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無職のおっさんはRPG世界で生きていけるか!?  作者: 田島久護
反乱のエルフ

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反逆の終焉

「くっ……」

 俺の中にある暗い感情が表面化し支配した者は、

 ファニーによって、まるで赤子の手をひねるように

 あしらわれていた。

 某バトル漫画っぽく強くなったのかと思いきや、

 やはり竜は特別な存在らしい。

 圧倒していた俺はそこには居ない。

 そして神殿の方へと俺の体から光が出始める。

 俺はこのまま支配されたまま、

 何かによって解消されるのは嫌だ。

 それでは俺が引きこもりであった俺から

 成長できていない。

 この暴走はそう言う者でも俺にはあった。

 だからこそ、俺は意識を集中させ、

 このくだらない暴れ者を俺は受け入れる。

 そしてくだらない俺も、全てを見下す俺も

 滅んでしまえば良いと思った俺も全て俺だ。

 それは変わらずある事を再認識し、

 謝罪する。

 俺は未熟だった。

 愚かだった。

 だからもう良いんだ。

 有難う。


「そうか……俺は俺でしか無いのを解ってくれたか」

 ああ、綺麗事を言いつつもそうではないと言いながら、

 綺麗事を求め成していたた事を認める。

 綺麗事が好きなんだ。

 そうあってくれれば良いと願っているんだ。

 だから共に戦おう。

 もうこの世界でもどうしようもなくなったら、

 こうやって俺を倒してくれる仲間が居る。

 だから行こう。

 もう立ち止まっていられない。

 走ろう。

 息が切れても共に。

「ああ」

 そう短く俺が答えると、客観的に見ていた俺は

 元に戻る。

 そして目の前にはファニーの拳が迫ってきていた。

 これは受けよう。

 弱い俺の過ちを、共に受ける。

 それが仕切り直しだ。


 とかカッコつけた割にかなり痛く、

 更に神殿の方までブッ飛ばされた。

 マジで痛い!手加減とか無いだろ!

 アイツホント良く耐えたなこれ!

 てか一緒になったらなったで

 痛みも感じてきたというかぶり返して来たというか。

 スゲー痛い!

