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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
のんびり冒険者譚

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エルツの冒険者

「ミレーユさんただいま!」

 俺は冒険者ギルドのウェスタンドアを開けて

 元気な声で入っていく。

「コウ、おかえりなさい」

 どうやら無事だったようだ。

 俺はホッと一安心して、

 皆を連れてカウンター席に着く。

「ギルドは無事だったみたいだね」

「ええ、お陰様で。エルフの里から貴方達が着く前に補填の話が来たから、一応請求は今後考えるって返答しておいたわ」

「助かります。今復興真っ只中だからね。それでロリーナは?」

「呼んだ!?」

 俺がロリーナの名を口にすると、

 背中からおぶさってきた。

 どうやら元気になったらしい。

「おいおい、凄い歓迎の仕方だな」

「それはそうだよ!僕は置いて行かれたんだから!これ位のスキンシップはさせてもらわないと」

「いやオッサン脂ぎってるから触らん方が良いぞ」

「……コウ別に脂ぎって無いじゃん。寧ろカサカサなんだけど」

「枯れ果ててきたか」

 ロリーナが俺の顔を触りまくるので窘めそう言うと、

 ドッと笑いが起こる。

 ああ帰って来た。

 やっと一つ終わった。

 俺は改めて安堵する。

「ちょっと……アタシはどうする訳よ」

 俺達の後ろで縄で巻かれた少女は恨めしそうに

 俺達を見ていた。

 エルフの里に置いて行くのも迷惑だし、

 放置したらしたで問題しか起こさなさそうだから

 仕方無く連れてきた。

 道中余りにも我儘を言った為、

 女性陣の一致で縄で縛りあげて

 連行してきたのだ。

 俺は別にそこまでしなくてもと一言言ったが、

 其々とても怖い顔をして一蹴された。

 エライ怖かった。


「さてさて、今後はゆっくり冒険者家業をしようかな」

 俺が少女を取り合えずカウンターに座らせると、

 そう切り出す。

「そうね。ここのところ大きな事件に巻き込まれていたし、最初に希望していたような小さい仕事からする?」

「それが良いなぁ。取り合えず暫くは大人しく稼ぎたいわ。事件しか無いのかと思い始めて来たよ」

「あらあら。でも意思の有る者が生きているんだから、事件は何かしら起こっていると思うわよ」

「でも国とか里とかデカイレベルの物がここ最近多くて。出来れば小さい所からコツコツ行きたいんだけど」

「解ったわ。取り合えず見合うものを探してみるわね」

「お願いします」

 俺はだらしなくカウンターテーブルに突っ伏す。

 そしてロリーナがおぶさってくる。

 何時までくっついてるんだこの娘は。

「おーもーいー」

「かーるーいー」

 このやりとりが一回で終われば良かったが、

 結構長く続いた。

 俺は色々うっぷんがたまってるんだなと理解して、

 付き合う事にした。

 だがファニーより気が短いのが突っ込んできた。

「マジウザい!何なのソレ!?意味無く無い!?イライラするんだけど!」

 もう言葉だけで誰だか解る。

 そしてそれは静かになる。

 ロリーナの蹴りによって。

 ロリーナは御姫様ではあるが市井で育った

 元気な姫だ。

 足クセも相当なものである。

 今まで大分大人しくしてたから、

 何も言わずに鳩尾目掛けて蹴った。

 ストレートな表現だな全く。

「ちょっ!いきなり蹴るとか」

「黙れ」

 ドスの効いた声で黙らせるロリーナ。

 それに対して抗議しようとしたが、

 またやられると思って黙った。

 正解である。


「コウおまたせ。丁度良いのがあったわ」

 ミレーユさんが書類を片手に戻ってきた。

 俺はそれを突っ伏しながら読む。

 確かに手ごろな依頼だった。

 近隣の盗賊の巣窟へ向かい、捉えてきて欲しいとの事。

 押収物も渡すっていう依頼で、

 銀貨1500というものだった。

「アタシ参加したい!イイでしょ?オッサン!」

 縄で縛られたまま俺の顔の横に来る少女。

 次の瞬間にはギルドの入口まで

 吹っ飛ばされていた。

「僕は参加するからね!絶対だよ!」

「盗賊相手でしたら私も参加したいですわ。是非とも我が神の教えを説きませんと」

「我も行く。こういう普通の依頼は久しぶりだ。適当にやっても良さそうだしの」

「私も御同行してよろしいでしょうか。帰る前に師匠に何か手向けの花なども購入したいですし」

「アタチも行きたーい!」

 俺の上に更に重しが乗る。

「リムン久しぶり。大きくなったのか?重いぞ」

「おっちゃん失礼だのよ!でもアタチは成長中だのよ!」

「解る―解るからどいてくれー」

「御断りだのよ!」

 ワイワイしている所へビルゴも合流し、

 結局大所帯で行く事になった。

 少女は連れて行くのに反対が多かったが、

 置いて行くとミレーユさんに迷惑が掛かりそうだったので

 連れて行く事にした。


「じゃあ各自準備してここに集合って事で」

「おー!」

 ビルゴとリムンは取り合えずバンクへ必要以外の

 金を預けに行き、ファニーはプレシレーネと共に

 隣街に武器の調達に、ウーナは教会に

 暫く休む用があれば冒険者ギルドへという

 札を掛けに言った。

 ロリーナは部屋で剣を磨きに行く。

「おい少女A、お前名前なんて言うんだ」

「アタシ?アタシは恵理!生嶋恵理!」

「そうか恵理。悪いがどいてくれ」

 ロリーナがどいたら今度はコイツが

 上に乗っかってきた。

 何がしたいんだお前ら。

「盗賊相手だから手加減なんていらないよね!」

「いや捕らえて来いって言ってるだろ?てか人の話聞けや恵理」

「ギリギリ生きてれば良いんだよね!おっしゃやったるぞー!」

「お前張り切ってるけど裏切った事を俺が忘れると思ってるのか?」

「おっさんなら忘れるでしょ?細かい事気にしてると禿げるよ?」

「そう言いながら旋毛を顎で押すんじゃない。禿げたらお前のせいだからな恵理。責任とれよ」

「責任取れとかキモ!」

「だったらやめれ。そしてどけ」

「あーキモキモ」

 どく気配がしない。

 流行ってんのかこれは。

 俺は途方にくれながらも、皆が帰ってくるまで

 ダラダラしつつ冒険者ギルドで待っていた。

 あー疲れた。

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