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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
反乱のエルフ

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新生エルフの里の息吹

 俺はゆっくり目を覚ます。

 今回はあそこに呼ばれなかったようだ。

 そこはエルツの冒険者ギルドよりは質素だったが、

 ゆっくり眠れた気がする。

「コウ様、起きられましたか?」

 ドアを開けて入ってきたのは

 ブルームとルールの母親である女王だった。

「ええ、今丁度目が覚めたところです。どうですか復興の具合は」

「コウ様が眠られてから今2日程経ちましたが、エルフの里の者も疲弊しており、今日復興が始まりました」

「そうですか。なら俺も一働きしましょう」

「いえ、もう少し休まれては」

「いやいやあまり休むと体が鈍ってしまいますから。それにエルフの里の者以外が復興に携わらないと、流れを変えられないと思います。それに積極的に交流していかないと」

「それならイリア姫やエミルさんなどが頑張ってくれています。ダンディスさんや、里を追われたにもかかわらず頑張ってくれているリードルシュさんの姿を見て、里の者達も見方が少し変わったようです」

「それは効果的ですね。隣国の女王に商人に元里の者。積極的に係わってくれれば、里の人たちはより外に興味を持ち始める。なら余計俺もここで寝てる訳にはいきません」

 俺は立ち上がる。

 そして近くにあった黒隕剣と黒刻剣ダークルーンソード

 身に付けて、女王と共に外に出る。


 そこに広がっていたのは、色々な種族が混ざり

 家や神殿をリフォームしたり、

 一旦壊して土台から作り直したりしていた。

 おぉ凄い。

 本格的な土木工事やってる。

 前に日雇いを少しやった事があるが、

 もっと機械的でコンクリートとか使っていたけど。

 ここでは本当に土木工事だ。

 建物の基礎を木材で組んで赤土などで地面を固め、

 その上に何本もの30㎝×45㎝の木材を敷き詰め、

 その上に板を置いて頑丈にしている。

 壁はレンガや岩を切り崩したものを積んで、

 屋根は木の板の上に何か顔料を塗って

 更に藁を乗せていた。

 この世界の建物の技術も凄いな。

 鎹を作り釘を使わずに組んでいる所もある。

 あれはエルフの里の人だ。

 俺は目が奪われる。

「女王、俺も混じって来て良いですか!?」

「はい、あまり無理をなされないでくださいね」

「はい!では!」

 俺は堪らず走り出す。

 そして建物の基礎を作っているエルフの職人の所へ行き

「凄いですね!それどうやってるんですか!?」

「あ、これはですね」

 と俺が尋ねると丁寧に教えてくれた。

 自分もやると言うと、じゃあ最初は私が横について

 助言しますのでと言ってやらせてくれた。

 ノミのようなものでトントン叩き、

 先ず鎹の受けになる凹の部分の切り口を作る。

 そしてその後、剣刃にギザギザが付いた物を使って

 凸と組み合わさるように斬っていく。

「以前やられた事があるのですか?お上手ですね」

 と言われて照れる。

 見よう見まねでやっているだけです、と答えると

「エルフ以外にもこの工法をしている方が居たとは。世界も広いのですね」

 と感慨深げだった。

 これは良い文化交流になる。

 エルフの人は俺がある程度出来るようになると、

 自分も作り始め、

 段々と2人で相談して一つの家の骨組みを作り上げた。

「貴方凄いですね。あっという間に私の技術を習得してしまって」

「いえいえ、まだ付け焼刃です。次行きましょう!」

「ええ是非!ではあちらに」

 そうして俺とエルフの職人さんは二人でドンドン

 家の骨組みを作っていく。

 3軒目から土台作りから必要だったので、

 一旦二人で壊しつつ使えそうな材料を選別し、

 森から赤土を荷車のような物に乗せて運んできて

 地面を固めて土台を作った。

 大きな槌で叩いて固め、家の大きさに合わせて

 支柱を立てて行き、その周りが倒れないように