「痛い!めっちゃ痛い!折れてるんじゃないのこれ!?」

 俺は顔を抑えて転げまわる。

「まだ食らいたいのか」

「いやちょっ死ぬ死ぬ!痛いってホント!この世界に来て一番痛い目にあってるからもう止めて!」

「チッ……良かったコウが正気に戻って」

 笑顔でそう言ったが、舌打ちしたのは聞こえたぞ。

 めちゃくちゃ痛い。

 鼻血がめちゃくちゃ出てる。

「コウ、平気か!?」

 皆が駆け寄ってきた。

 皆ここに居たのか。

「ああ、もう心配無い。ファニーのきついお仕置きがあったからな」

「ん?何か口調が違うが。もう少し殴るか」

「いやもう結構。大丈夫だ。大樹、この力有り難く貰っておくよ」


 ―――そうか、なら後は任せたぞ―――


 そう声が聞こえた後、大樹は大人しくなる。

「で、どんな交渉をしたんだ?」

 俺は近くに居たブルームに尋ねる。

「概念としての今までのエルフの死を迎える」

「それはまた思い切った事を言ったな。だが正しい」

 俺は立ち上がる。

 そして鼻血を拭いつつ、空を見上げる。

「イリア姫、エルフの里の復興を手伝ってくれ」

「はい、それは私達は構いませんが」

「女王、どうかな」

「そうですね、先ずはそこから変わりましょう」

「と言う事だ。俺達も手伝おう。異なる価値観に触れれば、エルフの里は死から蘇り、見違える者になる」

「はい、ありがとうございます。やはり貴方は英雄でしたね」

「どうかな。俺はまだ何も成していない。これからだ。大樹の望むものが得られた時、それはここに居る全員が英雄になると言う事だ」

「……どうも可笑しいな。やはり殴ろう」

「いや、もう止めて。マジで死ぬ」

 俺が身を庇うと、皆の間に笑いが起こる。

 やっと一息吐ける感じだな。


「お前達、このままで済むと思うなよ!」

 そんな空気をぶち壊すように、エドベの声が飛んでくる。

 まだ生きていたのか。

「私はまだ終わってはいない!見よ!私の兵は生きているぞ?」

「何でも構わんが、まだ痛い目に遭いたいのか?」

 俺は皆を掻き分けて進む。

 エドベは身を引き、部下達の群れの中へ消える。

 恐らくは思想を移されてコントロールされているのだろう。

 あれを出せ。

 そう聞こえた気がした。

 俺の中の俺は、中々頭が回るようだ。

 洞窟で拾い、ブルームが見つけたペンダント。

 エミルが買い取らなかったこの高価な宝石は、

 俺の相棒と同じ理由で捨てられたのだろう。

 俺はポケットに忍ばせておいたそれを取り出し

 掲げ、空へ投げるとそれを拳で砕いた。

 次の瞬間それは光を放ち、黒尽くめ達を覆う。

 黒尽くめ達の体から、黒い霧が出て行き、

 黒尽くめ達の目が色を取り戻す。

「ど、どうしたんだお前達」

「皆の者、これからエルフの里を復興させます。その為に力を貸して下さい」

 女王は俺の前へ出て、そう言って頭を下げた。

 黒尽くめ達は持っていた武器を捨て、

 膝を突き頭を下げる。

「どうする?残りはお前だけだが」

「くっくそぉおおお!」

「生憎逃がす訳にはいかない。お前に是非お礼をしたい奴が居る」

「な、何だと!?」

「俺の相棒だよ」

 俺の言葉の後に黒刻剣ダークルーンソード

 俺の右手に、黒隕剣は俺の左手に納まる。

「綺麗事を敢えて言う。罪を償って消えろ」

 俺はエドベの間合いに入ると

 黒刻剣ダークルーンソードを唐竹割りで

 エドベへ向け放つ。

「ぎゃあああ!」

 だがエドベはゴン!という音と共に地面に顔を

 打ちつけただけだった。

「有り難く思え。俺の相棒は貴様と違って貴様のような奴は斬るに値しないと言っている」

 俺は2振りの剣を収めると、

 プレシレーネに向き直す。

「プレシレーネ、どうする?」

 俺は酷だと思うが、師匠の仇打ちを目指して来た

 プレシレーネにその処遇を任せる。

「……エルフの里が死を迎えて蘇るなら、師匠への手向けとなりましょう。こんな奴を斬った所で……」

 そう言い終わらない間に、

 俺の胸へと顔を埋めて泣いた。

 プレシレーネ、魔族なのに俺の綺麗事に

 付き合ってくれるのか。

 つくづく俺は仲間に恵まれているなと思った。


「女王、後の処遇はそちらに任す。それにルール、俺達がそう決めたんだ、無粋な真似はよせ」

 俺は黒尽くめにまぎれ、

 エドベの命を狙っていたルールを諌める。

「何故俺だと解った」

「お前の事だ。今まで出てこなかったのも、一重にエドベの命を取る為だったんだろう?もうその刃を血で濡らすのはよせ。誰も喜ばない」

「だが俺は今までコイツの指示でそうしてきた。終わりもそうさせてもらおう」

 ルールがナイフ2本でエドベを指し貫こうとしたが、

 俺が間に入ってナイフをはじき飛ばす。

「お前の役目はこらから更に過酷になる。こんな者を処理した程度で済むほど、お前の罪は軽くないはずだ。女王と王女が背負う者を、お前も背負え」

「この血に濡れた手でか」

「そうだ。誰も手に血を濡らさずとも成り立つ里の為に。そうでしかお前の手は拭えない」

「……俺は」

「お前の役目を果たせルール。俺は約束を守った。次はお前の番だ。今度こそ貫き通せよ」

 俺は女王たちの元へ戻る。

 そして近付くにつれ、また意識を失う。

 色々なダメージが重なってのことだ。

 目を覚ましたら今度は今まで以上に忙しくなりそうだ。

 俺はイマイチ達成感にかけると思いながらも、

 そのまま瞼を閉じた。

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