


「国立アストラル学院を最年少で卒業。そのまま学院の研究室に入ったと言う話と、人間嫌いで滅多に人前に出ないと言う話しか知らないが、たぶん彼女です」


「そうやって人がいないと思って人の話をするから嫌いなんだよ」


 黒ネコは机に昇り挑発的な目をしながらローラを見つめた。


「そうさ。僕はロベリア ブラッド。君たちを影から嫌々支援するドラゴンロアー部隊の一人さ。僕の計画を遂行しようとしたらモーセの力を借りるのが一番手っ取り早かったんでね。便乗させてもらった」

「貴様には国民を守ろうと言う気概や誇りは無いのか?」

「無い。人間嫌いって説明したの君だろ? なんで守らなくちゃいけない。僕は僕の実験に忙しい。凡人共の世話は君達に任せるし、モーセの要請にはきちんと応える。それで問題無いだろう」


 黒ネコはそのまま机で寝そべった。


「モーセ殿が呼ばなかった理由が良くわかりました。では訓練を続けましょうか」




 決闘まで後三日。


 翔は最小限の魔力でローラの猛攻撃を回避していく。一瞬の隙を見計らいローラに全力で斬りつけるが、ローラはそれを読んでいたかのように剣で上手く攻撃をかわした。


「そこまで」


 練習試合の審判をしていたルナが声をあげた。


 翔は息をあげながらその場に倒れた。対してローラは平然とした顔で立っていた。翔の体力的にはまだまだ余裕ではあったが、精神が異様にすり減ってしまった。


「わずか数日でかなり上達しましたね。本来ですとこのレベルの魔力コントロールに3ヶ月はかかるのですが」


「そう言われてもローラさん汗一つかいて無いじゃないですか」


「何十年も騎士をしていますからね。まだまだ若者には負けるわけにはいきません」


 五日で翔の魔力のコントロールは爆発的な成長を遂げた。しかし根本的な問題として剣術を習っていないためにローラに勝つ事が出来なかった。


 しかし今までのような防戦一方では無く、攻勢に出ることも出来るようになっていた。


「まず、ローラさんとまともに試合出来る騎士なんてアリゲスぐらいよ。この時点でカーディフ相手には勝ったも同然ね」

「そうですね。カーディフ殿が何かしらの奇策を用いなければ翔殿の勝利は確定でしょうが、油断は常に禁物です。さて、もう一戦ほどしま―――」


 皆が皆顔を見合わせる。翔はポケットから石を取り出す。この世界に来たときに常に携帯するように言われていた石だ。


 その石が振動している。


「どうやらドラゴンロアーとして正式な任務が始まるみたいですね」



 気がつくとドラゴンロアーの司令室に翔達はいた。


「訓練中だが、黒いゲートがでたと言う報告が入った。場所はここだ」


 机の上に広げられているのはアストラルの首都の地図だ。モーセは地図の端の方を指さした。


「首都魔法防衛構想としてマナの地脈を利用している塔のある箇所だ。敵の狙いもたぶんそれだろう」

「でも遠すぎませんか?」


 翔が疑問の声をあげる。立地からして早馬で理論上は30分実際はもっとかかるだろう。


「その為に僕がいるよ」


 黒ネコが喋った。


「僕が開発した首都魔法防衛構想はね。兵士を首都内ならどこにでもテレポートさせるって凄い代物さ。他にもいっぱいあるけどどうせ理解できないだろうから説明しない。モーセのドラゴンロアー構想が無かったらたぶん配備にもっと時間がかかっただろうね」


「突飛な発想だったからな。予算通すの苦労したよ」


 モーセが頭を抱えていた。


「とにかく、君たちをゲート近くまでテレポートさせる。詳しい被害状況は解っていないが以前のゲートよりも深刻らしい。現場の指揮はローラに一任する」


「了解しました」


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