 木から取ったと言う樹液に薬を混ぜて

 固まり易くした物を流して強固にした。


「コウ様!こちらにおられたのですか!?」

 エルフの職人さんとあちこち家を直している所に

 イリア姫が兵を引き連れてきた。

 兵と言っても軽装で、武装の類は一本のみ。

 威嚇したり警戒されないような必要最低限の

 装備に抑えられていた。

 しかも人数も3人と少ない。

 これなら里の人も驚くだろう。

 アイゼンリウトの女王が供を3人だけ連れて

 里の復興を手伝うなんて。

「どうしたイリア姫」

「今後の復興について少々お話をしたいのですが、宜しいですか?」

 そう言われ屋根の上で腕を組み考える。

「親方、行っても良いっすか?」

 そう俺がエルフの職人さんに尋ねると

「あ、貴方がコウ様なんですか!?」

 と驚かれた。

 別に驚くほどの者ではないんだけどな。

「すみません名乗るのが遅れて。コウと言います。親方、ちょっと席を外しても良いですか?」

「ああ!ええ!勿論ですとも!貴方がコウ様ですか!私達の里を救って下さったのに、何も言わずに私のような物と作業して下さるなんて」

「いや復興は皆でやらないと。それに俺楽しかったですよ。出来ればまたお手伝いしたいんですが」

「ですが里の英雄たる貴方にこのような事を」

「いや、この家こそ復興の基盤です。衣食住と言われるほど、住む場所は生きる者にとって大事ですから」

「……流石英雄と呼ばれる方です。私も住こそ基礎であり、復興に欠かせないと思っております。でしたら御言葉に甘えて、是非また御一緒してください」

 エルフの職人さんに頭を下げられてしまう。

 英雄ってそんな凄いもんじゃないと思うけどな。

「英雄と言うならば、寧ろこの復興を成し遂げてこそ称賛されるべきですし、それはエルフの里の方達でなければなりません。俺はお手伝いしているだけなんで」

 俺は手を差し出すと、エルフの職人さんは

 自分の衣服で手を拭きつつも、手を出し辛そうにしていたので

「親方、また後で宜しくお願いします。エルフの技術を俺はもっと知りたいので」

 と俺から握手しに行った。

 すると感激されてしまい、固く握手を交わしてくれた。

 俺は名残惜しいながらも、エルフの職人さんと別れ

 姫と共に神殿へと向かう。

「コウ様、やはり貴方は我々にとって欠かせない方でありますな」

 姫の供の一人が後ろを歩く俺に近付いてきてそう言った。

 姫達は俺を前にして歩こうとしていたが、

 俺は全力で断り姫の後について行く事にした。

「その声は」

「覚えていて下さいましたか!あの時の者であります。今はアイゼンリウトの守備を任されているリュッケと申します」

「改めて、コウと申します」

「これは申し訳ありません。コウ様にそのような事を」

「それは良いから。アイゼンリウトも復興が大変なのに有難う御座います」

「こちらこそです。洞窟の件もそうですが、エルフの里で不穏な動きがあるのを察知し対処が遅れて出遅れてしまいましたので、我々も巻き返しに必死なのです。新たなエルフの里と友好が結ばれれば、我々の防衛線も強固になりますので」

「流石。姫もそれを考えて調査させていたようで何よりです」

「コウ様に美味しい所は持っていかれてしまいましたので。我々は資材の搬入や怪我人の手当てなど出来る事を全力でさせて頂いております」

「すみません、気付いたらエルフの里に居たもので」

「そういう方だと姫もおっしゃられていましたし、我々も同意見です。ですのでここからは負けないよう頑張ります」

「皆で一緒に頑張りましょう。どこか一つだけが頑張ってはエルフの里の真の復興になりませんから」

「……そうでした。私とした事が名誉挽回に必死になって、大事な事を疎かにしていました。確かにここは我々の領土では無く、エルフの方達の街ですからあくまでサポートになるように気を配ります」

 俺とリュッケが語り合っていると、

「コウ様、着きました。他の者たちはここで控えていて下さい」

「はっ!ではコウ様また」

「リュッケさんまた」

 俺は姫と共に神殿内へと進んだ。


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