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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
のんびり冒険者譚

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冒険者らしい一日の終わり

「皆無事か!?」

 俺は皆の無事を確認する為急いで元の位置まで戻った。

 木の陰や馬車の陰からピョコピョコ顔を出す。

 どうやら全員無事なようだ。

「盗賊は?」

 そう聞くとファニーと恵理、ロリーナが捕らえている

 3人のみで、俺達を案内した盗賊や連れてきた盗賊10人と

 盗賊の頭と思しき大柄の男たち合わせて27人が、

 今や息をすることも無い状態になっていた。

 全員が見事に眉間を打ち抜かれている。

 あの距離からこれだけ正確に撃てるなんて。

 スコープが付いているのは見えたが、

 この森の隙間を縫って打ち抜くには

 経験と技術だけではなくそれ以外の能力が

 あるかもしれない。

 俺は背筋が凍る思いがした。

「おわっ!?」

 というか背筋がマジで冷たかった。

「ビックリした!?」

 恵理がどこからか取り出した

 瓶を俺の背中に当てていたのだ。

「何だそれは」

「何か商人のおっちゃんがくれた。助けてもらったお礼だって」

「で、その商人のおじさんは?」

「無事無事。アタシがしっかり警護したからね!」

 自信満々に胸を張る恵理の頭を撫でる。

「ホント良い仕事してくれたな。えらいぞ」

「それほどでもないけどねぇ!」

 アハハと笑いながら照れてる。

 悪い娘じゃないんだろうけどな。


 それから商人の人を護衛しつつ、

 言ったん街まで戻る。

 そして生きていた3人を衛兵に引き渡し、

 用紙に受け取りのサインを貰う。

 盗品に関しては護衛があったので、

 今から回収に行く旨を伝えると、

 了承してもらった。

「少し陽が落ちてきたから、皆は冒険者ギルドで待っててくれ」

 俺が告げると反対したものの、さっきのが

 また来るかもしれないからと押し返した。

 しぶしぶ皆は冒険者ギルドへ戻る。

「俺は良いだろう?」

 ビルゴは残っていて手伝ってくれるようだ。

「勿論。宜しく頼むよ」

 俺はそう言って盗賊の巣窟へと歩き出す。

 そうのんびりもしていられないので、

 早歩きで元来た道を戻る。

 狙撃手の居た崖の近くにほら穴があり、

 地下は無いようで、ホントにくりぬいたような

 穴だった。

 中には盗品と思われる物や酒の匂いのする瓶、

 何かの骨が散乱していた。

 流石盗賊の住処。

「どうする?」

「取り合えず高そうなものだけ持っていこう。都合良く荷車もあるようだし」

「そうするか」

 俺達は荷車に荷物を乗せると、

 ビルゴが引いて俺が押すという感じで

 何とか日没までにエルツに戻る事が出来た。


「コウ御苦労さま」

 衛兵に盗品の一切を渡した後サインを貰って

 冒険者ギルドへ戻る。

「ただいまミレーユさん。これ依頼完了の書類です」

「……はい、確かに。ではこれが今回とエルフの里の件の謝礼ね」

「あ、有難う。すっかり忘れてた」

 俺は袋にジャラッと入った物を受け取る。

 中を見ると、金貨が数枚混じっていた。

「あれ、こんなに良いの?」

「今回の銀貨1500に、商人さんから謝礼と、エルフの里の事件の重さを考えると、金貨2枚と銀貨200になるわ。それでも少なめだけどね」

「助かります。有り難く頂戴しておきます」

「どうぞ」

「取り合えず明日バンクに行って崩すから、皆の分け前は明日にしよう」

 俺がそうテーブルを囲んで飲み物を飲みながら

 寛いでいる皆に伝えると

「我は要らんぞ?お前と一心同体だからな」

「僕も同じく」

「私も工房での仕事を頂ければそれで」

「私は善良な方を護れましたし、少し頂ければ十分ですわ」

「アタチはお父に任せるだのよ」

「なら俺とリムンは、今回の1500に人数分割った二人分で良い」

「そっか有難う。ならそうさせて貰う」

「アタシはキッチリ頂くわよ!謝礼の分もね!」

 恵理以外は謙虚である。

 俺ははいはいと言いながら、

 ギルドのカウンターに腰かける。

 どうやら今回は単発の仕事で終わりそうだ。

 ただあの男が言ったまた会うと言うのが気に掛かる。

 物騒な事にならなきゃいいけどな。


 その晩俺達は皆で夕食を囲む。

 恵理は俺と違いコミュ力があるのか

 いつの間にか溶け込んでいた。

 特にリムンを猫可愛がりし、

 何かに付けてコレ入る?どれ欲しい?

 などと御母さんみたいになっている。

 俺がリムンはそこまで子供じゃないぞと言うと、

 だからって大人扱いするのはダメだと叱られた。

 何か自分の過去に関係しているのか、

 真顔で怒られた。

 恵理の黒い部分はそう言った所から来ているのだろう。

 俺もなぁ。

 と考えてロキの事が頭に浮かぶ。

 神の抑止力。

 物語から抜け出したいトリックスター。

 あいつがこれから何を仕掛けてくるのか。

 取り合えず冒険者ギルドで細々と活動しながら、

 情報は仕入れておこう。


「ミレーユさん、情報を買える所ってあるのかな」

 俺は女性陣が部屋に戻り、

 ビルゴと共に酒を酌み交わしている時に

 尋ねてみた。

「……コウもそう言う所に目が行くようになったのね」

 何だか感慨深げに言われてしまった。

 確かにここ最近は行き当たりばったり過ぎたからなぁ。

 これからは出来れば万難を排して進みたい。

 その為には情報を買う、という手段も必要だろう。

「無いかな?」

「あるにはあるわ。明日紹介してあげるから、その時直接交渉してみて」

「ここに来るの?」

「ええ。コウだけじゃなくて冒険者としてはどこがどうなっていると言う情報は、身を護る意味でも必要な事だからね。月1位の頻度で冒険者ギルドに来るのよ情報屋さんが」

「それは楽しみだ」

「色々な話が聞けるわよ。楽しみにしておいて頂戴」

「了解」

 俺とビルゴ、そしてミレーユさんは杯を鳴らして

 暫く他愛無い話をして酒を酌み交わし、

 其々の部屋へと戻る。

 すると俺の部屋の前で全員が寝ていた。

 何があったのか。

 恵理とファニーの姿を見れば解る。

 また喧嘩かいな。

 ホント全く。

 俺は一人一人持ち上げて女性陣の部屋へ

 連れていき寝かせる。

 リムンはビルゴに任せて。


「お父ちゃん……」

 最後に恵理を寝かせて布団を丁寧に掛けて

 頭を撫でると、エルフの里でも聞いた寝言が

 もれた。

 色々あったんだよなきっと。

 恵理の暴走や前の世界で色々した事を

 いつか聞かなければならない。

 解決するのは難しいかもしれないが、

 力になろうと思う。

 ここまで抱えてしまったから。

 おっさんで役に立てばいいな。

 そう恵理に小さく言って、俺は自室に戻ったのだった。



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